ニュー・アルバム『Heart Of Gold』レビュー&全曲試聴ティザー公開
■SING LIKE TALKING4年半ぶりのニュー・アルバム『Heart Of Gold』リリースに寄せて
SING LIKE TALKINGのデビュー30周年を飾るニュー・アルバム『Heart Of Gold』は、そのキャリアと豊かな音楽素養に裏打ちされたサウンド・メイクと滋味に富んだボーカルの魅力で飽きさせない、彼らならではのポップ・アルバムだ。
彼らは、2013年に前作アルバム『Befriend』をリリースすると、2015年にはオールタイム・セレクションアルバム『Anthology』をリリースしてそれまでのキャリアにひとつの区切りをつけ、そこから1年に1枚ずつ(2017年は2枚)シングルをリリースし、さらには30周年に向けたカウントアップ企画として毎年明解なテーマのもとに用意されたスペシャルなセット・リストによるプレミアム・ライブを実現してきた。今回のアルバムは、その4枚のシングルからの曲を中心に構成されており、そうした先行リリース楽曲を踏まえてアルバムを組み立てる作業は、これまで“まずアルバム、そのなかからシングル”という作り方で作品を積み重ねてきたメンバー3人とっては新鮮な体験だったようだ。
もっとも、彼らの音楽のベースにあるものを育んだ60年代、70年代のポップス・シーンは、それこそシングル曲の完成度とバラエティーを競った時代であり、だからこそ歴史に残る名曲が数多く生まれたわけだが、時代がひと巡りしてまたアルバムよりもシングル、あるいは個々の楽曲単位で音楽を楽しむことが主流になっている現代のシーンは、知る人ぞ知る“いい曲の宝庫”、SING LIKE TALKINGの音楽の個性をより楽しみやすい状況になっているとも言えるだろう。そして、そうした個々の楽曲の魅力を生かして構成されたこの新作は、まさに2018年型のSING LIKE TALKINGを伝える作品と言えそうだ。
その上で注目すべきは、そうした名曲集的な成り立ちを持ちながらもアルバムとしての物語性がちゃんと楽しめる内容になっていることで、四季が巡っていく時の流れのなかで生まれるドラマと、そこに浮かび上がる人の気持ちの機微をロマンチックに描き出している。
アルバム・タイトルは、純粋な濁りのない心の優しさ、あるいはそういう心の持ち主という意味だ。“Heart”も“Gold”も中学生にだってわかる英単語だが、それが組み合わさって使われる場合の含意は、歳を重ねるほどに味わい深く感じられる。このアルバムもまた、1曲1曲の馴染みやすさ、心地よさとは別に、全体を通して繰り返し聴くほどに感じられるその奥行きと深みに、30年目を迎えたこの3人組が積み重ねてきたものの大きさをあらためて実感せずにはいられない1枚だ。
兼田達矢
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