2024年来日公演初日名古屋公演レポート
【TOGETHER AGAIN】ツアー、初日となった名古屋公演のオフィシャルレポートが到着。
●名古屋に女王ジャネット降臨
名古屋にポップ・ミュージックの女王降臨! そんな賛辞にふさわしい見事なジャネット・ジャクソンのコンサートだった。1990年の初来日公演以来、時代の節々で日本におけるライヴを成功させてきたジャネットだから、常に一定の水準をキープしているプロフェッショナルであるはずだし、昨年4月からスタートしている北米各地の評価も高かったので、ある程度の予感はあったのだが、結果的に今回の来日公演は、自分の予感や期待を上回る密度の濃い内容で、兄マイケル・ジャクソンがキング・オブ・ポップなら、彼の妹ジャネット・ジャクソンは間違いなくクイーン・オブ・ポップいうべき堂々たる内容だった。
ツアー初日となる16日の名古屋公演は、5年ぶりのジャパン・ツアーとはいっても、名古屋/中京地区におけるジャネットの公演としては、実に25年ぶりとなる。会場となったポートメッセなごや 第1展示館は、島を除く名古屋市街の最南端にある海を臨む金城ふ頭にあるコンベンション・センターだ。あおなみ線というJRの鉄道と自動車が交通手段となるが、かなり早く目的地に到着したにもかかわらず、駐車場は車社会の名古屋の面目を保つかの如く満席状態で圧倒された。さらに広大な会場内もオーディエンスで満杯だった。
初来日公演がパーフェクトなソング&ダンスだったためか、以後のジャネットのコンサートは初来日公演を進化させたりリミックスさせたりした内容であったと言えるが、今回のツアーは彼女の代表曲「トゥゲザー・アゲイン」をテーマにしているだけに、ソロ・デビュー・アルバム『ヤング・ラヴ』(1982年)から起算したソロ・キャリア40年の総括的コンセプトとなっている。よって、ソング&ダンスのパフォーマンスとして一つの典型的なスタイルを確率して、アーティストだけでなくエアロビなど他の分野にも影響を与えた初来日以降のライヴ・パフォーマンスとは、元の発想自体が異なるコンセプトだ。
具体的には過去40年に放ったヒット曲や外せない名曲約40曲を1時間40分のパフォーマンスに凝縮させて、機関銃のように歌い踊るコンセプトである。その中にはブラックストリートなど他のアーティストと組んだ曲も含まれ、時にはリミックスしたインストを挟むコラージュも行うという徹底的に音楽性にこだわった内容になっていた。
それは、まさしくジャネット・ジャクソン本人によるジャネット・ジャクソン:ザ・ミュージカルの実演のようなすごさもあって、彼女が自分の作品をパフォーマンスしながらパッチワークのようにミュージカルに仕上げたかのような内容だった。知性的でありながらストリートのグルーヴも表現する4名の男性ダンサーとの絶妙な絡みもGREATだ。兄マイケル・ジャクソンやマドンナと同様、ジャネットはステージ上で歌だけを披露するパフォーマーではなく、激しいダンスを自己表現にしており、それがマドンナ同様コンサートのパフォーマーとしての年齢的なハンディ説の原因にもなっているが、57歳という年齢はダンサーとしては厳しくてもアーティストとしてはまだ若い部類に入るし、さすがに1990年の初来日に比べると年齢的ハンディがあるものの、4人のダンサーとのバランス感覚をキープしながら、クライマックスのサビのダンスなど絶妙に自己アピールしていた。
当日のコンサートは5つのパートにアンコールをプラスした内容。これは昨年からキープされている確固たる構成のようだ。オープニングでフラッシュバックように過去の画像が紹介された後に登場する彼女の黄金の水着のようなコスチュームは、どこかで見たような記憶があるのでよく考えたら、シンクロナイズド・スイミングの草分け的存在で水着の女王として人気を博したエスター・ウィリアムズが、MGMミュージカル『百万弗の人魚』(1952年)の噴水のシーンで着用した水着に似ているような気がする。考えすぎかも知れないが、全編にフィーチュアされたバックの映像も水の中のイメージが多かったような気もする。海外の評価にその手の指摘はないが、マイケル同様ジャネットもMGMミュージカル好きだから「あり」なのではと思う。
全編クライマックスばかりの1時間40分中でも最高のクライマックスともいうべき「オールライト/エスカペイド」から「リズム・ネイション」の過程において、マイケル・ジャクソンとの伝説のデュエット「スクリーム」がパフォームされると、もう涙、涙だった。本当に素晴らしい。映像で登場する兄とパフォーム出来るのはジャネットだけだ。この素晴らしい宝物を授かった彼女にはこの先もステージでこの曲を歌い続けてほしい、いや使命があると思った。
忘れずに特記しておきたいのは、今回のジャパン・ツアー・オンリーのボーナスとして、あのTLCがスペシャル・ゲストとしてオープニング・アクトを務めていることだ。言うまでもなく、90年代のミュージック・シーンで大ヒットを連発したR&Bグループだが、ラップ担当のレフト・アイが2002年に不慮の事故で亡くなったため、現在はT-ボズとチリの二人によるデュオ・ユニットになっている。
30年前と同じ体型を維持している関係でチリは昔のままだが、一時体重が増えていたブロンドのメイン・ヴォーカル、T-ボズもしっかり体を絞って、名曲「ノー・スクラブス」以下約10曲を熱唱してくれた。彼女たちの14年ぶりの来日公演が実現したことと、90年代のミュージック・シーンを駆け抜けた同期ともいうべきジャネットのスペシャル・ゲストとして同行した点で、感無量のライヴだったと思う。
とにかく、名古屋の最南端の埠頭まで出向いた価値のある素晴らしい来日公演だが、一つだけ気付いた点を指摘しておこう。ジャネットが単独で歌うバラードのパートで、主演映画『ポエティック・ジャスティス/愛するということ』(1993年)のテーマ曲とて歌った「アゲイン」を会場のオーディエンスと歌う時、名古屋のファンはシャイなのかな、今一会場からの歌声が小さかったのがちと残念だった。17日の大阪城ホールと20日のKアリーナ横浜のコンサートに行く皆さんは、ぜひこの曲をジャネットと一緒に大声で歌って下さい!
文:村岡裕司
この来日公演にあわせてライブを予習できるプレイリストも公開中!
こちらのプレイリストは今回のジャパン・ツアー最終日、3月20日のKアリーナ横浜公演の後に、セットリストに内容が公開される予定となっている。
ライブ会場ではオフィシャルグッズの他にCDも販売中。
最新ベストアルバムの『ジャネット・ジャクソン ジャパニーズ・シングル・コレクション-グレイテスト・ヒッツ-』を購入するとステッカーが会場特典としてプレゼントされる。