BIOGRAPHY
The Damned Things / ザ・ダムド・シングス
キース・バックリー(Keith Buckley):リード・ヴォーカル
スコット・イアン(Scott Ian):リズム・ギター、ヴォーカル
ロブ・カッジアーノ(Rob Caggiano):リズム&リード・ギター、ヴォーカル
ジョー・トローマン(Joe Trohman):リズム&リード・ギター、ヴォーカル
アンディー・ハーレー(Andy Hurley):ドラムス、パーカッション
アンスラックス(スコット・イアン、ロブ・カッジアーノ)と、エブリー・タイム・アイ・ダイ(キース・バックリー)、そしてフォール・アウト・ボーイ(ジョー・トローマン、アンディー・ハーレー)のメンバーによって結成されたバンド、それがThe
Damned Thingsだ。彼らが手強い音楽部隊であることは、疑う余地がない。
メンバーは、いずれも各自のキャリアで成功を収めてきた者ばかりだが、Island/Def JamからリリースされるThe Damned
Thingsのデビュー・アルバムでは、クラシックなロック・アンセムと、ヘヴィ・メタルの激しさを備えたパワフルなメロディに対する彼らの愛とを融合。個々の部分の総和を遥かに上回る、強力な作品に仕上がっている。
例えば「We’ve Got A Situation
Here」(”辛抱強く待っていたんだ/人々が集うのを……俺は多くを求めはしない/だが手の届かないものが欲しいんだ”)や、レイドバック気味のブレイク・ビート・リズムが特徴的な、プログレ風のブリッジがある「Black
Heart」、そしてイアン曰く「俺がそもそもロック音楽に夢中になった理由を毎日思い出させてくれる曲」である「A Great
Reckoning」といった曲を聴けば、The Damned
Thingsがバンドとして共にに演奏するようになってからまだ日が浅いとは、中々信じられないだろう。
「これは大きく異なった3つのバンドの融合体なんだ」と説明するのは、フォール・アウト・ボーイのギタリスト、ジョー・トローマンだ。彼がアンスラックスのスコット・イアンに初めて紹介されたのは3年前。2人は急速に友情を深め、すぐさま一緒に曲作りを始めるようになった。「思いも寄らなかったんだけど、自分たちが音楽的に同じ考えを持ってることが分かったんだ。2人とも、ヘヴィ/クラシック・ロック系でブルース指向なリフ主体のバンドを結成することに興味があってね。それと同時に、ありふれた大げさなサウンドにはしたくないよな、って点でも一致してたんだよ」。
フォール・アウト・ボーイの前身であるメタル系バンドで活動していたジョーとドラマーのアンディー・ハーレーは、アンスラックスのスコットとコラボを開始。そして最終的に、スコットの同僚であるロブ・カッジアーノがそこに加わることになった。
「始めた時は、何かを期待してたわけじゃなくてさ」とジョーは語る。「サイドプロジェクトとしてやるつもりなんて、全然なかった。たまたまだったんだ」。
「俺たちは、あまり考えすぎないようにしてるんだよ」と、割って入るのはスコットだ。「ここでは、無理強いされてる者は誰もいない。俺たちはただ流れに任せてるだけで、ごく自然に進歩してるんだよ。(中略)物事をシンプルに、そして皆が気持ち良くいられるように心掛けることで、自分たちの正にやりたいと思ってる通りのことができるんだ」。
このジグソー・パズルを完成させる最後の1ピースが、エブリー・タイム・アイ・ダイのヴォーカリスト、キース・バックリーの参加であった。キースの大ファンで、2年ほど前から彼と友達になっていたジョー。ある日、ジョーとスコットが車の中でエブリー・タイム・アイ・ダイのCDを聴いている時、スコットはジョーに、キースと連絡を取って、このバンドへの加入に興味があるか訊いてみてくれ、と促したのである。
「声がかかったのは、ちょうどいいタイミングだったんだ」と語るキース。彼は作詞も担当している。「これまでとは少し違ったことをやりたいと思ってた所だったんだよ。一緒にやってみるっていう今回のこのチャレンジは、俺たちにとってだけでなく、それぞれのバンドのファンにとっても、断るにはあまりにエキサイティング過ぎることだと思えた。エブリー・タイム・アイ・ダイから幾つかの要素を取り入れて、それを詳しく説明することもできたしね。歌ってる部分と叫んでる部分の比率を、ちょっと逆にしてみたんだ。でも俺たちのここ最近のアルバムを2、3作聴いていた人なら皆、俺が探求したいと思っていたヴォーカル・スタイルはこれだってことに気づいてたよ」。
プロデュースはジョーとロブが担当し、彼らは曲作りとレコーディングを、主にブルックリンとシカゴ、そして(キースの居住地である)バッファローで開始。クラシック・ロックの要素を、アンスラックスやエブリー・タイム・アイ・ダイの持っているヘヴィな側面と融合させ、そこにフックの効いたフォール・アウト・ボーイのコーラスを加えるという雛型が、次第に形作られていった。
「We’ve Got A Situation Here」は、The Damned
Thingsのハイブリッドなアプローチを示すのに恐らく最も適した例だと言えよう。
「このバンドの音楽性を代表している好例が、この曲だね」とジョー。「泥臭いリフがあるのに、サビはキャッチーで、テンポチェンジするブレイクダウンが入ってたり、リード・ギター/ギター・ソロもあったりする。ヴァースには、実にブルージーな雰囲気もあるだろ。このバンドを象徴する全てが、この曲に詰まっているんだ」。
「俺のやりたいと思ってることが表われてる曲だな」と頷くスコット。「俺はギターを弾くのが大好きだし、曲を書くのも、ライヴ演奏するのも大好きだ。これはそのための新たな表現の場なんだよ。最初からそういうつもりで始めたわけじゃないけど、当初考えてたよりも、ずっと大きなものになってる。3年前に何もない所から突然生まれたことを思えば、すごくエキサイティングだね」。
キースによれば、The Damned Thingsというバンド名は、レッドベリー(Leadbelly)の「Black
Betty」という曲をラム・ジャム(Ram
Jam)が70年代にカヴァーしたヴァージョンからインスピレーションを得たのだそうだ。
自身が手掛ける歌詞に関しては、キース曰く、同じ葛藤をテーマに書いている場合でも、あまり遠回しな表現にならないように努めているとのこと。例えば、家庭生活とツアーばかりのミュージシャンとしての生活とを、いかに両立させるかといった葛藤についてだ。「エブリー・タイム・アイ・ダイと比べると、歌詞は少し思索的な要素や優美さを抑えていて、よりパーソナルで、より普遍的な、ストレートなものになっているね」とキース。「扱っているモチーフは同じなんだけど、対象範囲を広げて、より明確に表現されている。重さや隠喩は控えめにしているんだ。自分自身でも驚いてるよ。正直、こんな面があるなんて自分でも知らなかった部分が、今回は表面化してる。自分でも気づいてすらいなかったエモーションをさらけ出しているんだ。これほどパーソナルだと、言おうとしていることをごまかしたりはできないよね」。
全員がある程度の成功を経験しているにも関わらず、それぞれまだ何か証明すべきものがあるかのように振る舞っている、The Damned
Thingsの各メンバー。彼らは、そもそも自分たちが音楽を始めた原点へと立ち返っているかのような、新たな高揚感を再び味わっているのだ。
「出産してるみたいな気分なんだよな」と、ジョーが笑う。「俺にとってこのアルバムを完成させるのは、痛みを伴うと同時に必然的なことだった。正に自分の頭の中で描いていた通りに仕上がっているよ」。
「俺たち自身にとっても、まだ何もかもがすごく新鮮なんだ」とスコットは言う。「今はまだ、何の悩みもないんだよな。俺たちは今もまだ、幸せいっぱいなハネムーン期間中なんだ。1984年にアンスラックスで活動してるってことがどんな気分だったか、憶えてる。ああいったことをもう一度経験できるなんて、本当にエキサイティングなんだ。俺はまた新しいバンドにいる。最高に楽しい経験だよ」。
そしてThe Damned
Thingsは、ツアーに出る準備を開始。6月にブルックリンの『ニッティング・ファクトリー』でデビュー・ライヴを行った後(「今回のアルバムをレコーディングした場所の、通りを挟んだ向い側にある会場なんだ」とジョー)、バンドはヨーロッパへ。英国のドニントン・パークでレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンと共にダウンロード・フェスティバルに出演する他、数々のライヴが予定されている。
「人々の前で、(今回のアルバムに収録されているような)新しい曲をやるのが目的なんだ」とジョー。「俺達が、フォール・アウト・ボーイだとか、アンスラックスだとか、エブリー・タイム・アイ・ダイとかのメンバーだってことは関係ない。殆どのオーディエンスにとって、これは新人バンドなんだよ。どんなものを期待すべきか分かってる、って人もいるかもしれない。だけど実際に音を聴いたら、きっと驚くぜ」。
「このバンドがライヴではどういう風になるのか、確かめるのが待ち遠しいんだ」とキース。「ステージに上がったら、そこはオーラとムードとエネルギーで満たされるのさ」
「今度の一連のライヴがどういったものになるかなんて、見当もつかないよ」とスコットが同意する。「ステージ上がって、バンドらしく見せ、バンド気分になるのは、それほど難しいことじゃないと思う。今のところ、そういったことは全く心配してないよ」。
3年の制作期間を経て、The Damned Thingsが遂にその曲を披露する時がやってきた。
「4人とも、本当に待ち切れないほど興奮してるんだ」と、ジョーが熱っぽく語る。「俺たち4人にとって、これはものすごく良い気分転換なんだ。俺たちがお互いを気に入ってるってことは、間違いなくその助けになっている。そして多分、それぞれが自分のバンドに戻った時に、個人としても、また音楽にとっても、これはプラスになってるんじゃないかな」。
「人間としてもミュージシャンとしても、4人全員がビックリするくらい仲良くやってるんだよな」と、驚嘆の声を漏らすスコット。「もしどこか少しでも無理してる部分があったなら、こいつは実現しなかった。俺たちにとっては夢のシナリオみたいなものだったんだよな……でも、そいつが実際にうまくいった。こんなシチュエーションに自分が立っているだなんて、本当にものすごく稀なことだね」。
The Damned Things。こいつは予想外だ。