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ベスのつぶやき(ひとりごと)

80年代のアメリカはいろんな音楽が流行するわけだけど、元気なロックンロールもそのひとつ。70年代のアメリカの音楽が内省的な歌が多かったから、その反動かもしれないわね。力強くてポジティブなサウンドの曲がチャートにどんどん登場するのよね。例えばヒューイ・ルイス&ザ・ニュース。一番有名な曲は、映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の挿入歌「パワー・オブ・ラヴ」。1985年の曲で、全米ナンバーワンに輝いたんだけど、この曲も妙に元気。ロックンロールってシンプルなアレンジでも通用するのに、いろんなサウンドが詰め込まれて、ぐいぐい迫ってくる。落ち込んでいる暇なんかないくらい(笑)。80年代は経済的にも豊かだったから、無駄に装飾されたものがもてはやされたのはたしかね。例えば、当時の映画を観ると、女優さんはみんなおそろしくボリューミーなヘアスタイルをしている。現代の80年代ファッションは洗練されているけれど、本物の80年代ファッションはトゥーマッチ。音楽もそういう時代の空気を反映していたのかもしれないわね。

J・ガイルズ・バンドも元々はシンプルなロックンロール・バンドだったの。ところが、1981年の秋にシングルカットされた「堕ちた天使」ではいろんな楽器を重ねた元気サウンドに変身。ジリジリとチャートを上げていって、1982年2月、全米ナンバーワンを獲得したの。その後6週連続で首位の座を守ったのよ。1981年8月に誕生したMTVも「堕ちた天使」のヒットを後押ししたのよね。今じゃミュージックビデオはYouTubeの公式チャンネルで簡単に観られるけど、当時は、ライブ映像やミュージックビデオを集めて有料の上映イベントが行われていたくらい珍しいものだった。MTVの登場で、ミュージシャンはミュージックビデオにものすごく力を入れるようになるの。できたばかりのMTVでやたらと流れていたのがこの「堕ちた天使」。女子高生が教室で下着姿で踊るという、当時としては過激な内容が話題になって「堕ちた天使」はじわじわとチャートを昇っていったの。初のMTVからのヒットといっていいかもね。

ブライアン・アダムスはカナダ出身のシンガー。1984年にリリースしたヒットアルバム『レックレス』は元気なロックサウンドが満載。80年代も負の部分もたくさんあったんだけど、「明るくはじけていればなんとかなる!」という空気が後押ししていたのかもしれない。バラードもなんとなく力強いのよね。ハードロック・シーンもそういう傾向にあった。アメリカのハードロック・バンドはエアロスミスのようにブルースをベースにしたバンドが多かったけど、ニュージャージー州出身のバンド、ボン・ジョヴィはちょっと違った。イギリスのヘヴィメタルをベースにしたサウンドに、キャッチーなメロディーの歌を融合した曲をどんどん発表していくの。アメリカのバンドなんだけど、どちらかというと、このスタイルは日本のハードロック・バンドに近いわね。ボン・ジョヴィが世界で最初に日本でブレイクしたのも、そのスタイルのためだと思う。ただヘヴィメタルといってもサウンドの厚さだけを持ってきて、ダークなイメージは一切なし。とにかく元気。彼らが発表した1986年のアルバム『ワイルド・イン・ザ・ストリーツ』は全米アルバム・チャートで8週連続1位に輝いたのよ。ナイト・レンジャーもブルージーなロックンロールとは無縁なアメリカのハードロック・バンド。ボン・ジョヴィ同様、濃い目のアレンジにキャッチーなメロディーを投入しているんだけど、ノリはもっと楽天的。悩みなんか少しもないようなサウンドが気分を上げてくれる。これも80年代ならではね。

80年代のアメリカに旋風を巻き起こした妙に元気なロック。現代の時代からはなかなか生まれにくいスタイルだけれど、それだけに新鮮に響くわ。聴くだけで力が湧いて、前向きな気分になれるって、むしろ現代向きかもしれない。会社や学校の嫌なことを一気に吹き飛ばしてくれるかも。皆さんもぜひ聴いてみてね。

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