the原爆オナニーズ TAYLOW氏の武道館レポート
The Birthday 日本武道館 2012年12月19日(水) 快晴
『ロックバンドが演奏するとき。』
どうしようもない状況をさらけ出しながら、じんわりと自分の想いに近づけていく。
The Birthday、2回目となる日本武道館公演は、ステージ上とステージ前の空気が面白いほど変化していく。
このバンドを90年代的な言語で表現しようとすることは、まったくもって無意味だ。
叩き出している音が、2010年代そのものだから。
それも、日本的な地域性を持って語ることも難しい。
天井のスピーカーから、轟音が襲ってくることには慣れているが、チバ(Vo.G)、クハラ(Dr)、ヒライ・ハルキ(B)、フジイ・ケンジ(G)の4人が放出する音は、チリジリに空間を飛び跳ね、ある瞬間に融合する。
よたって、グダグダになりそうなステージ上の雰囲気がダイレクトに伝わって来る。
しかし、不思議な程、ポジティブで前向きな空気感に満ちている。
ハッキリと目標を掴み、猛進して行く。いったいどこからこの強靭な鋼のような間合いが出来ているんだろう。
観ている場所は、”日本武道館”なのに、目の前で呼吸する息が伝わって来る。
一瞬、”京都の磔磔”にいるのではないかと錯覚に陥ってしまう。”こいつら、Grateful
Deadか!”なんて、ヘンテコな気持ちが頭の中で浮かんで来る。
次の瞬間、”ゲッ、1973年のHumble Pieだ”と頭から血の気が引いた瞬間、身体じゅうに、沸々と血が巡ってきた。
うーん、古くさいバンド名で言い表すよりも、同時代のバンドの方がしっくり来る。Avi BuffaloやVivian
Girlsの自由奔放さに、Torcheが『Meandethal』で我々に提示した、とことんポップでありながら、ヘヴィーに軋轢する感覚。もっと付け加えるならば、The
Gaslight Anthemの『The ’59 Sound』やHold Steadyの『Boys Girls In
America』で知ることの出来る、いまのEMO感覚、も。
襲いかかって来る音の塊は、1970年代初頭のバンドのようにゴツゴツしていて、表現は、オモイっきりアップデイトされた感覚に溢れている。
だからこそ、ライブを観ていてワクワクするのだ。
今度は、縦横無尽に飛び跳ねた音が、異次元までブッ飛んで行って、超高速で反射さ れて戻って来る瞬間に立ち会いたい。