BIOGRAPHY
MONA
ひたむきな情熱。信念。我を忘れるということ。救済による恍惚、恍惚による救済……。 ロックンロールと信仰の間には、微妙な一線がある。そして、強烈かつ鋭利で汗びっしょりなギターのせめぎ合うMonaが生み出す陶酔感もまた、それと紙一重だ。 米ナッシュヴィルを拠点とするこの4人組 - もしくは家族、あるいは仲間、はたまた兄弟集団とでも呼ぼうか - は、若くカリスマ性のある、パンクの伝道師だ。テネシー州ナッシュヴィルの地下室に身を潜め、曲を書き、2011年のベスト・デビュー・アルバムとなるべき作品を完成させていく中で、彼らが味わったスリル。それがいかなるものなのか、彼らは世の中に証明して見せるはず。彼らは、この世のものとも思われないほど美しい天上の花火を魂に抱いた、理屈抜きのロック賛歌を歌い上げることだろう。彼らは出会う人々みんなを、改宗させたいのだ。 ちなみにこれは、昔からよく音楽業界で用いられている、神と悪魔がどうこうというギミックを弄した誇張ではない。実際、Monaのメンバーのうち4分の3は、音楽を - つまり楽器の弾き方や演奏の仕方、そして大衆の扱い方を - 教会で学んだのである。フロントマン兼ギタリストのニック・ブラウン(Nick Brown)とドラマーのヴィンス・ガード(Vince Gard)は、ペンテコステ派の教団で活動し、ベースのザック・リンジー(Zack Lindsey)は、南部バプティスト派の教団に所属していた。3人とも、非宗教的な音楽が顰蹙を買うような環境で育ち、そこではオーディエンスを ー つまり信者達を ー 夢中にさせることが何よりも最優先とされていた。ギタリストのジョーダン・ヤング(Jordan Young)を加えた4人全員にとっては、偽りのない情熱と本物の勇気が詰まった、宗教と関係のない刺激的な音楽こそが、Monaとして目指しているものなのである。 Monaには今も信条があるが、「でも僕らが持ってるのは、間違いなく、僕ら独自の信念だよ。教会にまつわるたくさんのくだらないことから、僕らは逃れなくちゃならなかったんだ」と語るニック。ステージ上での圧倒的なカリスマ性と同様に、オフステージでも彼は、歯に衣を着せずに力強く物を言う。「僕らはみんな家族思いなんだ。4人ともお母さん子でね。兄弟とは仲良くしようとしてるし、いい息子であろうとしてる。バンドでも同じことが言えるんだよ。つまり、僕らは”ファミリー”だってこと。でも、もちろんバンドにおいては、僕らはもっとマフィア的な意味での”ファミリー”だけどね。ワル仲間の一味でもあるんだ。ハグし合って、頬にキスし合うのさ ― だけど、もしナメたマネをする奴がいて、僕らを怒らせたりしたら、手荒いお返しをしてやるよ」と付け加えるニック。彼は前のリード・ギタリストをクビにした際、「そいつの顔面にパンチを喰らわせんだ。僕の拳の骨が折れたよ」とのこと。これほど熱いバンド内の友愛をもってすれば、「Monaは飲み屋でのケンカで負けたことは一度もない」というのも、少しも不思議ではないだろう。 Monaは、54年の時を経て再起動を果たした、サン・スタジオのミリオン・ダラー・カルテット(エルヴィス・プレスリー、カール・パーキンス、ジェリー・リー・ルイス、ジョニー・キャッシュ)である。彼らは、ニック言うところの「米国の黄金時代、つまりジェームス・ディーンやマリリン・モンローみたいなやつ」が好きだという意味において、ロックのリバイバリスト(復興論者)なのだ。ニックによれば、「Listen To Your Love」の曲作りには、そういった過去の象徴的スター研究と理想主義とが反映されており、だからこそこの曲が彼らのファースト・シングルとなったとのことだ。 「古き良きものを懐かしむ気持ちみたいなものを感じたんだ」と、「Listen To Your Love」について語るニック。7インチのみでリリースされた同シングルは、既に高額で取引されるレア盤と化している。「ロイ・オービソン風のメロディすらあるんだよね。でも同時に、そこにはパンクっぽい要素も少し入ってるんだ。このバンドが世に放つ初めての曲、つまり第一印象にふさわしいと思ったんだよ」。 ニックとヴィンスは、オハイオ州のデイトン市育ち。二人は教会の音楽団体を通じて知り合った。ニックによれば、「僕はドラマーを探し求めていて、ヴィンスは演奏を披露できる場を探し求めていた。初めはお互い人間的にウマが合ってたわけでもないし、友達として親しかったわけでもなかったんだよね。当初は音楽的な繋がりの方が強かった。友情が育っていったのは、もっと後のことだったんだ。でも、教会に通いながら育ち、ちょっと不満を抱えたりするような人間は、アグレッシヴに演奏できて、一緒にそれを楽しめる相手が欲しくなるものなんだよね。僕らは二人とも、ものすごく熱中してたよ。教会内でだって、めちゃくちゃ熱くなってた。ヴィンスはドラムを叩きのめしてたし、僕はよくピアノをぶっ壊してたものさ」。 司祭を音楽で”サポートする演者”として、礼拝の式の流れを追っていけるよう、彼らはインプロ(即興演奏)の仕方やジャムり方を学んでいった。 「それがある意味、今の僕らのロックンロール観に反映されてるんだよね。色んなたくさんのことが、スケジュール重視で行われてるのは分かってる。例えばラジオにしてもテレビにしても現在のマーケットにしても、バンドを一つの枠の中に当てはめたがるものさ。でも僕らは、時間に左右されないことを常に誇りに思ってきたんだ。とにかく成すがままに任せるってこと。曲を書く時ですら、僕らは曲作り用のセッションを予約したりはしないし、曲を書くための時間を予定に組み込んだりもしない。ただとにかく集まって、何が起きようと成り行きに任せてるんだ」。 ザック・リンジーは、ケンタッキー州の(酒類の販売が禁じられた)”乾いた群”に位置する、ボウリング・グリーンの出身だ。ニックとヴィンスが、宗教とは関係のない音楽を聴くことを禁じられていた(「でもうちの母親は、クリーデンス・クリアウォーター・リバイバルとかポリスとかを僕に聴かせてくれて、『父さんには内緒だよ』って言ってたんだよね……」とヴィンス談)のとは異なり、ベーシストのザックが通っていた教会では、非宗教的な音楽も許されていた。「僕は生まれた時からビートルズを聴いてたんだ」とザック。 デイトンでは音楽の選択肢が限られ、行き詰まってしまったため、ナッシュヴィルへと引っ越したヴィンスとニック。その理由は? ニックによると、「地元から車で5時間で行けたからだよ。ニューヨークまでは14時間、ロスまでは26時間かかるけどね。それに交通費も断然安かったから。僕らは貧乏キッズなのさ」。 アメリカが誇る音楽都市ナッシュヴィルへと拠点を移してすぐに、彼らは地元のライヴ・シーンで、思いがけずザックと出会った。そして今度はザックが、彼らをジョーダン・ヤングに紹介。ジョーダンは彼のケンタッキー時代の旧友で、農業の町ブリーディングの出身だ。激しいメンバー・チェンジを何度か繰り返した後 ―そこには、顔面を殴られた不運なギタリストとのケンカ別れ含まれているが ― ようやくMonaの現ラインナップは完成に至った。 「今の僕らは、一台の馬車を引く四頭の馬なんだ」とニック。彼は何年も前から、Monaの「構想」を練っていたという。中でも特にこのバンド名は、彼の祖母に由来するものだ。「このバンドに入りたがっていた奴は大勢いるよ。地元でこのバンドを応援してくれてる人達も大勢いる。でも、自分の役割を理解してる奴らと一緒にやれて、そしてその役割に満足してる限り、バンドって相性の問題なんだよな。恋愛関係と同じだよ。結婚と同じさ」。 ニックがMonaについて描いている徹底したヴィジョンには、あらゆることが包含されている。たとえば、主にモノクロでデザインされた彼らのMyspaceのページへの掲載用に、選び抜かれた画像アーカイヴ。また少数の曲だけを、しかも短期間のみ試聴可能にしていること(「芸術上の過食症に陥ってる人が、世の中には大勢いすぎるんだよ」と、ニックは強い調子で言う。「彼らは曲を食べては吐き、そして次へと向かっていく。だから僕らは人々に、少しずつちゃんと味わってもらうことにしたんだ」)。それから自身のレーベル『Zion Noiz』を設立したこと。そして異例にも、バンド側に有利な条件を揃えた契約を大手レコード会社と結んだことに至るまで、何もかもが彼の構想通りなのである。 2011年、Monaを目にする機会は激増するはずだ。英国では既に、2010年秋のシングル「Listen To Your Love」で話題沸騰。またロンドンで2度にわたって行なわれた、ブリック・レーンの『ラフ・トレード・イースト』やケンティッシュ・タウンの『フラワーポット』といった小さなハコでの熱狂的ライヴを通じて、彼らは注目を浴びている。 続いてリリースされた彼らのシングルは、アグレッシヴなまでにメロディックな「Trouble On The Way」だ。「この曲は、ほとんど説明が要らないね。地平線の上に音の兆しが現れて、その音量が段々大きくなっていくんだ。僕らは野心に溢れてるし、すごく大げさだったりもするけど、結局のところ僕らの目的は、自分達の思いを表現することであり、キャリアを築くことなんだよ。そしてこの先、死ぬまでずっと、これをやり続けていきたいってこと。壮大でドラマティックな主張をしていても、結局はそこなんだ」とニック。彼は笑みを浮かべながら、こう続ける。「僕らは、ガレージで騒音をかき鳴らして楽しんでるだけの、ただの4人の野郎達なのさ」。 その後は、完全な形で市販される初めてのシングルとして、「Teenager」のリリースを予定。ニックいわく「これは、愛とか憎しみとか、すごく人間くさい感情と向き合ってる、一人の愚かな人間でいるってことが凝縮された曲なんだ」。