BIOGRAPHY
橘 和徳 (たちばな かずのり)
岩手県葛巻町在住 酪農家
昭和58 (1983)年6月15日生まれ
好きな食べ物:牛肉
趣味:ギター
好きなアーティスト:押尾コータロー、井草聖二、森恵、柴田淳、Superfly、秦基博、ペンタトニックス(Pentatonix)
朝6時。吐く息が凍るような日でも、橘和德は牛舎にいる。搾乳は朝夕2回。日中も、農場の仕事に精を出す。そして、広い農場やトラクターの中で歌う。自身の歌が最初に認められたのは、JA全国青年大会で歌って優勝した、25歳のときだ。これがきっかけとなり、歌う場に招かれることもあったが、「自分は酪農家だから」と、それ以上のことは考えていなかった。
転機が訪れたのは、昨年12月にOAされた「歌唱王2016」。決勝に残り、7位となった。妻とその母親から「出て欲しい」と請われての出場だった。その年の9月に岩手県を襲った台風10号で、妻の実家が被災。たいへんな状況なのに歌を歌っていていいのかと思ったが、母娘は熱心に勧める。「自分が歌うことで元気になれるなら」と、エントリーした。選んだ曲は、清水翔太の「花束のかわりにメロディーを」。妻の希望だった。
思い出の曲で予選を突破し、勝ち上がっていった。テレビに映し出されるためには、準決勝まで進まなければならない。「テレビに映らないと妻や母の期待に沿えないと思ったからか、準々決勝は今までにないくらい緊張しました」という。そして、「決勝に行けるとは思っていなかった」とも。
だが、「歌唱王2016」が、彼の人生を変えることに。伸びやかで澄んだ声が、たまたまOAを見ていた地元・岩手の音楽関係者の心をとらえた。広々とした大地を感じさせる彼の歌声は今後、どこまで広がっていくのだろうか。 (インタビュー内澤稲子)