ポール・モチアンへのオマージュを捧げたアルバムがECMよりリリース!

2022.10.07 TOPICS

ビル・エヴァンスやキース・ジャレットのトリオで活躍し、多くの名盤に携わった偉大なドラマー、故ポール・モチアンへのオマージュとして、デンマーク人ギタリストのヤコブ・ブロと米国人サックス奏者のジョー・ロヴァーノが初めて共同制作したアルバムがECMよりリースされることが決定、「Song To An Old Friend」が先行配信されている。

2011年に80歳で亡くなったモチアンの逝去から10年を経て、ヤコブ・ブロはこのプロジェクトのために、ロヴァーノが「ミニ・オーケストラ」と呼ぶ特別なバンドを招集し、コペンハーゲンのスタジオ・セッションを行った。今作に参加しているラリー・グレナディア、トーマス・モーガン、アンデルス・クリステンセンという現ジャズ界最前線で活躍する3人のベーシストや、ジョーイ・バロンとホルヘ・ロッシなど注目の高い2人のドラマーらは、近年、様々な組み合わせで一緒に仕事をしたり、ECMの作品にも参加しているプレイヤーたち。

ポール・モチアンの影響を受けたブロとロヴァーノによる2曲ずつのオリジナルに加え、グループ・インプロヴィゼーションとモチアンによるヴィンテージな1曲「ドラム・ミュージック」を特にダイナミックに演奏している。

「ロヴァーノは音楽のフレーズを詩にすることができ、ブロのギターは光り輝いている…彼の音楽は催眠術のようでありドラマチックだ。」‐ 米ダウンビート誌

 

ヤコブ・ブロ、ジョー・ロヴァーノ
『ワンス・アラウンド・ザ・ルーム ― トリビュート・トゥ・ポール・モチアン』

Jakob Bro, Joe Lovano / Once Around The Room A Tribute to Paul Motian

2022年11月4日(金)
SHMCD UCCE-1197 税込:¥2,860

>> LISTEN / BUY

1. アズ・イット・シュッド・ビー / As It Should Be
2. バウンド・クリエーション / Bound Creation
3. フォー・ザ・ラヴ・オブ・ポール / For The Love of Paul
4. ソング・トゥ・アン・オールド・フレンド / Song to an Old Friend
5. ドラム・ミュージック / Drum Music
6. ポーズ / Pause
 
<パーソネル>
ヤコブ・ブロ(g) ジョー・ロヴァーノ(ts, tarogaro) ラリー・グレナディア(douoble-b) アンデルス・クリステンセン(b) ジョーイ・バロン(ds) ホルヘ・ロッシ(ds)
プロデュース:マンフレート・アイヒャー

★2021年11月、コペンハーゲン、ザ・ヴィレッジ・レコーディングにて録音

 


 

モチアンとギタリストのビル・フリゼールとの比類なきトリオで30年間(1981-2011)ツアーとレコーディングを行ったロヴァーノは、この新しいアルバムのタイトルについて次のように説明している。

「ポールはほとんど毎日、ニューヨークのセントラルパークの貯水池の周りをジョギングしていて、その儀式にちなんだ『Once Around the Park』という曲があったんです。コペンハーゲンのレコーディングでは、スタジオの中で全員がある種の円形の状況に集まっていたので、曲を演奏したりソロを取ったりしながら、部屋の中を回っているような感じだったのでこのタイトルにしました。バンドスタンドやスタジオで演奏するたびに思うのは、音楽は深い呼吸と耳を澄ませるものでなければならないということです。楽器の名人芸を披露するのではなく、即興の技術、その場にいること、音楽と一緒にいることが大切なのです。」

モチアンの2005年リリースのアルバム『Garden of Eden』でECMデビューしたブロ

「私がポールの音楽でとても好きなのは、彼の演奏と作曲の両方における美的感覚です」と語っている。「自分の曲でもスタンダード曲でも、それがポール・モチアンであることは明らかでした。彼が人々をまとめ、バンドを組織する方法もまた刺激的でした。個人的には、ポールの作曲するハーモニーの世界は、私が自分の曲作りに何か個性を求める上で欠かせないものでした。徐々に、私の曲はポールの曲に直接関係するものから、彼の影響やアイデアをより北欧的なトーンにつなげられるようになりました。私は、詩篇であれ民謡であれ、子供の頃の音楽と関わり始め、様々な影響を受けた世界との間に橋をかけ始めました。ポールのインスピレーションが、私の声を育ててくれたのです。」

 
ブロがロヴァーノと初めて仕事をしたのは2009年、コペンハーゲン・ジャズハウスで3夜にわたって行われた、アンダース・クリステンセン、ドラマーのヤコブ・ホイヤーとのトリオにサックス奏者が加わった時だった。

「彼の音、リズム感、表現力にはずっと魅了されてきました。ジョーの演奏からは、いつもジャズの深い歴史が感じられるのと同時に彼は独自の音色と音楽へのアプローチを持っています。彼のハーモニーの世界も前を向いているんです。」

ロヴァーノは、この若いギタリストのサウンド、つまりハーモニーの煌めきやターリングライン、ループしたアトモスフェリックについて言及し、賛辞を返している。

「ヤコブはビル・フリゼールの偉大な弟子でありながら、音楽と人生について独自のヴィジョンを持っている。」
「彼はリード・ギター・プレイヤーではないんだ。どちらかというとオーケストラのようなサウンドで、とてもクリエイティヴ。このアルバムの構想には、本当に彼の力が必要だったのです。」

 
ロヴァーノは本作品のために、12音でドローンを散りばめた「As It Should Be」を提供している。(そのタイトルは、1985年にECMからリリースされたモチアン/ロヴァーノ/フリゼール・トリオのファーストアルバムのタイトル曲「It Should’ve Happened a Long Time Ago」を暗示している) この曲とロヴァーノが提供しているもう1曲「For the Love of Paul」は、ダブルドラムをうまく使ってアンサンブルのダイナミズムを高めている。
一方、ブロはバラード調の「Song To An Old Friend」(メロディのほとんどはロヴァーノが担当)とフォーク風の「Pause」を作曲し、ブロの親密な演奏がベースの下流で織り成している。
ロヴァーノのアイデアからアレンジされたグループ即興曲「Sound Creation」では、アンサンブルのオーケストラ・サウンドを雰囲気たっぷりに表現し、織り成すメロディはすべてその場で考案されている。(ロヴァーノは途中でテナー・サックスを持ち替えて東ヨーロッパのリード楽器タロガートでラインを追加している)

このアルバムで唯一モチアンの作曲した「Drum Music」では、バロンとロッシがそれぞれ単独で、さらに一緒にも演奏している。

「この曲はポールが僕とビルと組んだトリオのテーマ曲のようなものだった。」
「私たちはいつもセットの最後にこの曲を演奏し、時にはテーマだけを演奏し、時にはテーマから飛び出すこともありました。このアルバムでは、この曲を深く掘り下げたんです。とてもパワフルな音楽に仕上がりました。」- ロヴァーノ

 
本作品の録音セッションを振り返って、ブロはこう締めくくっている。

「このグループのミュージシャンの数とみんなの忙しいスケジュールを考えると、みんなで可能な日をどうにか見いだし、それが、たまたまポールが去った日と同じになる確率はどれくらいあるでしょうか?このcovidの時代にみんながコペンハーゲンに来ることができたのは奇跡的なことでした。パリからジョー、ロンドンからラリー、ニューヨークからトーマス、スイスからホルヘ、ベルリンからジョーイが来て、私とアンデルスとで合流しました。スタジオには、温かくオープンな雰囲気が漂っていました。みんなポールとつながりがあって、なんだか彼が部屋の中にいるような気がしたんです。」