アルバム「JAY’ED WORKS」インタビュー公開
「フィーチャリングはいろんなフィールドに飛び込んでいける武器」。
2009年に初めてレゲエミュージシャンと絡んで「伝えたい事がこんなあるのに」(INFINITY 16 welcomez 若旦那 from 湘南乃風 & JAY’ED)を制作して以降、そう考えるようになったというJAY’ED。今回到着した初のフィーチャリングベストアルバム『JAY’ED WORKS』には、そのコメントを裏付けるように、ジャンルを横断して多彩な顔ぶれと作りあげた楽曲が並んでいる。「Everybody」「ずっと一緒」「最後の優しさ」など、ファンに長く愛されるオリジナル曲を残してきたJAY’EDだが、楽曲の一般的な知名度という点では、「明日がくるなら」(JUJU with JAY’ED)、「何かひとつ feat. JAY’ED & 若旦那」(JAMOSA)、「雨のち晴れ」(INFINITY 16 welcomez MINMI & JAY’ED)といった辺りに軍配が上がるのは否めない。つまり、JAY’EDのキャリアを語る上で外せないのがコラボ曲。特にソトシゴトでJAY’EDは抜群の魅力を発揮してきたというわけだ。本作はそうして数多の名曲を生み出してきた彼の集大成。一度こうしてまとめることで「次からまたフレッシュな気持ちでフィーチャリング曲に取り組めたら」という気持ちもあったという。
「フィーチャリングは、やるんだったらお互いが生きるようなスタンスがいいなと思ってるんです。一番大事にしてるのは全体の調和。お互いの世界観がうまくマッチしていくことをめざしてるんです」
本作の収録曲を改めて見直すと、圧倒的に女性とのコラボが多いことに気づく。実に13曲中10曲が女性アーティストとの絡みなのだ。一度聴いたら忘れられない甘くほろ苦い歌声。繊細でエモーショナルなフレージング。ときに曲の切なさを高め、ときに曲にきらめきを与える中性的なJAY’EDの声は、相手の女性を盛り立てる名バイプレイヤーのようだ。高音域を地声でソフトに出せるミドルヴォイスの持ち主だから、歌声が押しつけがましくならないところも“女声”とのマッチングに一役買っているのだろう。JAY’EDの声と、女性の歌声は最高のマリアージュ。女が放っておかない、放っておけない、モテ声なのだ。
「女性と歌うときは引き立て役に回ることが多いし、その方がオイシイと思ってるところもあります。女性と男性が一緒に歌ったときは、女性の方が高いキーが出るし、耳に気持ちよく入りやすいと思うんです。だからこそ自分はちょっと引いて、スパイスになるところをしっかりキメるっていう感覚で歌うことが多いです」
本作のために書き下ろした新曲「また君と feat. Ms.OOJA」もまた、相手の歌を活かすことを考えて作った曲だ。「サビでガツンと歌うところはMs.OOJAに任せようとか、ブリッジもオイシイところに行ってもらうとか。二人が絡み合いながら最後は高まっていくようにとか、全体の流れや起伏をイメージして作りました」。歌詞のテーマは、一度別れた相手との二度目の恋。ドラマは、かつてのカップルだった男女が、偶然か必然か、最終電車を逃してしまったところから始まる。相手の問いかけるような視線に戸惑いを感じる女、自分の心に嘘をつけないと決心を固めていく男、そんな二人を描いたロマンティックな大人のラブソングだ。
「イメージしたのは30代のカップル。お互いいろいろ経験してきた中で今度こそ相手ときちんと向き合いたいっていう、その気持ちにフォーカスしたいと思ったんです。切ない曲にはしたくなかったんで、これから何かが始まりそうな予感がするっていうところで曲は終わらせました」
気づけばJAY’EDもインディーズデビューから10年。1st EP『Why?』から順調にキャリアを重ねてきたが、今も自分のカラーを常に模索していきたいと言う。
「世の中に出てるものは常に時代に合わせてカタチを変えていくし、自分も時流に敏感になって、歌い方やスタイルを変えていけたらなって。でも、自分の持ち味もずっと大事にしていきたい。そこはバランスだと思うんですけど、そのバランスを自分の中で常に把握しておきたいんです。フィーチャリングもそうだけど、やっぱりどっちに傾いてもダメだと思うから」
文:猪又 孝(DO THE MONKEY)