教えてポール!『アメーバ・ギグ』
7月17日、ポール・マッカートニーの公式サイト”PaulMcCartney.com”の「教えてポール!」で再発をした4枚のライヴ盤の中から最終回となる『アメーバギグ』について、ポール自身が質問に答えた内容を翻訳して紹介します!
▼PaulMcCartney.com掲載ページ(英文)
https://www.paulmccartney.com/news-blogs/news/you-gave-me-the-answer-amoeba-gig
定期的にPaul McCartney.comにお越しいただいている皆さんは、我々がこの1ヶ月ほど、リイシューされる4枚のライヴ・アルバムについてポールに話を聞いていることをご存知でしょう。もし、『ウイングス・オーヴァー・アメリカ』でポールがビートルズの曲をセットリストに入れるようになったいきさつについて知りたければ、 こちら をクリックしてください! そして『バック・イン・ザ・U.S.S.R』をどうしてロシアのファンのためにリリースしたのか、そのいきさつは こちら ! また『ポール・イズ・ライヴ』にまつわる疑惑については こちら でポールが語っています。
リイシューされる4枚のライヴ・アルバムについてポールに話を聞くのは今回が4回目となり、そしてこの『アメーバ・ギグ』が最終回です。
ハリウッドのアメーバ・ミュージック・ストアを占拠したときは、どんな感じだったんでしょうか? きっととてもエキサイティングなショーだったんでしょうね!
確か元々はマネージャーのスコットのアイデアじゃないかな。“君がロサンゼルスで演奏する日の晩、ロサンゼルスに行く予定の日は、バンドのポリスがドジャース・スタジアムかどこかで演奏する予定と重なっている”と彼が言ったんだ。そして“何か奇抜なことをしない限りは目立たないかも”とも言われた。だから僕は“それはいいね、まさに僕にうってつけだよ!”と答えた。レコード店でやることを提案したのが彼だったかどうかは覚えていないけれど、そういう話の中でロサンゼルスのサンセット大通りにあるあの有名なレコード店でやろうというアイデアが持ち上がった。あのレコード店のことは、前にレコードを買いに行ったことがあったから知っていたし、あの店が、“ここに来れば揃わないものはない”と品揃えに誇りを持っていることも知っていた。LPレコードもたくさん置いてあったし。そういうこともあり、また雰囲気もとてもいいところだから、僕が“あそこでできないかな?”と言ったら、“ライヴは可能ですよ! ショップでのライヴは主に新人が、お披露目のような形でやる場合が多いです。ステージもありますが、とても小さいですよ!”という返事だった。そういうのが好きだから乗り気になった。今までも時々、ルーツに戻って小さな会場で演奏していたし。最高に楽しかった! ステージに立つと目の前にレコードがずらっと目に入る。まさにレコード店だよ! 最初に思ったのは、皆が万引きしちゃうんじゃないかってことだった! だから“万引きしないでくれ!”と呼びかけたんだ。
そのことはアルバムのジャケットにも書かれていましたね!
最初にそう思ったからね。言わずにはいられなかった!
このライヴをやったのはリリースしたばかりの『追憶の彼方に〜メモリー・オールモスト・フル』の宣伝のためだったんですよね?
うん、宣伝活動と個人の楽しみを合体させるときもある。というか、僕はなるべくそうしたいと思っているんだ。ただやみくもに何千人もの人たちと握手するというのは、僕にとっては楽しいイベントではない。でも、あの時のように、ああいうところにふらっと現れて、ちょっとした話題を提供するのは楽しい。最近ではギリギリに発表しても大丈夫だけど、あのイベントは、確か2日前に発表した。“彼がライヴをやるんだって…!”とか、“え? どこで演奏するって…?!”というような噂が世界中を駆け巡って、みんな興奮していた。まあ行かれない人にとっては面白くないことかもしれないけれど、そういうのは根性が曲がっている人の考え方だね! あのライヴは本当に楽しかった。そしてその様子はレコードでも聴ける。リンゴも現れた。彼とはしばらく会っていなかったから、来てくれたことが嬉しかったし、彼も楽しんでくれた。確かライヴの最後の方で彼が来てくれていることを言ったんだけど、彼は既に会場にいなかった!(笑)だから“リンゴは、混乱を避けて早めに会場を後にしました!”と言い訳したよ!
そして今回の『アメーバ・ギグ』アルバムでは、ライヴの完全版をリリースしたんですね。そしてLPでは、「カミング・アップ」のサウンドチェックの模様も収録されているとか?
そうなんだよ。知らない人が多いかもしれないけれど、僕は、支払った金額に見合う価値のものを提供することにこだわりがある。お買い得感のあるものにするというのはジョージ・マーティンが僕たちにいつも言っていたことなんだ。特に最初にアビイ・ロード・スタジオでレコーディングを行なった頃からそう言っていたから、その考えが心に刺さっているんだ。最近、レコードを作る立場の人間ではなく、買う側の立場で思い出したことがあった。人は一度でも“騙された”と感じたら、そのレコード会社やアーティストが嫌いになったりする。僕は昔、リトル・リチャードのレコードを買ったことがある。“わあ、リトル・リチャードの新譜だ!”と思って購入して、家に帰ってよく見たら実は、バック・ラム・オーケストラのアルバムだった! その中の1曲でリトル・リチャードがゲスト出演していた。でもそれ以外のアルバム全曲は、全然聞きたいものではなかった。興味があったのはその1曲だけだった。こんな些細なことでも僕は“ああ、騙された”という印象を持った。そういえば初期の頃、フィル・スペクターも僕たちがいい曲を2曲もシングルにするなんて曲を無駄使いしていると言っていた。彼は“2曲じゃなくて1曲だけにしておくべきだ”と言っていた。それに対して僕は“いや、お買い得感を出さないと。シングルはA面とB面と別の曲にするのがいいんだ!”と反対した。そしたら彼は“いや、違う! B面にはA面のバッキング・トラックを収録すればいいのさ”と。僕たちは、そんなのはいんちきだと思った。僕は常に買ってくれる人たちのために、今まで彼らが聞いたことのない何かをおまけでつけてあげたいと思っている。それは僕にとっても嬉しいことだから。僕にしたって、昔のもので、もう何年も聞いていない歌がたくさんある。そして、今回のリマスターのときに『ポール・イズ・ライヴ』と『アメーバ・ギグ』のセッションのサウンドチェックの音源をふたつほど聞き直してみた。それらを聞き返すのはショーの日以来初めてだったんだ。
バンドと即興演奏をしているときの音源ですか?
そう、即興で演奏していたものが、突然レコードに収録された。僕にとっても、気持ちがシャキッとするよ!
いまでもサウンドチェックで即興演奏をしているんですか?
うん、やっている!実は音源は何百万ってあるんだ! 幸運なことにうちのスタッフのジェイミーが、すべて記録してくれている。実際に音源は1000を超えていると先日、彼が言っていた! 中にはすごくいいものもあって、時々その中からピックアップして、作業しているよ。『エジプト・ステーション』のときにも、アルバムに入れようと思ってひとつ選んで作業を始めたんだけど、仕上げが間に合わなかった。具体的には、サウンドチェックのジャムの中からリフを選んで、そのリフを中心に曲を構成する作業をするんだ。というのは、演奏中は“ああ、これはいいリフだな”と思っても、即興でやっているから、一瞬で消えていっちゃうからね。
それが音楽の美学でもありますよね。でも、素晴らしいものが浮かんでも、その一瞬で捉えないと消えてしまうというのは悲しくもあります。
幸運なことに、僕たちの場合はそのような一瞬が録音で残っている。最近では動くものはなんでも瞬時に捉えられる世の中だからね。だから音響卓で必ず録音しているし、スタッフは“これはよかった!”というようなメモをつけて音源を整理してくれている。そして時には警備のスタッフのマイクが、“ねえボス、この間やっていた曲は即興なんですか?”などと聞いてくる。僕が“そうだよ!”って答えると“わあ!”とびっくりする。というのは、すごくうまくいったジャムもあって、聞く人が既成の曲かと思うレベルのものもあるから。うまくいったときはいい気分だよ。お宝を発見した気分だ! 僕たちが集めたこれらの音源を集めていつかアルバムか何かを出したいと思っている。世界中の色々な場所で録音されたものでもあるしね!
ポールはつい先日、ロサンゼルスのドジャー・スタジアムで、〈Freshen Up Tour〉の最終日をソールド・アウトで無事に終了し、4枚のライヴ・アルバムもリリースして、まさにライヴ三昧の夏となりました! ポールのライヴをご覧になった方はどの公演にいらしたのかを教えてください。あなたの街でポールが即興で作った新曲が、いつかあなたのお気に入りの曲になるかもしれませんよ!
次回の“教えてポール”では、ポールがリンダ・マッカートニーの『ワイド・プレイリー』について語ります。このアルバムはグラスゴーで開幕するリンダの回顧展の開催にちなんで、この夏、リイシューされる予定です。
『ウイングス・オーヴァー・アメリカ』、『バック・イン・ザ・U.S.S.R.』、『ポール・イズ・ライヴ〜ニュー・ワールド・ツアー・ライヴ!!』、『アメーバ・ギグ』