<ライヴ・レポート>5月24日(土)日本橋三井ホール公演
5月24日(土)日本橋三井ホール
寺井尚子の新作『ヴェリー・クール』に伴う「ヴェリー・クール・ツアー」東京公演が5月24日(土)が日本橋三井ホールで開催された。
同会場でのコンサートは今回で4回目、ファンにはすっかりお馴染みの場だ。
場内は超満員で、ぎっしりと約700名のお客さんで埋め尽くされた。
『ヴェリー・クール』は松岡“MATZZ”高廣(Per)と 山本玲子(Vib)の2人のゲスト・ミュージシャンの参加が大きな特徴だが、今回のコンサートにはその2人が参加。彼らを含めた全レコーディング・メンバーでの演奏は、東京ではこの日が初めてとなる。
コンサートは情熱的な「タンゴ・プル・クロード」からスタート。のっけから“MATZZ”がタンゴのリズムに乗って盛り上げる。
2曲目「リトル・Bズ・ポエム」では山本のヴィブラフォンがしっとりとヴァイオリンに絡み、大人なムードを聴かせる。
「黒いオルフェ」では寺井&山本のみの演奏でディープに始まり、哀愁のメロディを強調する。
「テンパス・フュージット」ではヴァイオリン、ピアノ、ヴァイブの一糸乱れぬユニゾンと複雑なキメで観客を圧倒。さらにMATZZの叩くラテン・ビートが寺井のソロを煽る。そして寺井尚子の十八番「リベルタンゴ」で盛り上げた後、新譜からクールで都会的なオリジナル「ダンシング・イン・ザ・ウィンド」、と息もつかせぬ流れが続く。
その後、会場の空気を変えるような「カンタロープ・アイランド」はまさに“ヴェリー・クール”。ヴァイブと寺井のピチカートの怪しげなイントロのアレンジが独特なムードを生み出す。抑制の効いた山本~寺井~北島の3人のソロも実に見事で、今回のコンサートの見せ場の一つと言えるだろう。
「アランフェス~スペイン」ではヴァイオリン、ピアノ、ヴァイブによって美しく幕開け、「スペイン」の複雑なリズムのテーマと情熱的なビートでヒートアップする。ヴァイオリンとヴァイブ、そしてドラムとパーカッションの掛け合いが観客の気持ちを煽る。
曲が終わると、自然とお客さん達が立ち上がりステージへ大きな拍手を送った。
MCのメンバー紹介で寺井は今回参加したゲストの2人について、
「感性が止まらない。『ヴェリ―・クール』で出会えてよかった松岡“MATZZ”高廣」
「これからの日本のジャズをしょって立つ、実に落ち着いている若手、山本玲子」
と紹介した。
また、「昨年は音楽人生の節目であり、新たな出発のつもりでヴェリー・クールを作りました。みんなとここで出会えた気持ちを込めて」と語り、「エストレリータ」をしっとりと演奏。その後「このエネルギーを明日からのパワーに変えて、生きていきたいと思います」と話し、「キサス・キサス・キサス」を演奏し、本編終了。
アンコールでは「ジャズ・ワルツ」「星に願いを」「セント・トーマス」「ブルー・ボッサ」の4曲を演奏し、大盛況のうちにコンサートは終了した。
安定感あるバンド・メンバーにプラスして2人のゲストの参加が、寺井の音楽の「リズム」と「感情」を今作で、よりダイナミックに伝えることに成功したことを実感させるコンサートだった。
東京公演と同じメンバーによる、5月31日(土)の仙台公演でツアーは千秋楽を迎える。
寺井尚子 ヴェリー・クール・ツアー 2014 東京公演
日本橋三井ホール
2014年5月24日(土)17:00開演
寺井尚子(vln)
北島直樹(P)
店網邦雄(B)
中沢剛(Ds)
松岡“MATZZ”高廣(Per)
山本玲子(Vib)
<セットリスト>
1. タンゴ・プル・クロード
2. リトル・Bズ・ポエム
3. マイナー・スイング
4. 黒いオルフェ
5. テンパス・フュージット
6. クール・ヴァイブレーショ
7. リベルタンゴ
8. ダンシング・イン・ザ・ウインド
9. カンタロープ・アイランド
10. アランフェス~スペイン
11. エストレリータ
12. キサス・キサス・キサス
(アンコール)
1. ジャズ・ワルツ
2. 星に願いを
3. セント・トーマス
4. ブルー・ボッサ
写真:森リョータ