interview Vol.1「元BOØWYドラマー、高橋まことが最後に選んだバンドJET SET BOYS」
JET SET BOYS オフィシャル全曲解説インタビュー vol.1
「元BOØWYドラマー、高橋まことが最後に選んだバンドJET SET BOYS」
日本のロック史に名を刻むメンバーが集結したロックバンド、JET SET BOYS。BOØWY再結成騒動が話題となった昨今だが、ドラム 高橋まこと(ex:BOØWY)、ギター 友森昭一(ex:AUTO-MOD、REBECCA)、ベース tatsu(LÄ-PPISCH)、ヴォーカル 椎名慶治(ex:SURFACE)の4人によって、それぞれの夢と人生をかけて結成したスペシャルなバンドに注目したい。
元BOØWYのドラマー、高橋まことが“最後に選んだというバンド”というのも気になるポイントだ。次世代へ継承したい、熱いビートとソウルで表現するリアリティ溢れるロック魂。2016年結成、昨年の全国ツアーの経験を経て制作されたという赤と黒の衝撃、2ndアルバム『BIRD EYE』(2017年6月14日発売)の存在。本作は、各メンバーの得意分野が見事にマッシュアップされたバンド感の強いアグレッシヴな作品に仕上がっている。
セッションから生まれたナンバーが多いという最新作『BIRD EYE』の全曲解説を、BOØWY「BAD FEELING」のリズムを彷彿とさせる「CRUSH AND BUILD」のミュージックビデオ撮影直後に聞いてみた。百戦錬磨の個性豊かなメンバーが紡ぎ出すレコーディング手法の秘密。アップデートされていくロック・ヒストリー。作品を紐解くヒントとなるだろう。
テキスト:ふくりゅう(音楽コンシェルジュ)
01. BIRD EYE
ーー1曲目が「BIRD EYE」というワイルドなインスト・ナンバー。
友森:もともと他現場で、日本の有名な香辛料をお土産にもらったんです。一番辛いのが『BIRD EYE』って名前で。洒落てるでしょ?
椎名:いきなりお土産とか言ってる時点でおかしいから(笑)。
友森:“アルバムのオープニングを作らなきゃ”って時に、インストを作りまして。で、仮タイトルとして日付だけじゃデータがわかりづらくなるので、とりあえず『BIRD EYE』にしたんですよ。
椎名:僕らも後付けで意味を知りましたから。長野の香辛料だそうですね。
友森:“BIRD EYE”って、俯瞰してものを見ているみたいでかっこよくない?
ーー深読みできますよね。
高橋:前作のアルバムも1曲目はインストだったので、インストやりたかったんだよね。
tatsu:各々楽器を持って“せ〜の!”でね。
友森:俺の中では4分の4(リズムのこと)で作る気がしたんだよ。でも、まさかの変拍子できたから。8分の5っていう。頭どうかしてんのかなっていう(苦笑)。
高橋:でもゴリ押しで。テイク5ぐらいで決まったのかな。
椎名:本当にバッと即興で作ったという。いや、このバンドすごいです。
tatsu:行き当たりばったりともいう(苦笑)。
友森:これでいいかも、いやこれじゃない、やっぱりこっちみたいなね。“あれ、何この音は?”って思ったらtatsuくんが変わったことやっていたり(苦笑)。
椎名:いやぁ、おもしろかったです。まさにセッションでしたね。
02. CRUSH AND BUILD
ーーアグレッシヴな勢いのまま2曲目が「CRUSH AND BUILD」。イントロのギターのファンク感であったり、サビでのキャッチーなメロディーの開放感が素晴らしいナンバーだと。
椎名:これはね、まことさんの…、
高橋:タム回しの曲、タムで押しまくる曲だった。
tatsu:2nd アルバム用のセッションで、スタジオに入って“まことさんのご機嫌のビートはどれ?”って聞いたら、これだって。じゃあ乗ろうと。
椎名:久々に「BAD FEELING」したかったんだなと思いましたよ、俺は。それってJET SET BOYSにとってもプラスだと思って。このビートに乗っかっていかなきゃいけないなと。
友森:このアルバムの取っ掛かりなんですよ。
椎名:リード曲に成るべくして出来上がった曲なんですよね。
ーー友森さん、イントロのギターフレーズはいかがでしたか?
友森:僕は、このタム回しのスピード感あるドラムから、中途半端なキーで弾き始めちゃったんですけど、G♯マイナーみたいな感じに。最初に思いついてそれが最後まで生き残りましたね。
ーー瞬発力半端ないバンド感なんですね。
椎名:そうですよね。逆に瞬発力逃したら俺たちやれないと思うので(笑)。
友森:やり始めたら早いんだよ。
ーーメロディーは?
椎名:セッションをしたときにはもう同時に歌っていました。ファンクな感じからの開放感が欲しいなと。いやほんと、瞬発力だけはあるので、その瞬の時を逃さないでよく作れたと思いますね。
ーー歌詞もそれこそ、過去を振り返らない的な感じで。
椎名:過去にはすがらない。全部くれてやるっていうね。かっこよすぎるでしょ。
高橋:ははは(笑)。
椎名:“昨日までのものは ばら撒いてしまえばいい”ですから。これは僕のリリックですね。「CRUSH AND BUILD」、壊してまた新しく作り直すというテーマで。
ーーこのメンツで集まった意義、アルバムのメッセージ性、テーマが全部詰まってますよね。
03. OH BABY
ーー3曲目が「OH BABY」という。ハードかつ王道感あるロックチューンとなっています。ライブで盛り上がりそうです。
椎名:当たり前なんですけど、JET SET BOYSっていうバンドを多くの人に聞いてもらいたいんですよ。そんな意味で、したたかに狙ったタイプな曲ですね。
高橋:バランスを考えて、一番最後にできた曲だよね。
椎名:メロディーがまずあって、アカペラで聴かせて色付けして。スタジオで、3人のアレンジメントが面白かったですね。これがバンドなんだなって。
友森:キャッチーな感じでね。僕は椎名くんのサポート(ギタリスト)もやっているわけじゃない? 少しそっち寄りの雰囲気があるんだけど、JET SET BOYSでやると、やっぱり“らしさ”が出てくるんだよね。
椎名:本当、JET SET BOYSになるんですよね。
tatsu:これは、もう最初のギターのリフが秀逸ですよ。
椎名:あのリフがあってまとまりましたね。
04. OK?
ーー4曲目が「OK?」。コーラスワークなどバンド感強めなナンバー。
椎名:これ僕好きですねぇ。
友森:レコーディングで10曲録ったけど、バランス的にあと2曲くらい必要だねって話して。椎名くんがメロディーをもってきて。大人のファンク系をやりたくなったんですよ。Eマイナーなんですけど。
椎名:どうしてもキャッチーな掴みの曲が欲しくて。それで「OK?」のリフを作ってもらったら、すごくおしゃれで格好良くて。オケが先に固まって、メロディーを待っている暇がなくて、レコーディングにそのまま突入したんですよ。なので、レコーディングしながらメロディーを作ったという。
ーー他の曲とは違うスタイルの曲ですね。それこそレコーディングとか、ソロでライブもあって、喉が大変な時期だったんじゃないですか?
椎名:ツアー中にレコーディングもあって、ツアーの最終日に喉がいっちゃって、確かに大変だったんですよ。でもおかげさまで大丈夫です。ありがとうございます。
友森:二足のわらじでやってるからねぇ。
椎名:楽しいですよ。苦とは思っていないです。ありがたいことですよ。
05. IT’S JUST A LOVE AFFAIR
ーー5曲目が「IT’S JUST A LOVE AFFAIR」こちらはまた大人めいたというか。
友森:これは意外にもスタジオ・セッションから。まことさんのリズムから出来上がったんですよ。
高橋:こういう雰囲気は、これまで全然やってなかったんですけどね。静かなタイプというか大人な感じというか。
tatsu:最初のベースのリフを弾いたら友森くんが。
椎名:そっから乗っていった感じですね。
ーーそこから言葉も?
椎名:そうです。メロディーもAメロはその時に浮かんで。このループ感いいなって。
tatsu:2人して別々のサビを考えてきたんだけど、割と似たようなイメージで。うまくブラッシュアップして素晴らしいメロが乗って。こういう成り立ちの曲ってなかなか珍しいんですよ。
椎名:噛み合わせ良かったですよね。いい曲だと思います。
友森:仮タイトルは「切ない大寒波」っていう(苦笑)。
椎名:今年の冬がすごい大寒波だったからね。レコーディングした日もすごい寒くて(苦笑)。
友森:それも良いタイトルだと思ったんだけどな。
椎名:えっ、間違えたかな(苦笑)。これは完全に大人の愛を歌ったナンバーですね。
06. IT’S CALLED LOVE
ーー6曲目が、ミディアムな優しさを感じる「IT’S CALLED LOVE」。
椎名:去年からライブでやっていた曲なんです。ツアーのために作ったといっても過言でない曲。2ndアルバムのイメージではないんですね。
友森:ライブに必要な曲としてのナンバーですね。
ーーバラード的だけど、すごくハードに突き刺さってくる曲。
椎名:何でしょう。一概にバラードという曲ではない感じがしますよね。でも、すごく心をほっこりさせてくれる。恋愛の言葉だったり、懐かしいビートがちりばめられていたりとか。
高橋:そんなにゆるくはないんだよね。ビートルズみたいに、パンッドンドンっていう。結構ハードにいっている。テンポが遅いだけでね。
椎名:実は面白いアレンジをしている曲で。王道のメロディーを友森くんが作ってくれて。美しいメロディーだなって。最終的には結構アグレッシブなアレンジに変わって。3人のアレンジを固めていく感じをみているのが楽しかったですね。
tatsu:裏テーマは、まことさんplayリンゴ・スターもしくはジョン・ボーナム(レッド・ツェッペリンのドラマー)でした。
椎名:間違いなく。リンゴ・スターがここにはいますね。
ーーそれは、まことさん的にも嬉しいことですよね。
高橋:うんうん。大好きなドラマーだからね。
tatsu:ライブで楽しそうに気持ちよさそうに叩いている姿を観て欲しいですね。
07. ONE STEP CLOSER
ーー7曲目は「ONE STEP CLOSER」。疾走感溢れるシャッフル・ビートがポップでツボです。好きな曲ですね〜。
tatsu:この曲も、ビートありきでセッションから生まれました。
椎名:僕がもともとソロ用にBOØWYをリスペクトして書いた曲があって。JET SET BOYSの最初のライブで叩いてもらったんですよ。この手のジャストなビートの曲をJET SET BOYSでも作りたいなって。この曲はセッションの時からAメロ、Bメロ、サビの全てがストレートに進んだ曲でした。
高橋:俺、このビートが好きだからね。こういう曲、あってもいいよね1曲は。
友森:ライブで盛り上がりそうだね。
tatsu:こういう曲こそ、このバンドの真骨頂かもしれないですね。実は、すこしずつ、みんな変なことをやっていて、ちょっと主軸からずれている面白み。この4人がうまい具合にまざってJET SET BOYSらしくなるんだよね。
椎名:ちゃんと色が出ていますよね。バンド感みたいなものは意識していて。だからこそ、音数を減らしながらブラッシュアップできている曲だと思います。
08. DEAR MERMAID
ーーこれは仮タイトルにもなってましたがサビの“BAD ASS BITCH”というフレーズのインパクトも強いです。ハードなナンバーで。
椎名:そうですね、これはもともと「ツェッペリン」って仮タイトルだったんですよ。
ーー前作もレッド・ツェッペリン的な重厚なリズムはテーマとして出されてましたよね。
tatsu:今回は、ツェッペリンのバラードだったんですよ。
高橋:リフで押す展開がいいよね。リフでぐっとドラムはずっしりって感じ。
椎名:これもセッションで生まれた曲ですね。
友森:スタジオで自然とリフが生まれて、リフにみんなくっついて固まった。tatsuくんのベースのブースト踏んだ瞬間に、リフがユニゾンして、あ、これだねと。
tatsu:サビもその日にできたね。
椎名:それを作詞家の野口圭に聞かせたら、こういう歌詞になって。放送禁止みたいな言葉が。もともと「BAD ASS BITCH」っていうタイトルだったんですね。“ゲロまぶ”みたいな意味なんですけど。“クッッソ美人”みたいな。“綺麗ないい女”っていう意味で。でも字面で誤解されるかなと「DEAR MERMAID」に落ち着きました。
ーーまことさん的にも、相当気合入ってるドラムですよね。
高橋:入っています。ボンゾになりきって(笑)。
椎名:ロックの全ての要素が入ってるんじゃないですか? 真骨頂ですよね。
09. GO AWAY
ーー9曲目「GO AWAY」は、ロックンロールなナンバーで。
椎名:ブギーですね。これもセッションですよね。
友森:なかなかブギーってやる機会ないなって。
tatsu:なんていうか一筆書きで作ったものが、ちゃんと作品になるっていうのがこのバンドは面白い。
椎名:メロディーも、せ〜ので出したイメージのままですから。
ーーブギーのイメージってどんなものなんですか?
友森:ブギーも色々あるけど、T-REXもそうだし。このバンドでやったらどうなるのかなって。まことさんにもそういう要素があるんじゃないのかなって。
高橋:俺の中でのブギーはSTUTAS QUOかな。イメージとしてはもうちょっと軽かったんだけど、この曲はちょっと重くなったかな。
椎名:こういうタイプの曲を歌うのは初めてだったんですよ。結果、酔っ払いのオヤジが歌っているみたいなイメージで。1stアルバムに「BAD COMPANY」って曲があるんですけど、その主人公の友達、悪友の視点から書いた歌詞になっているんです。なので並べて聞くと笑えるんですよ。作詞家の野口圭が「BAD COMPANY」の俺の歌詞にいたく嫉妬して、それに対して返してきた歌詞でもあります。作詞家同士で笑いあえたっていう。なので、ぜひ1stに収録した「BAD COMPANY」も聞いて欲しいです。
10. GRAPEFRUITS
ーー10曲目が押しまくりのロックチューン「GRAPEFRUITS」。
tatsu:63歳でどれだけのBPMがいけるかっていうドラマーのバロメーターになりますね(苦笑)。
椎名:こんなに構成がいっぱいある曲なのに、セッション一発で全部できましたからね。ほんとこのバンド瞬発力すごいんですよ。3時間も経つと、みんなボ〜ッとしてますよ(苦笑)。
友森:なのに早いヤツやりましょ、早いヤツやりましょって(苦笑)。
高橋:首を締めてるんだよな、自分でなあ(笑)。
椎名:1stアルバムに収録して、ライブ定番の起爆剤になった曲に「PASTA」があるんですけど。2ndアルバムでもみんなが騒げる曲が欲しいねって。俺が「GRAPEFRUITS」って言ったら“イエイ!”と言える曲が欲しいってまことさんに言ったら、じゃあって叩き始めたものに、みんなで乗っかって生まれて。
tatsu:最初の仮タイトルは「PASTA2」だったからね。
友森:ネタがね、フードものだと嫌味が無いんでしょうね。あ、フードパンクだ(苦笑)。
椎名:これから毎回フードパンク入れていかないと(苦笑)。
tatsu:どんどんBPM上がっていくよ(笑)。
ーー「GRAPEFRUITS」ってタイトルは?
椎名:これは作詞家の野口圭からの案なんですけど。多分なんですけど、下ネタなんだろうなって……。
友森:毎回、野口くんに会うたびに“エロいやつお願いします!”と頼んでいるんで(笑)。
ーー完全に椎名さんのイメージがそっちになっていますよね(苦笑)。
椎名:なっていますよね。でも全部、野口のせい(苦笑)。まぁ、いやらしい感じをパンクに乗せると気持ちがいいんですよね。
11. WHO AM I?
ーーで、11曲目が「WHO AM I?」。この楽曲もテンションが上がるビートが気持ちのいいナンバー。
椎名:これは1stツアーの時からやってますね。「IT’S CALLED LOVE」とこの曲2曲を。
高橋:で、ライブでは途中でドラムソロを入れてメンバー紹介に入ると。
友森:リズムが、なんとなく子供の頃に観たポパイのアニメを思い出すんです。三つ子の背の高い黒人が出てきて、その3人が登場する時のリズム(口ずさむ)っぽい感じにしたいなと思って。
ーー具体的なイメージがあったのですねぇ。途中入る男らしいコーラスもすごく上がる感じで。
椎名: 2ndアルバムのスタートになった曲なんですね。狙ったわけではないんですけど、最後に全部のレコーディングが終わりますって時に、メンバーみんな揃っていので「WHO AM I?」のガヤコーラスを録ったんです。2ndアルバムは、この曲で始まり、この曲で終わっているっていうね。
tatsu:みんなでガヤコーラスを入れたことで、ひとつハンコが押されたよね。
椎名:全員でやることによって『BIRD EYE』のための曲になったというか。
ーーJET SET BOYSには、魅力的なストーリーがたくさんありますね。
椎名:不思議ですね。こうやって話してみることで、いろんなことを思い返します。
12. FAM
ーーで、ラスト12曲目は世界観の大きな人間愛を感じるバラード「FAM」。
友森:これもまたセッションから生まれました。コードだけは出来上がっていて、ハチロク(8分の6拍子)やりましょうよって。みんなでやったらこうなりましたね。
椎名:“いい曲になりそうだから、いい曲になりそうな歌詞を書け!”って作詞家の野口圭に無茶振りしましたね(苦笑)。そしたら“恋愛テーマだけではなく、もっと大きな家族愛的なテーマはどう思う?”と聞かれて、それで僕が直しながら泣ける曲に仕上げました。
友森:ジャパニーズ・ロック・バラードにならないようにしようと気をつけましたね。それより、QUEENみたいにスケールのでかい曲になれたらなって。
tatsu:この手のタイプの曲を我々がやると湿っぽくなりがちなんだけど、いい感じに乾いていていいですね。
椎名:2番のサビが終わった後からが秀逸ですよね。そのあとに大サビにいってバトンタッチして、ギターソロでフィルがあって、答えがでるっていう。この曲いいなと。
ーーなるほどです。今回、作曲クレジットにメンバー4人の名前が並んでいる曲が多いのが特徴ですね。
椎名:セッションから生まれている曲が多いからね。
tatsu:全員で作りました。
椎名:この4人だからできるんじゃないかなと思いますね。それこそ、2ndアルバム『BIRD EYE』は、絶対に高橋まことのビートから曲を作ろうと決めてたんです。いいアルバムに仕上がったと思いますよ。