アルバム『スティッキー・フィンガーズ』について、著名人の皆様よりコメントを頂戴しました!
2015.5.13UP
ピーター・バラカン氏
アルバム『スティッキー・フィンガーズ』について ピーター・バラカン
1971年の作品『スティッキー・フィンガーズ』はローリング・ストーンズの黄金時代の最中に発表されたアルバムですが、彼らにとって色々な意味で大きな再出発となりました。60年代の終盤にブライアン・ジョーンズが亡くなり、代りに入ったミック・テイラーがこのアルバムから本格的に参加する形になりました。また63年のデビューからストーンズがずっと所属していたデッカ・レコードを離れ、2代目のマネジャーだったアレン・クラインとも別れた彼らは、ビートルズが67年に立ち上げたアップル・レーベルに続いて、自分たちのローリング・ストーンズ・レコードを設立しました。
その第一弾発売となったこの『スティッキー・フィンガーズ』では、ストーンズは一度汚れてしまったブランドの信頼を取り戻さなければならない時期でもありました。1969年12月に開催されたアルタモント・フェスティヴァルで、観客の一人が警備を任されていたヘルズ・エンジェルスのメンバーに刺し殺されるというショッキングな出来事によって、その数カ月前にウッドストックで頂点に達した印象があったヒッピー文化の愛と平和のイメージが決定的に崩れてしまったのです。この事件はストーンズの責任とは言えないものの、彼らの演奏中に起きたものだったし、ストーンズとしてその負のイメージを挽回したかったはずです。
音楽的には様々なスタイルの曲があって、歌詞がやや物議を醸した大ヒット曲の「ブラウン・シュガー」を始め、サックスのボビー・キーズとトランペットのジム・プライスがこのアルバムから準メンバー扱いになりました。アラバマ州のマッスル・ショールズで録音された「ワイルド・ホース」でカントリーの影響が感じられたり、7分にも及ぶ「キャント・ユー・ヒア・ミー・ノッキング」でラテン風味の、今の感覚で言えばジャム・バンドのようなノリがあったり、ストーンズの成長ぶりが感じられるアルバムでしたが、マリアンヌ・フェイスフルの麻薬中毒をテーマとした「シスター・モーフィン」といった暗い感じの曲や長めのスローな「ムーンライト・マイル」などもあって、全体的に多少地味な印象がありました。発表された当初ぼくの周りの友だちで評価がかなり分かれていたのですが、あれから40年以上経つ今聞くとストーンズの最も脂が乗っていた時期の代表作であることは間違いありません。
2015.6.3UP
オカモトショウ氏(OKAMOTO’S)
アルバム『スティッキー・フィンガーズ』について オカモトショウ(OKAMOTO’S)
学生の頃は、初期のブルースや『Beggar’s Banquet』、『Their Satanic Majesties Request』なんかにグッときた。そのあと『Some Girls』以降の作品も好きになって…『Sticky Fingers』にのめり込んだのは割と最近のことかもしれない。まだ子供だったんだな、と今では思う。
男の目に染みる楽曲はやっぱりいい。誰にも見せない表情までカッコつけるのが、大人の醍醐味なんだと改めて感じる。
デニムを履いて、1人で出掛けよう。『Sticky Fingers』を聴きながら。
仲井戸“CHABO”麗市氏
当時、発売日に新宿のレコード屋でゲット。ヒップなジャケットを抱きしめて
バス停までダッシュ。帰宅して針を落とす。「ブラウン•シュガー」でノック•アウト
「ムーンライト・マイル」まで一目散。A面B面何度も何度もひっくり返してエンドレス。
ブルース、R&Bをたっぷり吸引して見事なオリジナルへと昇華させる、バンドマジックの塊(かたまり)Yeah!最高であり続けてる「スティッキー•フィンガーズ」
という名のRockなミラクルに、今またノック•アウトさせられている。
Yeah!Yeah!Yeah!
世良公則氏
半世紀、転がり続ける巨岩たち。転がり続けて丸くなるどころか、いつだって『スリル』と
『セクシー』にあふれている。ロック黄金期に向かう70年代のスタート。でも、「あの時」などと
懐かしんでいるなど馬鹿らしい。「今、この時」こそ世代を超えて体感すべきロックンロールが
ここにある。を聴きながら。
甲本ヒロト氏(ザ・クロマニヨンズ)
宝物。ぜったい宝物です。
人類の! とかじゃなくて、ぼくの!
と、みんなが思うはずです。
真島昌利氏(ザ・クロマニヨンズ / ましまろ)
Yeah! このヤンチャな指共は、いたいけなガキの心を
さんざんかき乱したあげく、今でも永遠の方向を指し示してるじゃんか!
たいしたもんだぜ、ロックンロール!
有賀幹夫氏(ザ・ローリング・ストーンズ オフィシャル・フォトグラファー)
この作品はデビュー以来追求してきたストーンズ・サウンドの余裕の完成形であり、その内容は深い。また驚くほどバラエティーにとんだ各曲は、ライブでの重要なレパートリーばかり。完全無欠なR&R「ブラウン・シュガー」は当然のこと、「ワイルド・ホース」やハード・ロック的「ビッチ」、カントリーな「デッド・フラワーズ」、また’99年『No Security』USツアー以降「シスター・モーフィン」「ムーンライト・マイル」等も初披露され、結果同アルバムから全曲が歴代ツアーで演奏されたことになる。同じように全曲演奏アルバムに『女たち』があるが、ノリのいい『女たち』の曲に対し『スティッキー・フィンガーズ』の例えば「シスター・モーフィン」等は、演奏するメンバー達に独特の緊張感があり、忘れられない印象が残っている。
花田裕之氏(ロックンロールジプシーズ)
バランスよく、そして深いところまでストーンズを堪能できる最高の1枚だろう。
僕はこのアルバムのせいでアラバマのマッスル・ショールズまで行ってしまった。
2015.6.3最終更新