来日ツアーを控えるリナ・サワヤマ、ロンドン公演のライヴ・レポートと最新ライヴ写真が到着
ロンドンを拠点に世界的に活躍する新潟県出身のシンガー・ソングライター、リナ・サワヤマによる約2年半ぶりとなるセカンド・アルバム『ホールド・ザ・ガール(Hold The Girl)』が全英アルバム・チャートで初登場3位を獲得し、日本人アーティストとして歴代最高位を記録。そんな最新アルバム『ホールド・ザ・ガール』を携えて敢行中の自身最大規模のワールド・ツアー「Hold The Girl Tour」のロンドン・O2 Academy Brixtonで行われた公演のライヴ・レポート、そしてライヴ写真が到着した。
ソールド・アウトが続出する本ツアーのジャパンツアーは2023年1月に決定しており、その完成度の高いパフォーマンスへの期待が一層高まるレポートとなっている。
【リナ・サワヤマ:ロンドン公演ライヴ・レポート】
2022年10月26日(水)*現地時間 @O2 Academy Brixton London
10月26日午後7時、ロンドンの伝説的ベニュー、南ロンドンのブリクストン・アカデミー周辺には長蛇の列ができていた。この4921人のキャパシティを誇る会場をソールド・アウトさせた張本人がリナ・サワヤマだ。新型コロナウィルスによって英国で実施されたロックダウン期に製作された新作『Hold the Girl』を引っ提げたツアーのロンドン公演。彼女が育ったホームタウンでの堂々たる凱旋ライヴである。
サワヤマTシャツはもちろんのこと、彼女のミュージック・ビデオでのコスチュームをまとったファンたちの姿。国際都市ロンドンで、多様な人種やジェンダーが集まるライヴは決して珍しくはないが、この日のアカデミーはいつも以上に、10代後半から20代を中心に若い煌びやかな力で溢れていた。
今回、サワヤマは二組のアーティストと共にUKツアーに乗り出している。この日のトップバッターである、クイア文化のライターやノン・バイナリーのドラァグクイーンとしても知られるシンガーのトム・ラスムッセンは、エネルギーに満ち溢れたダンスビート上でポップに歌い、会場の空気を熱くさせる。
そこに続くスコットランドのソウル・バンド、ジョセフは、甘くメロウかつダンサブルなステージを披露。ジャンルレスに拡張していくサワヤマの音楽性と呼応するようなアクトたちと共に、本編への期待がどんどんと高まっていった。
午後9時15分、はち切れんばかりの会場の客電が落ち、強烈な電子音がスピーカーから放たれる。観客の「Rina! Rina!」コールとスモークが立ち込める中、ふたりのダンサーを引き連れ、ブルーのデニムのセットアップに身を包んだサワヤマがステージに現れた。
『Hole the Girl』の冒頭曲“Minor Feeling” を、彼女は静かに、エレガントに歌い上げる。続くアルバム表題曲では、力強く歌い上げる彼女と呼応するように、オーディエンスたちはコーラスを歌い返す。
前作に比べ透明感のあるバンドサウンドが特徴的な新譜を中心にセットリストは組まれ、ギタリスト/キーボーディストとドラマーは、折衷的なサワヤマ・サウンドを堅実にサポート。イントロに続く“Catch Me In The Air”と“Hurricane”にそれが顕著で、ライヴで成長する楽曲のポテンシャルを見せつける。
ステージは4-5曲ごとに区切られ、サワヤマは自身の表現アイデンティティを切り替えるように新たなコスチュームで再登場する。
90年代風の赤いタイトな上下に身を包んだ二部。ステージ中央で小さくなるサワヤマが「Shut the fuck up」とつぶやくと、ヘヴィなギターリフとともに“STFU!”が始まった。日本人としてイギリスを生きる彼女自身が感じる人種的ステレオタイプへの怒りが表出した楽曲で、真っ赤にライティングされたステージで彼女は獅子舞のように頭を振り、歌詞を叩きつける。
そこに続く新譜からの“Frankenstein”では、緑の照明のなか、マイケル・ジャクソンのようなゾンビダンスを披露。ミュージカルのような色彩や演出が作る独自の世界観が溢れ出ていた。
次のステージでは、サワヤマは自身の人生体験について観客に語りかける。「さっきの曲の終わりはかなり強烈だったよね。ロンドンのみんな、ほかに強烈なことってどんなことがあると思う? セラピーだよね」と彼女は云う。
『Hold the Girl』は10年にも及ぶ自身のカウンセリング経験を通し生まれた作品で、その過程でサワヤマは10代の経験と向き合うことになったという。自身のインナーチャイルド(子ども時代に培った習慣や思考)の再教育が必要だったと、彼女は語る。「しかるべき愛や謝罪に恵まれなかった、あなたのために歌う」。そう言い残し、アコースティックギターをバックに始まったバラード“Send My Love to John”は、感動的な今夜のハイライトのひとつになった。
そこから流れは一転し、チャーリーXCXとのコラボレーション曲“Beg For You”ではUKガラージの2ステップ・ビートが鳴り響き、会場はライヴ会場からクラブのダンスフロアへと様変わりする。その高揚感が代表曲“Comme des Garçons (Like The Boys)”と“XS”へと傾れ込み、会場は揺れに揺れ、本編は一旦幕を閉じた。
その後のアンコールに選ばれたのは、アルバムのリードシングルである“This Hell”だ。同曲ビデオでもお馴染みのカウボーイハットを被り、疲れなど微塵も見せないサワヤマ。フロアの右と左にオーディエンスたちを分けてお互いを向き合わせ、それぞれに異なる歌詞のラインを歌わせるコール&レスポンスのパートでは、会場は今夜で一番の一体感に包まれていた。最後まで実に堂々たる、約2時間のセットだった。
このロンドン公演は、名実ともに世界のトップ・アーティストになったリナ・サワヤマに相応しい夜になった。マイクと一台のラップトップではじまった彼女の旅は、多くのミュージシャンとの共演や、新たなサウンドを通し、ますますユニークでエキサイティングなものになっているのは間違いない。
また、2022年のサマーソニックでも話題になった、LGBTQの当事者としての意見や、この日のように自身の抱える葛藤をオープンに打ち明ける彼女の姿は、リスナーの側に常に寄り添っている。エンターテイメント性に富んだカッティングエッジな自己表現とともに、人々の共感を生み続けるサワヤマの活動を、今後も世界が放っておくことは決してないだろう。
(文:髙橋勇人)
最新アルバム『ホールド・ザ・ガール』を引っ提げたジャパンツアーを2023年1月に行うことが決定している。東京・名古屋・大阪の3都市を巡るこのジャパンツアーは、リナ自身初の単独来日公演となる。
©Donny Johnson
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【来日公演情報】
2023年1月17日(火)名古屋:ダイアモンドホール
2023年1月18日(水)大阪:Zepp Osaka Bayside
2023年1月20日(金)東京:東京ガーデンシアター
企画・制作・招聘: Live Nation Japan・Creativeman Productions
協力: Universal Music Japan、FM802(大阪公演)
<公演リンク>
https://www.livenation.co.jp/artist-rina-sawayama-1159943
https://www.creativeman.co.jp/event/rina-sawayama/