『ザ・ビートルズ~Eight Days A Week』 ワールド・プレミアレポート!
いよいよ22日に公開を控えた映画『ザ・ビートルズ~Eight Days A Week』のワールド・プレミアが先週の15日(日本時間16日)に行われました。
その模様のリポートが到着しました!!
“The Beatles Eight Days A Week.Touring Years” London Premier
『レット・イット・ビー』から46年ぶりのビートルズ映画、『ザ・ビートルズ~Eight Days A Week』のプレミアが、9月15日ロンドンの中心地にあるレスター・スクエアの映画館オディオンで華やかに開催された。レスター・スクエアでは過去に多くの映画のプレミアが開催されているが、この日はレッド・カーペットが映画のポスターの背景になっているブルーに合わせてブルー・カーペットに!広場(スクエア)の中心地にある噴水をぐるりと一周するように敷かれ、通常のレッド・カーペットよりずっと長いカーペットを、ビートルズのメンバーをはじめ多くのセレブが歩くことになった。加えて劇場の左手には大掛かりなステージが設けられ、ここでイベント司会者がゲストに簡単なインタビューした。この様子は、衛星中継で世界各地に届けられたようだ。これは、いかにビートルズがイギリスを代表する国民的スターであり、映画のプレミアがおこなわれるだけで世界的な大ニュースになってしまうという証だと思う。
お昼過ぎあたりから、レスター・スクエアにはファンの姿が目立ち、長い待ち時間流れるビートルズの曲に合わせて歌ったり踊ったりする人もいた。ゲストが現れる開演前の6時半ころまでには、5,6百人(推測)ほどのファンが映画館の外にひしめき合った。20代の若いファンから、60代のベテラン・ファンまでファンの年齢層は広く、海外からのファンも。ビートルズのTシャツを着たり、ポスターや自作の絵を持参したり、それぞれがビートルズの愛を表現していた。
もちろん誰もが待ち望んでいるのは、二人の(生存する)ビートルズ・メンバー、ポール・マッカートニーとリンゴ・スターを一目見ること。多くのゲストの到着後、最後に二人が会場入りした。ポールは妻ナンシーさんと、リンゴは妻バーバラさんと一緒に車で到着。二人で一緒にカメラにポーズしたあと、長いカーペットを別々に歩き、ファンにサインしたり、テレビ・カメラにコメントしたり、監督のロン・ハワードに挨拶したりした。スレンダーな体格、若者のように軽やかに、時にはひょうきんに動き回る二人は、70代という年齢を全く感じない元気さ!!映画の中の二人がそのまま抜け出してきたよう。最終的には、特別ステージにあがり、司会者を務めるマンチェエスター出身のコメディアン、ジョン・ビショップ(マンチェスター訛りのフレンドリーな人柄が売り物)の質問に答えた。「今日はすごく興奮しているだ。ラフ・カットは見たけれど、ここで初めて皆と一緒に完成版が見れるから。とても楽しみにしているよ」とうきうきした様子のリンゴ。
「リバプールの4人の友達が組んだバンドがビートルズ。続けていくうちに、いろんな事が起こったんだよ」とポールが昔を振り返る。「好きなことを続けただけなんだよね。それがこんなに大きくなったんだ」とリンゴもポールに同意した。そして当時のライブについて「当時はほとんど自分の演奏が聞こえず、聞こえたのはファンの叫び声だけ。ジャイルズ・マーティンが現代のテクノロジーを駆使して、僕らの演奏を聴けるようにしてくれたんだ。映画のほうがあの時よりベターかもね」リンゴ。
『ザ・ビートルズ~Eight Days A Week』は1962年から66年にかけてのビートルズのツアーの全盛時代を貴重な映像や写真で追う。そこにメンバー二人と数名の関係者への新しいインタビューが加えた形式をとっている。「これまで公開されたことのないフッテージが見つかってね。それを使ってドキュメンタリーを作っては、というのがアップル(レコード、ビートルズの権利を持つ会社)の発案だったんだ」と監督のロン・ハワードは語った。
この日は3人のプロデューサーがポールとリンゴ、監督と共に壇上挨拶したが、その一人ナイジェル・シンクレアは「映画の制作の準備にとりかかったのが4年前。ビートルズのドキュメンタリーを製作するというニュースをソーシャル・ネットワークで発表すると、様々な人たちから驚くほどの数のフッテージやら写真やら資料が送られてきた。少し前の時代ではかんがえられないその反響の大きさに、ソーシャル・ネットワークの影響力を痛感した」と語った。
今は亡きビートルズのメンバー、ジョン・レノンとジョージ・ハリスンの妻もこの日のプレミアに駆け付けた。黒い山高帽に、黒のジャケット姿のヨーコさんは、「プレミアに参加できて大変うれしいです。またその昔ジョンと一緒に『サージャント・ペッパー~』のプレミアに来たときの感激が戻ってきて驚きました」と語った。またジョージの妻のオリヴィアさんは「いつもビートルズの音楽に触れるたびに幸せな気持ちになります」とコメントした。
ビートルズの全米ツアーに同行したときの様子が映画に登場する、フィラデルフィアのベテラン・キャスター、ラリー・ケイン。この日のロンドンのプレミアにわざわざかけつけ「映画を見ていると当時が戻ってきたようだ」と、熱く語った。21歳だった自分をスクリーンでみて、感激もひとしおだったはず。それが可能になったのも、リンゴが指摘したように、50年前の映像や音が現代の技術によって改善改良された点にある。ロン・ハワード監督は、時間をかけて当時の映像や音を修復、画質や音質をあげることで当時の生々しさをスクリーンに再現することに成功した。
音楽プロデューサーとしてかかわったジャイルズ・マーティン(ジョージ・マーティンの息子)は「あの時ビートルズのコンサートにいたらどんな感じだったのか。当時のパワーとエナジーを見た人に感じ取ってもらいたい」とコメントした。特にこの映画中に登場する64年と65年のハリウッド・ボウルでのライブは、CD『ライヴ・アット・ザ・ハリウッド・ボウル』としてリリースされたので、一聴の価値ありだ。
これら映画関係者のほかに、この日のプレミアに顔を出したのは、マドンナ、リアム・ギャラガー、エリック・クラプトンなどの大物ミュージシャン。ブルー・カーペットを歩いたものの、コメントは一切なかった。彼らがビートルズへの敬意を示すとともに、ファンとしてプレミアに参加した、と考えたい。デザイナーとして有名なポールの娘、ステラ・マッカートニーは夫とともに参加。またビートルズのパロディ・バンドと言えば、ラトルズ。モンティー・パイソンのメンバーによって世界を誤解の渦?に巻き落とした。この日はエリック・アイドルの姿はなかったが、モンティー・パイソン仲間であるマイケル・ペイリンとテリー・ギリアムが姿を現し、ファンにサインしたりして大サービスした。同世代の英コメディー界の大物がロック界の大物に盛大なエールを送ったということか。
200人ほどを収容するロンドンでは最大規模の劇場で、関係者と一般客が同席し映画を満喫した。ビートルズを客観的にドキュメントするというよりは、ビートルズと共にツアーに参加するかのような映画のアングルは臨場感たっぷり。僕の名前はエリックですとしらばくれるジョンなど、たびたび登場するメンバーのジョークに会場中が一緒に大笑いした。またテレビ・インタビュー中にジョンの髪を灰皿代わりにしてたばこの灰を落とすジョージなど、時には子供っぽくてやんちゃなビートルズがなんと可愛いこと。イギリス人にとっては、ホーム・ムービーを見ている感じかも?同時に人種差別に妥協せず、確固な態度を示した彼らの英雄的行動は、アーチストとしては先駆的な存在と言えるだろう。誰もがビートルズの偉大さを、笑いと涙でかみしめる夜だった。(レポート:高野裕子)
写真:James Gillham