商品紹介
感性、理性、そして美
鐡は2017年第86回日本音楽コンクール本選はサン=サーンスのピアノ協奏曲第2番を弾き第2位を得たが、第3予選で弾いたのがシューマンのピアノソナタ第3番で、演奏の深さ、ロマン性の豊かさで審査員たちを驚かせたという。さらに驚くべきは、2017年と2018年に柴田南雄賞本賞を以下の評論で2年連続受賞していることだ!
『ソナタ形式』からの解放」(2017年)、
『演奏の復権:「分析」から音楽を取り戻す』(2018年)
このCDでも鐡が自らライナーノーツを執筆しており、以下はそこからの一部の引用である。
シューマンのピアノソナタ第3番は、1835年に恋仲になったシューマンとクララは恋仲になったが、父は二人の交際に猛反対し、二人の仲を裂こうとした。この苦難の時期に、ロベルトはとめどなく溢れるクララへの愛をそのまま音にした5楽章からなるピアノソナタを作曲し、さらに大幅な改訂がなされ、4楽章構成の『グランドソナタ第3番』として1853年に出版された。
付点のリズムとC-B-As-G-F(ドシラソファ)の5度下降の音型を特徴とする「クララ・ヴィークの主題による変奏曲風」の楽章が中心に据えられ、クララへの狂おしいまでの恋慕に満ちている。
「左手のためのシャコンヌ」は、ブラームスが他のショパン、ウェーバとバッハの作品の編曲集である『5つの練習曲』の中の第5番としてシャコンヌを編曲したものである。敬愛する師シューマンの妻クララへ捧げられ、この頃、偶然にも右手を痛めていたクララは大変喜んだ。
左手だけで奏する難しさによって、より指先の感覚が鋭敏になる。一音一音に集中すると、耳の中で無限に和声が広がりだす。現実の音として聴こえないからこそ、想像の幻の音が、無上の美しさで訪れる。原曲のヴァイオリンの音域ではなく、左手の低音域に編曲されたこともあって、倍音が豊かに響く。
鐡の作曲家や作品に対する鋭い洞察力、分析力が、情感豊なこのCDの演奏にも溢れている。
内容
鐵 百合奈 Yurina Tetsu
1992年香川県生まれ。第86回日本音楽コンクール第2位、岩谷賞(聴衆賞)、三宅賞。第4回高松国際ピアノコンクール審議員特別賞。日本クラシック音楽コンクール高校の部グランプリ。大阪国際/ローゼンストック国際ピアノコンクール、各第1位。皇居内桃華楽堂において御前演奏を行う。これまでに神奈川フィルハーモニー管弦楽団、芸大フィルハーモニア、東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団、高松交響楽団と共演。2017年度香川県文化芸術新人賞受賞。論文「『ソナタ形式』からの解放」で第4回柴田南雄音楽評論賞(本賞)を受賞、翌年『演奏の復権:「分析」から音楽を取り戻す』で第5回同本賞を連続受賞。ヤマハ音楽振興会、よんでん文化振興財団、岩谷時子Foundation for Youth、宗次エンジェル基金、各奨学生。東京藝術大学音楽学部附属音楽高等学校を経て、同大学をアカンサス音楽賞、藝大クラヴィーア賞、同声会賞を得て卒業。同大学院修士課程を大学院アカンサス音楽賞、藝大クラヴィーア賞を得て修了。現在、同博士後期課程に在籍。
曲目
[C D]
シューマン:ピアノソナタ 第3番 へ短調 作品14「大ソナタ」(1853年版)
1
第1楽章: Allegro
2
第2楽章: Scherzo, Molto commodo
3
第3楽章: Quasi Variazoni, Andantino de Clara Wieck
4
第4楽章: Prestissimo possibile
J.S.バッハ=ブラームス:
5
左手のためのシャコンヌ Anh.Ia/1-5