BIOGRAPHY
SCARS ON BROADWAY / スカーズ・オン・ブロードウェイ
「新人バンドの気分だね」とダロン・マラキアンが言う。バンド名を聞かれて「スカーズ・オン・ブロードウェイ」と言うとほとんどの人は「始めて聞いた」、とか「クールだ」とか言うんだ。
もちろん、システム・オブ・ア・ダウンでダロン・マラキアンとジョン・ドルマヤンは5枚のプラチナディスクと、全米1位を3枚のアルバムで獲得し、数多くのフェスティバルでのヘッドラインも務め、世界中でライヴがソールドアウトとなるなど、絶大なる人気を誇った。現在のスカーズへの認知度はまだまだこれからとダロンは言う。しかしダロンは「システムのダロンと言えばファンたちが群がるようなものではない」とも自嘲し、大切なのはそこではないとわかっている。全米7月29日リリース予定のセルフタイトルのアルバムからリードシングルの「ゼイ・セイ」で再びロック・シーンへ殴りこみをかけようとしている。「最初にこのシングルをラジオで聴いたとき、初めて自分の曲がラジオでかかった時と同じ歓びだったよ。」とダロンは新しいバンドに興奮を隠しきれなかった。
「システム時代はファンたちが俺達の曲を知りすぎていたからライヴで必ず盛り上がっていた。ヒット曲をやるだけでライヴは成功していたけど、今回は新しいサウンドでファンたちを盛り上げるプレッシャーが逆にワクワクさせるんだ。」
「オーディエンスがシステムの名前を叫んでくれた頃はそれが当たり前になり、最後にはファンの叫びを要求するようになっていた。でも今回メタリカとパフォーマンスをした時に観客からスカーズの叫びが聞こえてとてもフレッシュな気持ちになれたよ。また一から始められる歓びを見付ける事ができてね。10年間忘れていた事を再び感じさせてくれたようだよ。」と言う。
システムの中心人物でもあったギタリストのダロンだが、今回フロントマンとしてステージに立ち、新たなサウンド、パフォーマンスを披露する事によりまるで初心へ戻ったかのように感じさせる。
アグレッシブな「シリアス」(仮タイトル)や「エクスプローディング/リローディング」の他にもアルバムには「ホアリング・ストリーツ」のようなエネルギッシュなパンクサウンドや、メロディックな「ファニー」、そしてロック原点に戻った「ワールド・ロング・ゴーン」ともちろん「ゼイ・セイ」などバラエティ豊かな楽曲が収録されている。
ダロンにとってスカーズはとても魅力的なバンドだと言う。長年のビートルズファンとして、メロディーにも重きを置いている。「ダロンはこの10年間で成長したと思う。作る曲もレベルの高いものになっているし、メロディーもより重視する事になり俺は嬉しいね。またミュージシャンとして違うスタイルの音楽ができることはとても楽しいし、成長できるって事だと思う。このアルバムはバラエティ豊かに思われるが、どこか全て接点があり繋がりがあるアルバムだと思う」
ダロンによると「俺は60、70年代の音楽をよく聴いている。特にキンクス、ビートルズ、ゾンビーズやニール・ヤングの大ファンだよ。「3005」と言う曲はわかりづらいかもしれないけどニール・ヤングの影響で作った曲だよ。」
「ケミカルス」のような演劇的なトラックも「バビロン」のようなパンクxコサックのような一瞬にしてリスナーの注目を引く曲もあるが、それは彼らの新しい音楽に対するチャレンジであり、根本的なシステム思考のロック魂は決して薄れていない。
2005年から噂されていたスカーズの結成は正式にドラマーのジョンが入ってからである。ダロンいわく「ジョンは信頼できる人間でもあるし、ドラマーとしても俺は大好きだ。だから彼の参加によりバンドの進化を期待する事が出来たんだ。」
ジョンはさらに「このバンドに入る事はプレイヤーとしての技術だけではない、メンバーとして、家族としてお互いを支えあえる心を持った奴だけ選択したんだ」
スカーズは既にバンド結成から3年経っている。マラキアンはこれに対し「俺達はメロディーを重視して気分、感情によって作られる音楽を求めている。時間を気にしながら音楽を作りたくなかった。じっくり時間をかけ、自然に曲が出で来るのを待っていたんだ。無理に曲を作る事を避けていた」
「不満や怒りは彼らの音楽にある感情であり、リスナーも共感できる感情だと思う。」とマラキアンは言う。「このような感情は日々の生活から自然に生まれてくるものだと思う。テレビでは美人アナウンサーがこの世で起こっている恐ろしい事件などを涼しい顔で話していたり、イラクで自殺率が上がっているだの聞きたくないニュースがあちらこちらから聞こえてくる。俺達の脳は何に反応していいのか、感情的になるべきか判断がつかなくなっている」
しかし今作は2人にとって音楽的にとても満たされている作品だと言う。「なんだか自分の子供が大きく成長した気分だね、音楽的に成長している。」マラキアンは「スカーズは俺達がシステムから育ち、進化したバンドだね。言葉に表せないけど俺達にあっていると思う」
ダロンは最後に「みんなにスカーズを早く聞いてもらいたい。多分リスナーも共感できると思うし、俺にとって今までで最高の作品だと思う。誇りに思えるアルバムだ」と言う。