BIOGRAPHY
レオニダス・カヴァコス Leonidas Kavakos, violin
「このギリシャのヴァイオリニストは、ほとんどのアーティストが生涯を通しても経験できないような芸術的進化をわずか12年でとげ、ヴァイオリニストの頂点に立った」。(『フィラデルフィア・インクワイアラー』2011年11月)
1967年にアテネで音楽一家の家に生まれたレオニダス・カヴァコスは5歳の時にヴァイオリンを学び始め、その後ギリシャ音楽院でステリオス・カファンタリスに、そしてインディアナ大学でジョーゼフ・ギンゴルトに師事した。1984年にアテネ音楽祭でコンサート・デビューを飾り、翌年ヘルシンキで開催された国際シベリウス・コンクールに最年少で参加し、優勝した。その3年後、ニューヨークで開催されたナウムブルク・コンクール、パガニーニ・コンクールで優勝し、その後まもなくヨーロッパ、アメリカでの一連のメジャー・デビューを果たした。
以来アンリ・デュティユーの《夢の木》(ヴァイオリン協奏曲)・カール・アマデウス・ハルトマンの《葬送協奏曲》などの現代作品をはじめ、19世紀、20世紀の偉大な協奏曲、それにバッハ、モーツァルトの作品をはじめとする広いレパートリーをもって、世界的な指揮者たち、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団、ミラノ・スカラ座フィルハーモニー管弦楽団、ニューヨーク・フィルハーモニック、ロサンゼルス・フィルハーモニック、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団、ロンドン交響楽団、ボストン交響楽団、ブダペスト祝祭管弦楽団、フィラデルフィア管弦楽団と共演している。リッカルド・シャイー指揮のライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団、マリス・ヤンソンス指揮のロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団と演奏旅行も行なった。2012/13年のシーズンには彼はロンドン交響楽団の”アーティスト・ポートレイト”の中心となり、またベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の”アーティスト・イン・レジデンス”を務めている。
このほかの2012/13年のシーズンの出演契約には、2012年11月にセミョン・ビシュコフ指揮ロンドン交響楽団と行なう、オスバルド・ゴリホフ(1960-
)がカヴァコスのために作曲したヴァイオリン協奏曲の世界初演、2013年1月のヤニック・ネゼ=セガン指揮フィラデルフィア管弦楽団との共演のほか、ニューヨーク・フィルハーモニック、ロサンゼルス・フィルハーモニック、マリインスキー劇場管弦楽団、ロンドン交響楽団、ヒューストン交響楽団、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団(ザルツブルク音楽祭、ルツェルン音楽祭)ロッテルダム・フィルハーモニック、パリ管弦楽団との協奏曲での共演が含まれている。
室内楽曲奏者、またリサイタリストとしての活動にも取り組み、ヴェルビエ、モントルー、エディンバラ、ザルツブルクの音楽祭に定期的に招かれている。2011/12年のシーズンにはロンドンのウィグモア・ホールでピアニストのエマニュエル・アックスとの共演でベートーヴェンのソナタの全曲演奏を行ない、2012/13年のシーズンにウィーンのムジークフェラインザールでアックスとともに再び演奏することになっている。この作品をエンリコ・パーチェのピアノでミラノ、フィレンツェ、アテネをはじめ、カーネギー・ホール、アムステルダム・コンセルトヘボウ、ザルツブルク音楽祭、香港音楽祭などで演奏する予定にもなっている。室内楽曲におけるこのほかのすぐれたパートナーの中にはゴーチェ・ルノー・キャプソン兄弟、アントワーヌ・タメスティ、ナターリャ・グートマン、ニコラス・アンゲリッチ、ニコライ・ルガンスキー、エリーザベト・レオンスカヤ、ユジャ・ワンらがいる。
すぐれた才能あふれる指揮者としてますます評価されつつあり、最近ではボストン交響楽団、アタランタ交響楽団などと契約している。「ベートーヴェンの交響曲第4番[を指揮するのに]・・・
スコアも指揮棒もなしで ・・・
カヴァコスはしなやかな柔軟性をもって体全体を使ってメロディを形作り、オーケストラがすばらしい演奏でこれに応えた」(『ボストン・ミュージカル・インテリジェンサー』2012年3月)。ブダペスト祝祭管弦楽団、ロッテルダム・フィルハーモニック、ベルリン・ドイツ交響楽団、フィレンツェ五月音楽祭管弦楽団、ミラノ・スカラ座フィルハーモニー管弦楽団、サンタ・チェチーリア音楽院管弦楽団なども指揮している。
エネスク、ラヴェル、J.S.バッハ、ストラヴィンスキーの室内楽作品をはじめ、メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲(エコー・クラシック賞」)、シベリウスのヴァイオリン協奏曲(オリジナル版と最終版。グラモフォン賞)、モーツァルトのヴァイオリン協奏曲(全曲。『シュピーゲル』紙の「ベスト・クラシック・レコーディング30」)で賞を獲得し、2012年、デッカと専属録音契約を結んだ。この新しい契約のもとに行なわれた最初のレコーディングが、エンリコ・パーチェのピアノによるベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ全曲である[当盤]。
1724年製のストラディヴァリウスの”Avergavenny”を演奏している。
訳:長谷川勝英
©2012