Biography
11月5日、ロビー・ウィリアムスはニュー・アルバムをリリースする。アルバム名は『Take The Crown』。本作のレコーディング時と、その発表を待つ間の、彼の心境を反映しているタイトルだ。”ポップ・スター:ロビー・ウィリアムス”であるということ — それがどういうことかについて、近年、彼が相反する感情を抱いているように思われたことも、時にはあったかもしれない。恐らくそれは本人が示唆する通り、彼の作る音楽にすら影響を及ぼしていた。だがもはやそうではない。「今回のアルバムが『Take The Crown』(※”王座に就く”という意味)ってタイトルになったのは、僕が闘いたいと思ってるからだよ」とロビーは語る。「ポップ王国において、僕の行く手を阻もうとする相手がいたら誰であろうと闘うつもりだ。僕がかつて戴いていた、そしてもしかしたら今もこの頭上にある王冠を、他の誰にも渡したくはないんだ。僕がこの仕事を愛しているってことを世の中の人々に伝えたいし、そのためなら闘うことも辞さないよ」
デビューから最初の20年余にわたるキャリアの中でロビー・ウィリアムスが築き上げてきた、ありとあらゆる前代未聞の偉業は、 2010年リリースの豪華記念ベスト盤『グレイテスト・ヒッツ 1990-2010』(原題:In And Out Of Consciousness: Greatest Hits 1990-2010) にも収められている通り、広く世に知れ渡っている。10代の初めに、ボーイ・グループのテイク・ザットの一員として成功とフラストレーションとを経験した後、ソロに転向。その後は数々の新記録を樹立し、世代を代表するライヴ・パフォーマーとしての評価を固めた数々のツアーや単発イベント・ライヴを成功させ、驚異的な一連の特上ソロ・アルバムで、その地位を盤石なものにしてきたロビー。つまり、1997年の『ライフ・スルー・ア・レンズ』(Life Thru A Lens)、1998年の『アイヴ・ビーン・エクスペクティング・ユー』(I’ve Been Expecting You)、2000年の『シング・ホエン・ユー・アー・ウィニング』(Sing When You’re Winning)、2001年の『スウィング・ホエン・ユー・アー・ウィニング』(Swing When You’re Winning)、2002年の『エスカポロジー』(Excapology)、2005年の『インテンシヴ・ケア』(Intensive Care)、2006年の『ルードボックス』(Rudebox)、そして2009年の『ヴィデオ・スターの悲劇』(Reality Killed The Video Star)がそれだ。そして2010年、テイク・ザットの新作アルバム『プログレス』(Progress)の発表に合わせ、テイク・ザットへのまさかの暫定復帰が実現し、続く2011年のツアーで、ロビーは更なる成功を収めた。(同ツアーは、英国音楽史上最大のツアーとなった)。そしてそれが、彼が次にどこに向かうの下準備となったのである。「あらゆる面において大成功だった — レビュー的にも、商業的にも、気持ちの上でも、財政的にも、何もかも驚くほど素晴らしかったよ」と振り返るロビー。「自己設定し直して、もう一度熱意を取り戻すために、僕には必要な”小休止”だったんだ。テイク・ザットのリユニオンの後、僕は超強力なソロ・アルバムで復帰したくなったんだよ」
他のプロジェクト — 例えば先日、メンズウェア・ブランドの[Farrell]でアパレル界に初進出したり、毎年恒例のチャリティ・トーナメント大会『サッカー・エイド』を開催したり等 — を監督するために休みをとった時ですら、ロビーは曲作りの手を決して休めることはなかった。これは彼が大人になってからずっと継続してきたことの1つである。ゲイリー・バーロウとの創造性豊かなソングライティング・パートナーシップが復活したことにより、今回のニュー・アルバムでは、そこから生まれた数多くの楽曲から2曲(「Candy」と「Different」)を収録することとなった。だが今作の核となっているのは、幸運な偶然の出来事の産物の、より新たな協力関係だろう。コラボ相手探しや、新鮮な創造的エネルギーとの出会いにかけては、長い歴史を持っているロビー。去年、彼がロサンゼルスの自宅に無名の若いオーストラリア人ミュージシャン/ソングライター2人を招いた時に、それが引き続き起こったのだった。その2人とは、ラッパーをやっているロビーの義弟がロスのバーで知り合った、ティム・メトカーフ(Tim Metcalfe)とフリン・フランシス(Flynn Francis)。そのオーストラリア人ミュージシャン2人に一緒に曲作りをしようと持ちかけた時には、次に何が起きるかロビーは予想もしていなかった。曲は自然に湧き出てきたという。「次から次へと、どんどん曲が生まれてきたんだよね」とロビー。「10日間で14曲書いたと思う。もうビックリだったよ。そんなことが起きたのは、ガイ・チェンバースとファースト・アルバムを書いた時だけだった」。単に曲が生まれたというだけではなく、また単にスペシャルな曲が生まれたというだけでもなく、正にロビーがその瞬間に書きたいと思っていた曲そのものが生まれたのだ。つまりヒット・シングルらしい、雄大で喜びに満ちたメロディが溢れる、懐の深い壮大な曲。「彼らの指の間からはポップが流れ出て来るんだよ」と、新たなコラボレイター陣について語るロビー。「そしてそこから思いがけない調和が生まれるはずだと、僕にはすぐ分かったんだ」
これらの楽曲が持つ怒濤のアンセミックなポテンシャルを完全に実現するために、アルバムのプロデューサーとして、ロビーは更に新たなコラボレイターの手を借りることにした。今回選んだのは、従来以上に高い名声を確立している人物、ジャックナイフ・リーだ。彼は、U2やスノー・パトロール、R.E.M.らといった面々との仕事で知られるプロデューサーである。「アルバムの美学的な部分は既に準備が整っていたし、どういった作品にしたいかという意図も明確だった。おかげで僕としては楽だったよ。僕はただそれを引き出せばいいだけだったからね」と、ジャックナイフ・リーは説明する。「曲は、何か壮大なものを目指していた。どれもエネルギーたっぷりに思えたよ、緊張感に満ちたエネルギーにね」。それは豪華なサウンドになるよう運命づけられていたが、同時にロビー・ウィリアムスのようなアーティストがこういった曲にもたらす独特の魔法に、リスナーを集中させてくれるサウンドでもあった。「ロビーが曲をうまくやれてる時、全てがうまくいってる時って、彼の弱さや傷つきやすさが表われている時なんだと思うよ」と、ジャックナイフ・リーは語る。「それって表裏一体なんだよね。強がりに対する、弱さ。そこにこそ、人の心をつかんで離さない説得力があるんだ」
『Take The Crown』のレコーディングが行われたのは、ロサンゼルスの北、トパンガ・キャニオンにあるジャックナイフ・リーのガレージ・スタジオだ。通常のレコーディング・スタジオと比べて堅苦しさも威圧感も少ないその雰囲気を、ロビーは堪能していた。参加ミュージシャンの錚々たる顔ぶれに含まれているのは、クイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジのギタリスト、トロイ・ヴァン・リューウェンや、バンド・オブ・ホーセズの元ギタリスト、ブレイク・ミルズ、ドラマーのビル・リーフリン(解散までの8年間、R.E.Mでプレイ)、ベースにはジャスティン・メルダル=ジョンセン(ベック、エール、M83)、編曲家のオーウェン・パレット(アーケイド・ファイア、ペット・ショップ・ボーイズ)ら。そしてバッキング・ヴォーカルには、今作に収録されているカヴァー曲「Losers」の原曲を手掛けたロサンゼルスの姉弟グループ、ベル・ブリゲード(The Belle Brigade)のバーバラ・グラスカ(Barbara Gruska)。同曲でロビーは、アメリカ人ソロ・アーティストのリジー(Lissie)とデュエットを行っている。ロビーがインターネットでベル・ブリゲード版「Losers」のビデオと偶然出くわしたのは、ジャックナイフ・リーが推薦したバッキング・ヴォーカリストをリサーチしている時だった。「その曲には即座に夢中になって、レコーディングしなきゃって即座に思ったんだ」とロビー。「すごく素敵なメッセージのある曲なんだよね。僕が普段感じてること、普段考えてることとは真逆でさ、つまり、”外に出かけて、征服して、家に帰って、寝る”っていうのが普段の僕だろ。でもこの曲では、”負けを認めるよ、降参する/ 一緒にこれを乗り越えて、楽しく過ごそうよ?”って訴えてるんだ。それが僕の心を強く動かしたんだよね。(ライヴで)歌うのが待ち切れないし、僕のライヴを観に来てくれる世の中の人々の一部が、同じ気持ちになってくれたら嬉しいね」
新作からの第一弾シングルが、ゲイリー・バーロウと共作した曲の1つ「Candy」になるだろうことは以前よりほぼ確実だったが、同曲にはその後、スタジオでしっかりと改訂が加えられた。「これは夏曲なんだ」とロビー。「「Rock DJ」とすごく似たような文脈でね。『私ってスゴいでしょ』と思ってる女の子がテーマなんだ。彼女はもしかしたら実際そうなのかもしれないけど、ちょっとやり方が極悪な娘なんだよね。書き上げるのに時間がかかる曲もあれば、完全な形で口から飛び出してきたり、頭から飛び出してきたりして、あれこれ考える必要のない曲もある。ああいう特定の時期に、どうして口や頭からあれが飛び出してきたりしたのか、自分では分からないんだけどさ — とにかく出てきちゃったんだ」。色々な意味で、今回のアルバムを代表する曲ではないものの、新作の序章としてはやはり完璧だと言えよう。「僕にとって最優先なのはね、」とロビー。「ヒットになるはずだと僕が思い、そして世の中もまたそう思ってくれるであろう、そういう曲を書くことだったんだ」
ロビー・ウィリアムスのアルバムがこれまで大抵そうであったように、曲の多くは非常に個人的な内容となっているが、よりゆったりとした瞑想的な瞬間でも、決して弱まることのない活力と刺激とが今作全体には溢れている。そのハイライトとなっているのは、例えば「Be A Boy」(「僕を力づけてくれる曲」)や、「Shit On The Radio」(良い意味で言ってるんだよ……皮肉っぽくね。僕自身もラジオでかかってる”くだらない音楽”なのさ」)。そして「All That I Want」(官能小説『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』、『リーダーズ・ダイジェスト』、『チャタレイ夫人の恋人』、今挙げたそういうの全部)や、「Into The Silence」(「そこはとても孤独で気が滅入るような恐ろしい場所なんだよ — “僕が自分に対して残酷になったのは君のせいだ” - 他の人の苦労を押しつけられてさ」)。そして「Different」(「意味は聴き手の自由な解釈に任せたいな:”今度の僕はこれまでとは違う、約束するよ” - 「罪は私にあります」ってこと)に、「Gospel」。後者でロビーは、自分がティーンエイジャーの頃、大人になるとはどういうことだと思っていたのかを思い出し、そこから現在へと飛び、彼が送ってきた人生へ、そして今送っている人生へと飛んでいる。「この20年間ずっと僕についてきてくれたオーディエンスに向かって、こう歌っているんだよ:”僕は今もこれを求めてる。14、15、16歳の頃に思い描いてた、素晴らしいものになりたいと思ってる。それにならなきゃいけないと、そして今もそれになりたいと。君に一緒に来てもらいたいんだ”ってね。ありがたいことに、彼ら彼女らはついてきてくれた。そしてありがたいことに、一緒にこれを歌ってくれるオーディエンスが僕にはいてくれる。その日を心待ちにしているよ」
ここで私たちは、再び『Take The Crown』というタイトルに立ち返ることになる。ロビーはその題に更にもう1つの意味を付け加えたのだ。実にロビー・ウィリアムスらしい願いを、もう1つ。「これにイラっとくる人もいるんじゃないかな、そう願うよ」。彼は身体のあちこちに入っているタトゥーを指差し、その1つ1つが彼の過去や運命にとってどんな意味があるか、また自分がどういう人間であり、なぜここにいるのかを、それらがいかにして毎日思い出させてくれるかを説明してくれた。「そして『Take The Crown』は、別の形での新しいタトゥーなんだ」とロビー。「『よし、それじゃ、ハッキリさせようぜ! 相手になりたい奴はかかってきな? こっちは闘う準備ができてるぜ』って言ってるんだよ」。