“ハウス・ミュージック界のビッグネームの一人” レジデント・アドバイザー

テンスネイクドイツ人DJ、プロデューサーのTensnake、本名マルコ・ニメルスキーは現状を一変させるようなダンス音楽のパイオニアとして2010年のダンスフロア・スマッシュヒット『Coma Cat』でその名を世間に知らしめた。それ以来、需要はうなぎ上りだ。クラシックディスコとハウスの影響をコンテンポラリーサウンドに融合させた、とらえどころのない技巧を難なく披露するマルコの音楽は、イビサ島からイタリア、メルボルンそしてマイアミまで世界各地の巨大フロアーで、どこのリスナーにも同じようにアピールするというまれなポジションにいるのだ。その各所で彼はプロデューサーのプロデューサーとして確かな評判を得てきた。彼の音楽はいとも簡単にジャンルを超える。待望のデビューアルバム『Glow』は彼のメジャータレントとしての評判を強固にするに違いない。2014年3月10日発売予定(海外)のアルバムは豪華メンバーとのコラボをフィーチャーしている。グラミー賞3度受賞のスチュアート・プライス(別名ジャック・ル・コント)、グラミー賞ノミネート経験のあるイギリスの新鋭スターMNEK、フィオラ、ジェイミー・リデル…そして偉大なるナイル・ロジャースが2曲でプレイしている。

ハンブルグ生まれのマルコはディスコやソウル、ブギーにファンクといった音楽を聴いて育った。さらにプリンスからバレリアック色の濃いものまで、80年代ポップスの優れた楽曲も好んで聴いていた。兄の影響でフリースタイルやブギー、イタロポップなども聴き始めたという。成長すると、モッズ時代を経て、その後ラリー・レヴァンやジュニア・ボーイズ・オウン、ロマンソニー、そしてマスターズ・アット・ワークなどのダンス音楽に傾倒していく。このように多様な音楽の影響を受けているマルコの音楽が、すでに大抵のアーティストが一生かけて達成するような深みを見せているのも不思議はない。

2005年に仲間とミラウ・レーベルを立ち上げる。マルコの最初の録音は『アラウンド・ザ・ハウス』だった。当時は「幸運に恵まれた」と感じたと言うマルコだが、そのサウンドは6年経った今でも未だにフレッシュだ。ミラウのモットーは「マス(大衆)ではなくクラス(卓越)」であり、レーベルはここ数年で順調に成長を続けインターナショナル・レーベルとして育っている。昨年にはレーベル初のコンピレーションアルバムをリリース。さらにErdbeerschnitzelの秀作『Tender Leaf』もリリースした。

しかしマルコの名を有名にしたのはやはり前述の『Coma Cat』だ。「この曲を書いた瞬間に、すごく特別な曲だとわかったよ」というマルコ。「でもここまで大きくなるとは思ってもいなかったし、こんなに長く聴いてもらえるとも思わなかったよ。」確かに『Coma Cat』がブレイクスルーの一作なのは間違いないが、80年代の影響を受けた、より劇的でゆったりとした『Congolal』、2012年にUKボーカリストのサイロンとのコラボした『Mainline』、そしてアロー・ブラックにフレンドリー・ファイアーズ、ラナ・デル・レイといった面々のための活気のあるリミックスのすべてが、マルコの才能の領域の深さをはっきりと証明している。そしてリトル・ドラゴンのための卓越した『Ritual Union』のミックスは、美しいダウンテンポの一曲だ。その曲のあまりの素晴らしさに、ボーカリストのユキミ・ナガノが昨年マイアミでマルコとともに自らライブバージョンを歌い、拍手喝采を浴びた。

それはこれから起こることの前触れだった。発売間近のデビューアルバムからリリースされる最初の一曲は、フィオラをフィーチャーしたスムーズでダウンテンポの『58BPM』だ。この曲がリリースされた時、人は驚いた。「あれはよく考えた上の決断だった」とマルコは言う。「ファーストシングルと共にアルバムについて発表したかったし、みんなを驚かせたかった」そうだ。プリンスを思い起こさせるサウンドとマノ・ル・タフからの秀逸なリミックスで、もはやこのスネイク(蛇)を追いつめることはできないと証明したようだ。

彼が音楽シーンに初めて登場した時、彼の初期のリリースは当時のどこにでもある小さなハウス・シーンに対抗するものとして歓迎された。マルコがデビュー作で反発していることがあるとすれば、EDM(エレクトロニック・ダンス・ミュージック)の成長を受け、ビッグで大胆なダンス音楽を作ろうと必死になりすぎて曲作りを二の次にしてしまう傾向だ。「人は曲作りのすばらしさを忘れているような気がする」と説明するマルコ。「それが一番大事なんだ。」

このアルバムがダンストラックの寄せ集めではなく、一つの完成したまとまりのあるものに仕上がっていることは、リスナーを常に旅へいざなうマルコのミックスのファンにとって、さほど驚きでもないだろう。家でくつろぎながら最初から最後まで通して聴ける、ダンスミュージックのアルバムとしてはまれな一枚だ。

ここ数年、ディスコ音楽の復活を説く誤解に基づいたコラムがたくさん書かれた。しかしマルコに言わせれば、ディスコが廃れたことは一度もない。むしろ絶えず存在し、彼のレコードコレクションや音楽に影響を与え続けてきた。だからこそマルコにとって、ナイル・ロジャースとのコラボは夢のような出来事だったと言う。

「彼の知識や技術には驚かされたよ」とマルコは言う。「フェイスブックで彼にメッセージを送ったんだ。返事は期待していなかったんだけど、20分後には返信をくれた。僕の音楽を知っていると言ってくれたんだ。だから僕の音楽を送ったら、電話をくれて言ったんだ、“この曲のセッション・ミュージシャンとして参加しても構わないか”って。夢みたいだったよ。」現在Tensnakeはナイル・ロジャースと共にミックスマグのカバー曲に取りかかっている。

『Glow』からの最新シングル『Love Sublime』は、このアルバムがどんな作品か見通せるきらめく一曲だ。心地よいディスコ・ポップの片鱗を感じさせつつ紛れもないナイル・ロジャースのギターのグルーヴと、フィオラの魅惑的なボーカルで色付けされている。アニー・マックやピート・トング、ローレン・ラヴァーンといった強力なサポートを得て、このトラックはゼイン・ロウの『世界で最もホットなレコード』のタイトルを得た。このシングルは超ホットなプロデューサー陣、デューク・デュモント、ル・ユース、ジョナス・ラスマン、さらにUKで最も尊敬されるプロデューサー、ユアン・ピアソンなどによるリミックスもついている。この曲はすでにハイプ・マシーンやDMCといった影響力の大きいアーティストを差し置き、Buzzチャートでナンバーワンを記録。クール・カッツ・チャートでもトップ10入りを果たした。

夏にイビサ島でディープ・ハウスの巨匠ソロモンとタッグを組んだパチャでのセットは完売し、ブームでディフェクティッドのショーにも参加。さらにUSツアーを行うなど、Tensnakeは華々しく2013年を終えた。ボイラー・ルームでは、同じくハウス&ディスコを愛するスクリームやクリスタル・クリアー、メドラーなどの協力を得てヘッドライナーを務めた。それ以降も、大盛り上がりのミックスマグのライブイベントでヘッドライナーを務めている。近々、ベルリンの象徴的クラブ、パノラマ・バーを始めとするヨーロッパ各地でのショーが目白押しだ。『Glow』のリリースは、充実した一年の輝かしいフィナーレを飾ると同時に、重要な新しい一年の序曲となるだろう。

これらすべてのことが、2014年は「ヘビの年」であることを告げているようだ。