<レポート>ソロ始動25周年記念イベントライブ開催。豪華ゲストと共に繰り広げた一夜。
1997年のソロ始動から25周年のアニバーサリーイヤーを迎えているSUGIZO(LUNA SEA/X JAPAN/THE LAST ROCKSTARS)が、11月29日(水)、Zepp Hanedaにて記念イベント『SUGIZO 四半世紀祭 25th ANNIVERSARY GIG』を開催した。去る11月23日にはシングル全30曲を完全網羅した3枚組のアルバム『THE COMPLETE SINGLE COLLECTION』をリリース。ロック、ジャズ、ファンク、サイケデリックトランス、テクノ、アンビエントと音楽性は多岐にわたり、一人のアーティストが生み出した楽曲群であることが信じられないほど、そのジャンルや表現方法は多岐にわたっているが、常に全身全霊で音楽に向き合うアティチュードはブレない軸として貫かれてきた。ステージでのSUGIZOは、ギタリスト、ヴァイオリニスト、ヴォーカリスト、剣のようなリボンコントローラーを手にしたシンセサイザー奏者、時にはパーカッションも打ち鳴らし、その多才さを存分に発揮。多彩なアーティストをゲストに迎えたこの記念イベントは、SUGIZOの25年間を象徴するような一夜となった。
屋久島の森がスクリーンに映し出される中、アルバム『愛と調和』のオープニングを飾る瞑想に誘うようなインストゥルメンタル「Nova Terra」で神秘的に幕開けると、「SUGIZO25周年記念、四半世紀祭、始めます。最後までアゲアゲで行きましょう」とSUGIZOは短く挨拶。ヴァルカン・サリュートの右手を高く掲げ、ファンもそれに応じると「TELL ME WHY NOT PSYCHEDELIA?」からは怒涛のノンストップパフォーマンスへ突入。コロナ禍でこの3年全員が揃う機会のなかったメンバーのMaZDA (マニピュレーター、シンセサイザー)、よしうらけんじ (パーカッション)、komaki(ドラム、)、ZAKROCK(VJ)から成るSUGIZO COSMIC DANCE QUINTETが晴れて一堂に会し、Dub Master Xがサウンドエンジニアリングを担当。音楽・映像・照明の三位一体でスペクタクルなステージ表現を展開。同時に、「NO MORE NUKES PLAY THE GUTAR」では<NO WAR>というシャウトと連動し、スクリーンにその文言も投影するなど、重要な社会的メッセージを織り込んでいくのもSUGIZOのスタイルである。
本編の後半は、ゲストとのスペシャルセッションの連続。現代音楽的なアプローチを取ったミニマルなテクノ楽曲「Raummusik」には、SUGIZO率いるサイケデリックジャムバンドSHAGのバンドメイトであり15年来の盟友・類家心平(RS5pb、菊地成孔ダブ・セクステット、SHAG)を招聘。スクリーンにはウクライナへの軍事侵攻に抗う人々が映し出され、<STOP WAR>のメッセージをアピール。映像だけでなく、やがてステージはウクライナの国旗にリンクした黄色とブルーの照明で染められていった。SUGIZOは多岐にわたる社会活動を行なっているが、戦火から逃れこの日招待されていたウクライナ難民の人々は、この曲が終わった瞬間、ひときわ大きな拍手喝采を送っていた。
類家と入れ替わりで、「Lux Aeterna」と「MIRANDA」にはコンテンポラリーダンサーにしてやはり長年の盟友である西島数博、風間自然が参加。音楽性どころか表現形態の線引きもも超越して連帯し、SUGIZOはその音楽世界を拡張し掘り下げていく。SUGIZOを中心として二人はステージの左右に位置取り、時に美しく軽やかに跳躍したり、時に苦悩するようにうずくまったりと迫真の身体表現を繰り広げ、曲のイメージを果てしなく増幅させていった。続いては、SHAGのバンドメイトである規格外の天才ベーシストKenKen(RIZE、LIFE IS GROOVE、ComplianS、The Free Nation、FAB4、SHAG)と、再登場となる類家を招き入れ「THE CAGE」を共演。ハードなドラムンベースのビートに乗せ、SUGIZOは鋭利なギターカッティングを刻み続けながら、KenKen、類家と代わる代わる向き合って熱くプレイした。披露し終えるとKenKenは、「今のイントロ、16歳の時から20年やってきた」と長年の交流を振り返って感慨深そうで、SUGIZOを「最高のミュージシャンです」と讃えた。次曲「DELIVER…」には、2人に加え新進気鋭ヴォーカリストのChloe(パジャマで海なんかいかない)が登場。魅惑的なボサノヴァ調のスローナンバーをSUGIZOとデュエットでしっとりと届け、会場のムードを染め変えた。
アンニュイな余韻を味わったのも束の間、X JAPANのバンドメイトHEATH(Ba)の名をSUGIZOがコールすると観客は大拍手、終盤に向けてアグレッシヴなパートの火蓋が落とされた。祈りを捧げるヒジャブ姿の女性の映像が背後に映し出され、「ENOLA GAY RELOADED」がスタート。フラッグを大きく振りかざしたSUGIZO。タイトルが示すように反核、反戦を正面から扱ったこの曲を、意味深長で強烈な映像と共に、怒りに荒れ狂うような激しいサウンドで表現していく。HEATHとSUGIZOが互いに向き合って髪を振り乱す場面はこの上なくエモーショナル。間髪入れず始まった次曲「禊」にもHEATHは参加。ヘヴィーなギターリフと複雑な拍子を全員で刻んでいく間合いが堪らなくスリリングなこの曲に、更なる高揚感をもたらした。全ての緊迫感を解き放つように、本編ラストの「DO-FUNK DANCE」では極彩色の照明とミラーボールが輝く中、ひたすらアッパーにパフォーマンス。再び登場した類家のトランペットは狂騒的で、Chloeの歌声は天に駆け上るようなパワーに満ちていた。SUGIZOは目にもとまらぬ速さでシャープなカッティングを繰り出し続け、ステージを駆け回っていた。
アンコールで再登場すると、「この25年間は本当に紆余曲折があったし、波乱万丈な人生だった」と語り始めたSUGIZO。この記念公演後は、LUNA SEAの“黒服限定GIG”が控えており、先日結成が発表されたYOSHIKI、HYDE、MIYAVIらとの新バンドTHE LAST ROCKSTARSのライヴも2023年1月に予定されており、レコーディングも進行中だと語る。世界的な情勢、激動の時代に言及しながら「世界中各国でまだまだ苦しい状況を強いられている人たちがいる中で、俺たちはこうやって一緒に音楽ができる。この奇跡をちゃんと噛み締めて感謝して、そして心から楽しんで、ポジティヴなエネルギーを世界中に、宇宙に一緒に投げ掛けていきましょう」とSUGIZO。「必ずいつか平和は訪れる。必ず皆が一つになれる。クサい話かもしれないけど、そこは信じないと何も始まらない。音楽を通してこの信じている想いをこれからも発信していきたい。これからも一緒に、共に歩んでいただけたら幸いです」と力強く語り掛けた。加えて、この日のライヴは水素燃料電池で生み出した電力で全楽器をまかなうだけでなく、初の試みとしていくつかの照明にも使用しているとSUGIZOが明かした。平和を願う発言の数々や環境活動が絵空事に終わらず、そういった行動に裏付けられているのがSUGIZOの凄みである。
アンコールで披露したのは、同じフレーズを繰り返しながら昂っていくSUGIZOのヴァイオリンの旋律が美しい「FATIMA」。スクリーンには海中の世界が広がり、ベリーダンサーの女性が人魚のように身を揺らす映像が幻想的。海底へと射し込む光のような白い照明も相まって、ステージには、溜息が零れる程美しい光景が立ち上がっていた。「TELL ME WHY?」には再度HEATHとChloeが参加。SUGIZOは、ギターを掻き毟りながら、やるせない想いを訴え掛けるように熱唱。ハイポジションを多用した印象的なHEATHのベースソロ、生命力溢れ出るChloeのヴォーカルソロが、曲に新たな魅力を与えていく。それぞれのソロパートでは、SUGIZOは彼、彼女を指さして観客に「注目!」とでも言うようにアピール。こうしたゲストをリスペクトする姿勢はライヴの随所で見受けられた。
最後のゲストとして迎えたのは、佐藤タイジ(シアターブルック、ComplianS)。佐藤は”THE SOLAR BUDOKAN”の発起人であり、時代に先駆けてエネルギー問題に取り組んできたロック界の同志である。2人はハイタッチとハグを交わし、佐藤は「SUGIZOくん25周年おめでとうございます。素晴らしいパーティーです」と絶賛した。共にアコースティックギター弾き語りでセッションしたのは、2020年、終戦75周年の記念日8月15日に発表したカヴァー曲にしてプロテストソング「昨日見た夢~平和の誓い~2020」。リスペクトし合う二人が奏でる非常にピースフルなハーモニーで、全曲が終了。出演者がラインナップして宴は幕を閉じた。この模様はCSテレ朝チャンネル2にて生中継され、全国各地のファンが画面越しにSUGIZOの25周年を共に祝った。12月27日(火)よる9:30~のアンコール放送が既に決定している。25周年イヤーはまだ始まったばかり。SUGIZOは更に高く飛翔していく。
(取材・文/大前多恵)