BIOGRAPHY
2013年の始め。イギリスを拠点とする4人組リクストンは、地元のみすぼらしい会場をまわり、その美しいハーモニーとポップミュージックのソウルフルなミックスで注目を集めようとしていた。同時にカバー曲をYouTubeにアップすることでバンドはゆっくりとファンを増やし、クリス・ブラウンの『Don’t Wake Me Up』をカバーした彼らのセミアコースティック・バージョンは25万回もの視聴を記録した。
彼らのカバーを耳にした敏腕マネージャー、スクーター・ブラウン(ジャスティン・ビーバー、カーリー・レイ・ジェプセン、PSY、アリアナ・グランデの担当として有名)が、リクストンをスクールボーイ/ジャイアント・リトル・マン/インタースコープ・レコードとの契約へと導いた。そして今、プロデューサーのベニー・ブランコ(マルーン5やケイティー・ペリー)と共に、リクストンはデビューアルバムの発表を控えている。初のアルバムでは、空高く舞い上がるような4人のハーモニーと、アリーナ・サイズ級の観客をも引きつけるサビ、そして磨きのかかった音楽技術を披露することになるだろう。
マンチェスター出身のリクストンが提供するのは、自らのソングライティングと演奏による豊かでクセになるポップ音楽だ。さらにピュアなボーカルの才能も備えている。リードボーカル/リズムギター担当のジェイク・ロシュ、リードギター/ボーカルのチャーリー・バグナル、ベース/キーボード/ボーカル担当のダニー・ウィルキン、そしてドラム/ボーカルのルイ・モーガン。この4人が奏でる『Make Out』は魅力的なポップアピールを持ち、ギター主導のさびが効いた超ダンス向きでパーティーにもってこいの一曲だ。この曲は昨年の10月にリリースされて以来iTunesのミュージック・ビデオチャートで第2位にまで上りつめ、YouTubeではすでに100万回以上の視聴を記録している。
「僕らは自分たちのしたいことがわかっていたんだ―それは、ソウルの効いた派手なポップソングだよ」バンドのサウンドとバイブに対するビジョンについて、ジェイクはこう語る。「僕らはみんなR&Bの大ファンなんだ。オールディーズからアッシャーまでね。R&Bが僕らの共通点だ。それと全員が歌うということ。だからどの曲もハーモニーがなくてはいけない。それにみんなマルーン5やブルーノ・マーズのようなポップスも好きだから、彼らにも刺激を受けたよ。」
リクストンが結成されたのはレコード会社との契約のわずか1年半前だが、4人ともバンド経験は長い。グループの原点となったのは、ジェイクが16歳の時に下した決断だ。音楽制作に人生を捧げるという野望を追い求めるため、学校を退学したのだ。ジェイクはダニーとチームを組み(ダニーも最近同じ理由から大学を中退した)、二人はマンチェスター近辺のパブでカバー曲を演奏しながら、空いた時間には共に曲作りに励んだ。生計をたてるためにダニーの両親の家の庭にあるトレーラーハウスに暮らし、楽曲制作の腕を磨いていったという。
3年間の作曲活動とライブ活動を経て、ジェイクとダニーはエセックス生まれのチャーリーと出会い、すぐさまリードギタリストとして採用する。チャーリーはリオというポップ・パンクバンドを離れ、ジェイクとダニーの作るポップとR&B色の強い楽曲と演奏にエッジの効いた新たなエネルギーを吹き込んだ。3人は共同制作をしながら一年を過ごしたあと、ジェイクの当時のガールフレンドの紹介で知り合ったルイをドラマーとして誘った。システム・オブ・ア・ダウンの『Chop Suey』のビデオを見て圧倒されドラムを始めたというルイは、それまでの7年間様々なバンドでプレイをしながらドラムのスキルを磨いていた。
リクストンのメンバーが揃うとすぐに、『Speakerphone』を書き上げた。ハーモニーを駆使した、酔って(元彼女に)電話をしてしまうというほろ苦い一曲は、彼らのサウンドの熟練を証明している。
自作曲を書き成長を続ける一方、バンドはR.ケリーやシスコ、アッシャーといったアーティストのカバー曲をYouTubeにアップし、彼らの鳥肌もののハーモニーを世界に紹介し続けた。しかしスクーター・ブラウンの目に留まったビデオは、おふざけモードの『Have Yourself A Merry Little Christmas』だった。小人の帽子をかぶり、バーバーショップ・カルテット風にクリスマスソングを歌うビデオを見てブラウンはバンドに会うためロンドンに飛び、24時間以内には連絡を取って来たという。リクストンの作曲技術に驚かされたブラウンは、ベニー・ブランコに引き合わせることを決意する。(ブランコはマルーン5の『Moves Like Jagger』やケイティー・ペリーの『Teenage Dream』などのメガヒット曲を手がけたことで知られる)数日後、リクストンはブランコからスカイプ電話を受ける。ブランコはバンドのプロデュースを引き受けただけでなく、電話が終わる頃には数曲と言わずデビューアルバム全体のプロデュースをしたいと申し出てきたのだ。このアルバムはブランコが総プロデュースを務める初のフルアルバムとなる。
去年の夏ニューヨークでブランコとアルバム制作に取りかかったリクストンは、プログラムされたビートではなく生のドラムを使うというビジョンにこだわり、伝わりやすいメロディと美しいハーモニーという彼らの生まれ持った才能を各曲の最重要事項として置くことにした。その力強さとリクストンのソングライター兼ミュージシャンとしての無限の才能が融合し、デビューアルバムはポップスの完成形ともいえる『Make Out』からアカペラの伝統的ソウル『Let The Road』、壮大なピアノバラード『Whole』そして情熱的な名曲『Me And My Broken Heart』までバラエティーに富んでいる。
一方、グラミー賞にノミネート歴のあるソングライター、エド・シーランがリクストンのために書いた『Leave Me Lonely』は胸を打つ別れの曲だ。耳に残るメロディが控えめに始まり、次第に圧倒的な光り輝く名曲へと展開していく。アルバムはブランコと彼のチームとの共作も数曲入っている。アコースティックギターによる伴奏でハーモニーたっぷりの『Appreciated』、ファルセットの高い声音で歌われるディスコ・ポップ『We All Want The Same Thing』など、こちらも傑作ぞろいだ。
デビューアルバムを制作する最中にも、リクストンはライブでもその力を証明してきた。ブルックリンのバークレイズ・センターでは、ジャスティン・ビーバーのオープニングアクトとして1万9,000人の観客を前にパフォーマンスを披露した。しかも出演を告げられたのは本番の24時間前だったという。
「あれは異常な体験だったね」とダニーは言う。「ステージから両親が見えるような状況に慣れていた僕たちが、突然2万人の叫んでいる女の子たちを前に登場したんだ。しかも契約してから7カ月もライブからは遠ざかっていたんだよ。久々の上に、前日の夜にリハーサルを一回しただけで本番に臨んだライブだったよ。」
リクストンは『Make Out』のビデオリリースによって全米そして世界中でファンを魅了し続けている。メジャーなポップスターのパロディが満載の、鋭くもかわいらしいこのビデオでは、ジェイクがマイリー・サイラス風に裸で鉄球ブランコにまたがり、リアーナを意識したダニーはバスルームで生のタマネギに涙を流す。ふんどしルックのルイはケイティー・ペリーの真似にベストをつくし、チャーリーは風になびくゴミ袋でレディ・ガガばりのファッションを再現している。
ロサンゼルスでアリアナ・グランデのオープニングアクトを務めたのに加えて、彼らは思いがけない場所での「ゲリラライブ」を始めた。「街に出て、僕らのオリジナル曲とカバー曲を、その場にふいに現れた人たちの前で演奏するんだ」と説明するルイ。「僕は箱を叩いて、みんなはアコースティックを弾いて、ハーモニーを奏でるんだよ。初めてやったのはニューヨークだった。建物の3階の、非常階段の上からパフォーマンスをしたんだ。誰も来ないかもしれないと思ったけど、60人の若者が来てくれて、最終的には大盛り上がりになった。道が詰まって、警察か介入する騒ぎになっちゃったんだ」
人々の反応にリクストンは驚いていると言うが、彼らの心からのサウンドを聴けば、彼らが2013年の始めからここまで上り詰めたことも、不思議ではない。これからもファンを増やし続けながら、今年リクストンは間違いなく、さらなる大きな熱狂を巻き起こすことだろう。