今回、北は札幌から南は福岡まで、12日間をかけて日本縦断ツアーを行ったザ・ミュージック。フジ・ロック・フェスティバル08から数えてわずか
3ヶ月での再来日だが、東京公演初日はソールド・アウト。他の公演もほぼ完売状態という大盛況で、日本での彼らの人気の高さを改めて実感する事ができた。
「皆
この3ヶ月の間にアルバムを聞き込んでくれて、新作からの曲に深い思い入れを持ってくれたんだと思う。”ストレングス・イン・ナンバーズ”や”ザ・スパイ
ク”は”ザ・ピープル”とか昔から人気のある曲と変わらないくらい良いリアクションをしてくれて、とても嬉しかったよ。」
そう語るのはギタリストのアダム。新作『ストレングス・イン・ナンバーズ』リリース後初の単独ツアーという事もあって、場内は熱心なファンで埋め尽くされ、どの曲もイントロが始まるだけで大きな歓声が上がるほどの熱狂に包まれていた。
横ノリのうねるグルーヴを主体とした前二作からの楽曲と、エレクトロ・サウンドを大胆に取り入れダンス・ミュージックへと傾倒した新作
からの楽曲のビートの違いは、生で聴くとより一層明確になる。観客の楽しみ方も、”ウェルカム・トゥ・ザ・ノース”や”ザ・ピープル”といった過去の曲で
は会場全体が一体となって拳を振り上げたり合唱したりしているのに対し、新作から披露された曲では各々がもっと自由気ままにダンスを楽しんでいるといった
印象。しかし、
「ほとんどのダンス・ミュージックはビートばっかりを強調してメロディが欠けてると思う。オレたちの場合はそうじゃなくて、ダンス・ミュージックをプレイする時でもエモーションを伝えるメロディを一番大事にしてる。」(ロブ/Vo.)
という言葉の通り、ロブのよく通る甲高い歌声とアダムの多彩なギター・プレイが一貫して楽曲の中心に座ることで、全体的な統一感を決して損なわず、どの曲からも体と心の両方に直接訴えかけてくるような激しいエモーションが伝わってくる。
そして、ザ・ミュージックのライヴといえば忘れてはならないロブのダンスは、以前に比べると幾分洗練されていたものの相変わらずとても
扇動的で華があり、彼が動き回るたびに会場の温度が一気に上がるようだ。以前までのライヴとは異なり、新作からの多くの楽曲でギターを弾きながら歌う姿も
印象的だったが、ロブに「ギターを持って歌うのってどんな気持ち?」と質問するとこんな答えが返ってきた。
「ギターを弾くのは全然気にしてないよ。オレがギターを持たずに動き回って歌ってる方がバンドの本領が発揮出来るっていうのも分かってるけど、曲によってはもっとビッグなサウンドにするためにどうしても音数が必要になってくるからね。」
とても理知的で、バンドとファンの事を真摯に考えているのが伝わってくる言葉だ。今回の日本公演は現在のバンドの好調ぶりを伝える素晴らしいライヴだったが、彼らは現状に満足することなく、まだまだ先を見据えている。
「ロブにもっと自由にダンスしてもらうために、今後サイド・ギタリストに手伝ってもらう事も考えている」(アダム)
来年にはまた日本に戻ってきてくれるというから、その時はきっとまた、さらに大きく成長したバンドの姿を見せてくれるに違いない。
(文:青山晃大(Wonderkind)
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