商品紹介
食わず嫌いという言葉がある。実際に体験や経験をしないで頭から嫌だと思ってしまう事があるが、この話は正に食わず嫌いの話である。何を嫌うか?“女性”である。女性と接する事を嫌う純粋な若旦那を心配した父親が近所の遊び人の二人に“女遊び”を教えてやって欲しいと頼み込む。今なら、さしずめいろいろなマニュアル本が出ていて“初めてのデートはここ”とか“最初のキッスはこうやれ”とかこと細かく書いてあるのを読めばいいが、当時は町内のいわゆる“その道の達人”というのがいて、いろいろな遊び事等を伝授してくれていたのである。文楽という人は上品な色気ときっちりした芸が売りもので特にこの“明烏”は得意中の得意なだし物。気が弱く女の扱いがわからない若旦那、時次郎の描写が聞き所であり、また遊び人の二人のチャラチャラした会話も文楽の味がよく出ている。自由奔放な志ん生に比べて、磨きぬいて何度聞いても寸分違わぬ完成度の高い芸を目指した文楽。この生真面目なところをこの話の主人公の時次郎と重ねあわせて聞くのも面白い。その真面目さを表すエピソードのひとつで有名なのは文楽最後の高座である。ネタの途中で登場人物の名前を忘れてしまい“また勉強して参ります”と言って高座をおり、そのまま二度と高座にあがることがなかった。また落語の名人になると住んでいる住所でその師匠の事を呼んでいて、文楽は上野の“黒門町”という所に住んでいたので今でも“黒門町の師匠”と言えばこの人の事である。 (収録時間:24’00”)
曲目
1
明烏