商品紹介
ポスト・クラシカルの元祖ヨハン・ヨハンソンのDGデビュー最新作
ヨハン・ヨハンソンのDGデビュー盤にして、6年ぶりとなる新スタジオ録音は、刺激的で臨場感あふれるサウンドを目指したものです。弦楽四重奏、弦楽オーケストラ、エレクトロニクス、ドローン、オルガン、ピアノ、合唱団のほか、謎の短波放送らしきものを折り込み、ヨハンソン方式によるジャンルをブレンドした前衛なスコアとして書かれています。
「私が意図しているのは、新しい存在に変わる変身の物語だ」
――オウィディウス『変身物語』
2009年に本盤の作曲に着手した時、最初はシンプルな対位法的テーマが、あたかも永遠に上昇を続けるように、和声が上行していくというアイディアから始まった。そのアイディアを変化させ、一定の形を与えながら、さまざまなヴァリエーションを作曲していった。そのうち、音楽は脱構築と再構築のプロセスの中で、徐々に突然変異を始め、最初に作ったデモ音源はハードディスクの暗い片隅に追いやられてしまった。これまでに私が制作したアルバムと異なり、本盤では、あるコンセプトや物語が音楽に結びつこうとしなかった。音楽自身が自分で成長し、形をとるのを待ち望んでいたのである。成長には時間がかかりそうだったので、私は完成を急がず、何年ものあいだ、周期的に成長を促してやった。 ・・・ 中略 ・・・
ジャン・コクトーの映画『オルフェ』の中で、ジャン・マレー演じるオルフェはカー・ラジオに熱心に聞き入り、短波放送の雑音から聞こえてくる奇妙で前衛的な詩に耳を傾ける。コクトーへのオマージュと、私が新しく住み始めた街へのオマージュとして、数字や文字や暗号文の朗読からなる「乱数放送」の不思議な録音を音楽に加えることにした。「乱数放送」の発信源は不明だが、おそらくはどこかの諜報機関ではないかと言われている。ベルリンの壁の崩壊以後、乱数放送はほとんど放送されなくなったが、いくつかの放送局が、いまも天空に向けてミステリアスな信号を発し続けている。
ヨハン・ヨハンソン (訳・編:前島秀国)
___ライナーノーツより