12月2日、スイス、モントルーにクイーンのマウント・スタジオを再現した展示会「Queen The Studio Experience」がオープンした。1978年、7thアルバム『ジャズ』の制作中、初めてこのスタジオを訪れたクイーンは、レマン湖に面する美しく静かな街を気に入り、同スタジオを購入ことに。そして、ここから『ホット・スペース』『カインド・オブ・マジック』『イニュエンドウ』『メイド・イン・ヘヴン』など数々の名作を生み出した。また、病に侵されながらも「できるだけ多くの曲を残したい」と願ったフレディ・マーキュリーが亡くなる直前まで過ごした場所でもある。メンバーは、彼の体調がいいときいつでもレコーディングが始められるようスタジオ内で寝泊まりし待機していたという。ファンはそんな特別な場所へ足を踏み入れることができる。
展示会は、マウンテン・スタジオの跡地に建つモントルー・カジノ・バリエール内に開設。可能な限り忠実に再現したという、フレディが最後の曲をレコーディングしたコントロール・ルームはクイーン・ファンにとって新たな聖地となるだろう。この部屋では、実際に使用されたマイクや24トラック・テープ・マシーンが展示されているだけでなく、フレディが最後のヴォーカルを収録した場所に立つこともできる。また、展示会のため特別に、当時使われていたミキシング・コンソール(ニーヴ8048)と同じものが作られ、来場者はこれを操作しクイーンの曲を思うままにミックスすることができる。ヴォーカルだけを聴きたい、ギターだけ、もしくはドラムとベースのみの演奏を楽しみたいといったファンの夢がクイーンのスタジオで叶うのだ。
別室には、楽器や衣装、手書きの歌詞、世界各地でリリースされたアルバムなどのメモラビリアを展示。また、フレディの思い出やモントルーでの逸話を語ったメンバーやスタジオ関係者のインタビュー映像が流れるスクリーニング・ルームもあり、フレディが最後の日々を過ごした正にその場所で貴重な話を聞くことができる。2フロアあった設備すべてを再現したわけではなく、決して広いスペースとも言えないが、ただ観るだけに終わらない、タイトルどおり“体験”する展示会だ。日本語のパンフレットも用意されている。
その夜開かれたレセプションには、ロジャー・テイラーとブライアン・メイも出席。スタジオや展示会に対する想いを語った。ロジャーは「この美しいモントルーにはたくさんの思い出がある。音楽が大半、酒が少々、そのほとんどが素晴らしいものだ。さっき展示会を覗いてみて、すごく光栄に思ったよ。みんなにも楽しんでもらいたい」と、ブライアンは「よく、なんでモントルーなんだって訊かれるけど、それはここが僕らにとって特別な場所だからだよ。すごくインスピレーションが湧いた。とくにフレディや彼の最後の日々にとっては…。それに、ここでは邪魔されることなく、僕らだけの時間を過ごすことができた」「(プロデューサーの)デイヴ・リチャーズや(エンジニアの)ジャスティン・シャーリー・スミスがいたのも大きいね。素晴らしいチームだった。家族みたいだったよ。だから、あの部屋で僕らと同じ体験をすることで、みんなにも家族の一員になったような気分を味わってもらいたい」と話した。
展示会は、フレディ・マーキュリーフェニックス・トラストが主催。入場料は無料だが、フレディが望んだエイズ支援活動への寄付を募っている。
★「Queen The Studio Experience」
http://www.mercuryphoenixtrust.com/studioexperience/
文:Ako Suzuki