約1年半ぶりにニュー・アルバム『八面体』を完成させたマーズ・ヴォルタのインタビューをお届けします。
2011.03.10 TOPICS
約1年半ぶりにニュー・アルバム『八面体』を完成させたマーズ・ヴォルタ。前作の『ゴリアテの混乱』とはひと味違ったアコースティック色の強い穏 やかな方向性のアルバムには、静かなる狂気とでも呼びたい捩じれた世界観が広がっている。困難を極めた前作から一転した理由や、新作の制作プロセスについ て、ギタリストでプロデューサーであるオマー・ロドリゲスに語ってもらった。<インタビュー:村上ひさし> ――これまでのアルバムに比べてよりアコースティック色が強く、メロウな側面が強調されているようですが、この方向性に行くことになった経緯というのは? 自分としても探求してみたかった方向性だし、これまでのマーズ・ヴォルタのアルバムでも少なくとも1曲はアコースティック色や、そこを 出発点としている曲があったと思うんだ。いつも、一度そういった方向性を突き詰めてアルバムを作るのは面白いんじゃないかと考えていた。そんなところに、 ちょうど前作『ゴリアテの混乱』という非常にアグレッシヴなアルバムを作った後だったから、次はまったく正反対のこういった方向性のアルバムがいいんじゃ ないかと思ったんだ。もっと穏やかで暗いアルバムを作るのが、もっとも賢明な選択だと思われたんだ。 ――前作の制作ではそうとう苦労されたようですが、今回は? うん、今回はようやく穏やかな季節が訪れたって感じだよ。前作が冬だったとすれば、ようやく春がやってきたっていう感じかな。氷が溶け、花が咲き……それがこの新作なんだ。 ――普段より早く仕上がったとか? そうだね、アルバムの制作が自分にとっての挑戦であるのはいつも変わらないけど、全行程をすごく楽しむ事ができた。とりわけ『ゴリアテの混乱』の後だっただけに、すごく素晴らしい体験だと感じられたよ(笑) ――そんなに前作の制作はひどかった? もう悪夢でしかなかったよ。悪夢としか言いようがなかった。作っている最中から嫌で嫌でしょうがなかったし、逃げ出したかった。あのア ルバムを完成させた唯一の理由は、”俺って頑固者、やり始めた最後までやり遂げてやる!”っていう、そういう気持ちだけだった。”どんな問題が起ころう と、とにかくこのクソったれアルバムを完成してやるぞ”ってね(笑)。俺の音楽人生においても、最悪の経験だったよ。
――タイトルの『八面体』には、どういう意味が込められていますか? 確かセドリック(Vo)がコミックブックから見つけてきた言葉だったと思うんだ。彼はいつも気になる言葉やフレーズを書き留めているか ら。いつもそんなに深い意味を込めてタイトルを決めているわけではなくて、一番印象的な言葉をタイトルにしていて、今回はこの”八面体”って言葉が特に印 象的だったんだ。イメージがあったし、色があったし、あとから色んな偶然も発見したよ。俺たちのバンドが結成8年目だということ、このアルバムには8曲収 録されていること、この4年間は8人編成のメンバーで活動していたこと等々…。 ――”八面体”というからには、8人で共同体として作ったアルバムなんですか? いやいや、そういうわけじゃないよ。いつものように、俺が自分の思い通りに作ったアルバムだよ。俺が総監督であり、他のみんなに指示を 与えている。共同体として作った部分があるとすれば、セドリックと俺とで作業した部分かな。あと、メンバー8人のうち、今回はふたりには去ってもらってい て、現在は6人組。もちろん彼らに問題があったとかではなくて、俺のこのアルバムに対する新しいヴィジョンと一致しなかっただけのことなんだけど。 ――ソロ作品も多く発表されていますが、マーズ・ヴォルタ用もしくはソロ用と、どういう形で区別していますか? その時々によってかな。曲作りをしている時には、これはマーズ・ヴォルタ用とか、ソロ用とかって考えてないんだ。とにかく俺はいっぱい 曲を書くから、マーズ・ヴォルタのアルバムを作るぞって時になってから、書き貯めてきた200曲から選び出すって、そういう感じ。すごく好きな10曲を選 び出して、そこに全神経を集中する。その時の気分や興味の対象によって10曲を選ぶんだ。 ――アルバムは、並んでいる曲順に聴いてほしいですか? もちろん。いつもそのつもりで作っているよ。すべてのアルバムが一編の作品であり、そこには物語があり、展開があり、折り返し地点も含まれている。常にそういうことを意識しながら作っているんだ。 ――近々来日の予定は? 年内には考えているよ。12月あたりが有力だけど、それが無理だとしても来年1月には必ず実現させるよ。新しい曲も古い曲もプレイした いけど、新作を作ったことで、ライヴにも新しい局面を付け加えることができるのを楽しみにしているんだ。新作からもいっぱいプレイしたいし、昔の曲をア コースティックにしたりとか、色々考えているんだ。
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