マーヴィン・ゲイの名曲「WHAT’S GOING ON」の2019年制作のミュージック・ビデオが公開!
マーヴィン・ゲイの「What’s Going On」は、50年近く前に発表された曲だが、現代社会でさまざまな課題に直面している私たちの心に今も響いてくる。
この曲は、聴く者に行動を起こすように呼びかけている ―― そのメッセージは、サヴァナ・リーフが監督した新しいビデオでも痛切なかたちで描き出されている。モータウン・レコードは、設立60周年記念事業の一環としてこのビデオを制作した。ビデオの中でリーフは、アメリカの社会的弱者の生活に悲惨な影響を及ぼしている未解決の問題をこの名曲と結びつけながら取り上げている。
この「What’s Going On」は、ユニバーサル・ミュージック・グループの「Never Made」プロジェクトから生まれた最初のビデオ作品だ。
「Never Made」プロジェクトは、今までビデオ・クリップが作られたことのない曲に魅力的な映像コンテンツを付け加えるというシリーズ企画である。連邦議会黒人議員幹部会 2019年度両院協議会(CBC ALC)では本日パネル・ディスカッション「What’s Going On(何が起きているのか)」から「Let’s Get Going(さあ始めよう)」へ ―― アートを通した社会運動」が行われ、そのあとで「What’s Going On」のビデオが上映された。それに続き、オンライン雑誌『The Root』 https://www.theroot.com/ がこのビデオをインターネット上で初公開した。
このビデオはミシガン州のデトロイトとフリントで4日間に渡って撮影され、画面にはたくさんの地元住民が登場している。これまでサヴァナ・リーフは、数々の賞を受賞した短編映画『The Ayes Have It』、あるいはコモンやゲイリー・クラーク・ジュニアのミュージック・ビデオを監督してきた。リーフは今回の作品について次のように語る。「私たちが求めていたのは、モータウンの歴史やこの曲と響き合うような撮影場所、さらにはこのミュージック・ビデオで取り上げる社会問題・政治問題にも関連がある場所でした。私たちにとって重要だったのは、ビデオのストーリーと響き合う現実の人たちを見つけること。俳優を起用したくはありませんでした。」
アフリカ系住民が半数以上を占めるフリントでは、水道水が鉛で汚染され、住民に健康被害が出ていることが発覚。水道水が飲めない状態が数年に渡って続いている。今回のビデオには、フリント市長カレン・ウィーヴァーに加えて、汚染の解消を求める住民運動の重要な担い手たちも登場する。そのひとり、アドリアーナ・ホークは、この問題が深刻化した時期に『TIME』誌の表紙に幼い息子と一緒に写し出されていた。また画面には、この地域に縁の深いエンジニアのスティーヴ・スミスも登場する。スミスはかつてモータウンで数々の作品を手がけ、「What’s Going On」のレコーディングにもエンジニアのひとりとして参加していた。さらに今回のビデオは、銃による暴力、アメリカの欠陥だらけの医療保険、警官による発砲事件などの問題も取り上げている。
リーフが指摘する。「これは、人類史上きわめて重要な瞬間のために作られた歴史的な作品です。そして何よりすばらしいのは、この歌に込められたメッセージが時を超えた普遍性を備えているという点です。これは人間の感情、人間関係、そして団結を歌った作品なのです。今回、私たちが作り上げたミュージック・ビデオが、マーヴィン・ゲイが1971年に残した問いかけを、これからも人々が発し続けるきっかけになったなら、私にとってそれ以上に嬉しいことはありません。」
「What’s Going On」は、マーヴィン・ゲイと、モータウンのソングライター、アル・クリーヴランド、フォー・トップスのメンバーだったリナルド・ベンソンの3人による共作である。1965年のワッツ暴動、さらには「血の木曜日」(1969年にカリフォルニア州バークレーのピープルズ・パークで住民の抗議行動に州兵が発砲し、死傷者が出た事件。ベンソンはこの事件を現場で目撃していた)といった出来事がきっかけとなり、3人は当時の社会状況に疑問を覚え、これを書き上げたのだった。そして、ゲイがプロデュースを、デヴィッド・ヴァン・ドゥ・ピッドがアレンジを担ったシングル「What’s Going On」は1971年1月20日にモータウンのタムラ・レーベルからリリースされ、ホット・ソウル・シングル・チャート (現在のホットR&B/ヒップ・ホップ・ソングズ) で1位を獲得(ゲイにとっては同チャートにおける7曲目のNo.1獲得曲だった)。ポップ・チャートでも、成功を収め、ほどなく最高位2位をマークしている。
「What’s Going On」は、ローリング・ストーン誌が認定した”The 500 Greatest Songs of All Time (史上最高の500曲)”、”ロックの殿堂”が認定した”500 Songs that Shaped Rock and Roll (ロックンロールを形づくった500曲)”の一つにも選ばれてきた。また発表から数10年のあいだに、この曲はさまざまなチャリティ企画でカヴァーされてきた。”Live Aid Armenia”、”Music Relief ’94″、”Artists Against AIDS Worldwide”、そしてアメリカ赤十字社の”9/11基金”はその一例である。
CBC ALCでのパネル・ディスカッションでは、ブレンダ・ローレンス下院議員(民主党、ミシガン州)がホストを務めた。また司会はパナマ・ジャクソン・シニア(雑誌”The Root”の編集者)が担当。パネリストは、エチオピア・ハブテマリアム(モータウン・レコード社長)、サヴァナ・リーフ(ビデオ監督)、カレン・ウィーヴァー(ミシガン州フリント市長)、ベニー・ナポレオン(ミシガン州ウェイン郡保安官)、BJ・ザ・シカゴ・キッド(モータウン所属アーティスト)という顔ぶれだった。参加者は、アートと社会的な直接行動の関係、アートとエンタテインメントの影響力や文化的なインパクトといったテーマについて議論を交わした。
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https://www.udiscovermusic.jp/news/marvin-gaye-whats-going-on-video