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『かつおぶしだよ人生は』誕生秘話

クロベエ
近所にクロベエと呼ばれていた猫がいた。もっさりとした黒猫。容貌は浪花節でも唸りだしそうな顔をしていた。
そして、町内の至る所に出没して可愛がられていた。クロベエは、その家その家で独自の名前をつけられていた。
クロベエ・ゼンキチ・クロタマ・スズ・もっと他にも呼び名が付いていたらしい。
一応首に鈴をつけていたので、どこかの飼い猫である。
いつもクロベエは、かつお節の匂いが漂ってくる割烹料理屋の石造りの塀の上で、通行人をのどかにながめていた。
｢フン　人間って　なんて忙しいこった｣クロベエは、そうつぶやいているように思われた。
｢あ～猫になりたい｣のどかな春の日のクロベエをみて、そう思ったものである。
このクロベエ、ねずみ獲りがお手の物で、近くのラーメン屋の厨房に出入りをして喝采を浴びていた。
かれこれ１０年程前の話だが、クロベエがモチーフとなってこの詩が生まれたわけである。

高田　ひろお