L.I.T.特別インタビュー第2弾は、12月に初来日公演を行ってくれたブラック・キッズです。今回答えてくれたのはベース担当のオーウェンと
ドラム担当のケヴィン。10年来の友人だという2人が、これまでのバンド・ヒストリーを振り返ってのバンドの裏話を語ってくれました。
<インタビュー:青山晃大(Wonderkind)>
――地元のジャクソンヴィルには音楽の話の合う友達っていました?
オーウェン:僕たちお互いだよな(笑)
ケヴィン:ははは、そうだね。ジャクソンヴィルにも小さいけどシーンみたいなものはあって、僕たちは皆そこに属してた。みんなダウンタウンの近くに住んでて、ダウンタウンの中にあるクラブのダンス・パーティーに行って…。
オーウェン:そういうクラブではなぜだかUKものの音楽がすごく人気があって、すごく刺激的だったな。
――UKものの音楽というと例えばどういった音楽?
オーウェン:ニュー・オーダーとか、ザ・スミスとかだね。
――初めて自分たちの音楽を演奏するバンドを組んだのっていつ頃でした?
ケヴィン:17・8歳くらいかな。15歳くらいの時に一時期ビートルズのカバーバンドをやってたんだけど、それも短期間で終わって、自然と自分たちで作った音楽をやるようになったんだ。
――最初のバンドはブラック・キッズとは違うバンドですよね?
ケヴィン:そうだね。
オーウェン:10年くらい前のことなんだけど、その頃からみんな友達で、ケヴィンとレジーは最初から同じバンドをやってた。僕は違うバ
ンドを組んでたんだけど、兄弟バンドみたいな感じでお互いリスペクトし合ってて、いつも同じ場所で一緒に演奏してたんだ。それでそれぞれのバンドが解散し
たり、また新しく組んだりっていう風に入れ替わっていったりして…。今のブラック・キッズが出来たのは2年半くらい前のことだね。
――なるほど、ケヴィンは最初からレジーとバンドをやってたんですね。レジーの書く曲を初めて聴いた時は、どう思いました?
ケヴィン:うーん…(苦笑)。最初からレジーの曲は好きだったんだけど、その時は今と全然違うスタイルの音楽をやってたからなぁ。実は最初僕たちはスカをやってたんだ。」
――ははは!(一同爆笑)スカですか!?
ケヴィン:そう、スカだよ。90年代の終わり頃だったけど。
オーウェン:僕はスカはやった事ないな(笑)
ケヴィン:そうだね(笑)、オーウェンはずっとパンク・バンドにいて、僕たちはスカ・バンドだった。で、いつも同じ場所でプレイしてたってわけだよ。
――それから今みたいな音楽性になったのはいつ頃ですか?
ケヴィン:スカを何年かやった後に、そこから出来るだけ離れたいって思うようになったんだと思う。今思うと子供みたいなバカげた考え方
だったけどね。それで全く正反対の方向にいこうって感じで、シリアスな音楽を作るようになった。その当時はレジーとオーウェンが同じバンドでやったり、僕
も違うバンドで何年かやったりしてたんだけど、どれもダークな音楽を演奏してて、ブラック・キッズみたいなユーモアこそなかったけど、今思うとそれがブ
ラック・キッズっぽい音楽の始まりだったと思う。
――その頃は今みたいにキーボード2人ではなく、普通の編成だったんですよね?
オーウェン:そうだね、それぞれのバンドにキーボードが一人ずつだったよ。
――それが今の編成になったのはどういう経緯で?
ケヴィン:理由は分からないけど、レジーが最初にそのアイデアを持ってきたんだ。キーボードに自分の妹(アリ)を入れたいって言い出して…。
オーウェン:それでアリが一緒に連れてきたのが彼女の親友のドーンだったんだ。だからその当時はどんな子か全く知らなかった。
――その後、最初に今のメンバーで一緒にプレイした時の事って覚えてますか?
ケヴィン:ふふふ、もちろん。2年前の1月だったと思うけど、確かレジーの両親の家だったよね?
オーウェン:そう、売るかなんかで空っぽになってた家で、何にもなくって陰鬱な雰囲気だった(笑)
ケヴィン:その時に最初にやったのが”ヒット・ザ・ハートブレイク”と”ボーイフレンド”と”ハリケーン・ジェーン”だったな。”ヒッ
ト・ザ・ハートブレイク”と”ボーイフレンド”はその頃と今でほとんど変わってないけど、”ハリケーン・ジェーン”はそれから皆でああでもないこうでもな
いって意見を出し合って、(現在の形まで)完成するのにすごく時間がかかった。
――最初にそのリハーサルをやった時、手ごたえみたいなモノは感じました?
ケヴィン:そうだね。オーウェンは?
オーウェン:僕は最初すごくフラストレーションを感じた(笑)
ケヴィン:ははは(笑)、ホントに?
オーウェン:まぁ、何回かリハーサルを繰り返すうちに徐々に手ごたえを得るようにはなったんだけどね。
ケヴィン:僕の場合、最初にやった時から今までのバンドとは違う何かを感じたな。女の子が入ったっていうのが関係あるのかは分からないけど、特別なケミストリーみたいなモノが確かにあったと思うよ。
――それから07年に、ダウンロード限定でフリーEP『Wizard Of
Ahhhs』を出したと。その時に、今みたいな人気を得られるって想像してましたか?
オーウェン&ケヴィン:ははは、まさか!(笑)
ケヴィン:ホントに驚きだったよ。もっと時間をかけて、アメリカの小さいヴェニューをドサ回りでツアーして、小さいインディ・レーベルとサインしてっていう風に、少しずつ進んでいくだろうと思ってたから。
オーウェン:そうだね。もちろん最初から自分たちのやってる音楽に対して自信はあったけど、7~8年いろんなバンドでやってきてもなか
なか前進できなかったから。諦めてたわけじゃないけど、そう上手くはいかないなぁとは思ってた。だから今みたいにたくさんの人が自分たちの音楽を聴いてく
れるなんて想像もしてなかった事だよ。
――そのEPがPitchforkで好評価を獲得したのが直接的なきっかけになってると思うんですが、その時はどう思いました?
オーウェン:実はその時、アメリカを離れてイギリスにライヴをしに行ってて、戻ってきて飛行機を降りた時にちょうどPitchfork
に掲載されたって事を聞いたんだ。それから、例えばMyspaceのページを見てくれる人が20倍くらいに増えたりして、状況はガラっと変わったね。
――それでは最後の質問です。これからアーティストとして、どういうキャリアを積み重ねていきたいですか?
ケヴィン:例えば70歳とかまでブラック・キッズをやっていけるなんて思わないし、いつまで続けられるかなんて分からないけど、今は出来る限りブラック・キッズとして良いアルバムを何枚も作り続けていきたいな。
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