<レポート>3/31 新宿Pit Inn公演
Shinya Fukumori Trio 『For 2 Akis』Japan Tour 2018
3月31日(土) 新宿Pit Inn公演ライヴ・レポート
2019年に創設50周年を迎えるジャズの名門レーベルECMから日本人ジャズ・ミュージシャンとして2人目となるリーダー・アルバム『フォー・トゥー・アキズ』を2018年2月16日(金)にリリース(国内盤は3月28日発売)したドラマー福盛進也が、アルバム発売を記念したジャパン・ツアー初日を3月31日(土)に新宿ピットインで迎えた。Shinya Fukumori Trioのマテュー・ボルデナーヴ(ts)とウォルター・ラング(p)も参加し、ECMに代表される耽美な世界観と、今作『フォー・トゥー・アキズ』で福盛自身がこだわったメロディの美しさが共存するパフォーマンスが披露されたこの日の模様をレポートする。
開場前の19時頃には既に “ECMからデビュー”という偉業を成し遂げた日本人を一目見ようという観客の列が新宿Pit Innの前に出来ており、早くも注目度の高さが伺えた。そして開場後には、用意された観客席はすぐさま埋まり、「一体どのような演奏がこれから始まるのだろう」といったような期待感が会場中に広がる。
定刻から5分遅れてShinya Fukumori Trioがステージに登場すると、沈黙のなかに滑らかな福盛のシンバルが響き、「サイレント・カオス」、「星めぐりの歌」が続いて演奏された。アルバムのテイクと同様に叙情的でありつつも、ライブならではのインタープレイが楽しめるパフォーマンスが繰り広げられる。滝 廉太郎作曲の「荒城の月」が組み込まれた大曲「ザ・ライト・スイート」の演奏後に「映画を観てるようにリラックスしながら聴いてください」と福盛が語ったように、ファースト・セットは計6曲がひとつのストーリーであるかのように演奏され、リズム・キープという一般的なドラマーの役割を担うのではなく、楽曲の世界観を演出することに重きを置いた福盛のドラミングが際立つステージであった。
休憩をはさんで始まったセカンド・セットでは、アルバム・タイトル曲「フォー・トゥー・アキズ」のように決まったテンポで演奏されない所謂ルバートの楽曲がありつつ、ファースト・セットにはなかったビートが刻まれる楽曲も披露され、福盛のドラマーとしての資質の高さが伺えた。またセカンド・セットでは、「愛燦燦」や「満月の夕」といった日本の名曲におけるウォルター・ラング(p)とマテュー・ボルデナーヴ(ts)のどこか懐かしさを感じるメロディが際立った演奏が印象的であった。
マテューの叙情的なテナー・サックスの音と、楽曲の導き手とも言えるようなウォルターのピアノが、繊細でオリジナリティ溢れる福盛のドラミングと絡み合い、三者が有機的に関係するようなパフォーマンスであったこの日のShinya Fukumori Trioの演奏には、これからのECMを代表するアーティストの風格すら漂っており、今後の更なる活躍が大いに期待させられる。