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フジロックで来日したTATE独占インタビュー

2011.03.10 LIVE

  Special
Interview 09

フジ・ロック・フェスティバルで日本初お目見えとなったジ・エアボーン・トクシック・イベント(以下TATE)。ロサンゼルスを拠点に活動する彼ら は、噂に違わぬライヴ・バンドっぷりをオーディエンスに見せつけた。ステージ衣装は黒で統一し、一見、すかした感じにも見えるが、とんでもない! すかす どころか、その逆。ホワイト・ステージを囲む緑の山々に向けて音が放たれた途端、ステージ上の5人のテンションも急上昇。もったいぶったところは一切なし の、全身全霊ライヴをぶちかましてくれた。それでいて、どこか憂いを感じさせるのは、渦巻くダイナミズムの中でも、細いながら鮮烈な光を放つ繊細なメロ ディのせいだろうか。なるほど、彼らがイギリスでも支持を集めている理由はここにあるのかもしれない。

フジ・ロック・ウィークエンドが明けた月曜日、TATEの5人に話を聞いた。なんでも、中国系アメリカ人のスティーヴン・チェン(g) は父親が日本に家を持っていてしょっちゅう行き来しているらしく、「今夜はスティーヴのお父さんに東京案内してもらうんだ!」とメンバー一同大張り切り。 ちなみにスティーヴ「父親は日本語OKだけど、僕は全然ダメなんだ」と苦笑い。でも、写真で見るより100倍イケメンだから許してしまおう!

ライヴって、1,600人もの観客とカタルシス的性体験を味わうようなもんだよ

―― 初来日で、いきなりあんな山の中に連れて行かれてビックリしませんでしたか?(笑)

マイケル・ジョレット(vo & Guitar/以下マイケル):映画『ロスト・イン・トランスレーション』みたいな感じを想像していたけど、違ったね! 実際には、大きな山々に囲まれた会場でさ。

―― スティーヴンはすでに来日経験があると聞いているのですが・・・。

スティーヴン:もう15回は来てるね。短期間の滞在ばかりだけど、うちの両親がよく来日する関係で、僕も頻繁に訪れるんだ。未だに日本語を覚えない僕のことを、うちの父親は怒るんだけど(苦笑)。実は今回、父が皆を案内してくれる予定なんだ。

―― いい案内人がいてよかったですね(笑)。

全員:うんうん(笑)。

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―― フジ・ロックでのお客さんの反応は、どのようにとらえていましたか?実は、正直心配してたんですよ。というのも、新人であの大きなホワイト・ステージに立 つのは比較的稀なことなので。でも実際お客さんは結構入ってくれたし、あなた達も非常にいいライヴをやってくれたのでとても安心しました。お客さんの反応 は期待通りでしたか?

マイケル:僕の場合、演奏を始めると、演奏中の記憶がいつも曖昧なんだけど、楽しいライヴだったよ。歌詞を音声的に捕えて楽曲を覚えて る人が多かったのが興味深かった。一緒に歌ってくれるとは予期していなかったから、嬉しかったね。あと、日本人って皆とても礼儀正しいんだね!

スティーヴン:うん。日本人は礼儀正しいんだよ。
アナ・バナブルック(key & viola/以下アナ):日本では初ライヴだったのに、あんなに大きなステージで演奏することができて本当に興奮したわ! お客さんも大勢集まってくれたし。

―― 以前マイケルと電話インタビューした時に「ライヴの場では皆に踊って欲しいし、楽しんで欲しい。それが一番だから」と話していましたが、昨日はそれを体感 しました。このアルバムを本国でリリースしてから約1年、この5人でライヴを始めてからは3年くらい経ちますが、自分達で「演奏力が上がっているな」とか 「ステージ力が向上してるな」と感じる瞬間はありますか?

スティーヴン:もちろん!みんな、どう思う?

ダレン・テイラー(ds/以下ダレン):CDと違って、ライヴでしかできないことって沢山あるからね。例えば、アドリブを交えながら楽 曲の尺を延ばして、観客とのやりとりがあったり。それから、その曲の違う部分を抜粋して足すこともある。あと、曲中でドラム・ソロを入れたりして(笑)。

ノア・ハーモン(b/以下ノア):ベース・ソロも(笑)。

スティーヴン:曲中で、突然スミスの曲を挟むこともあるし(笑)。でも、それって、ライヴの醍醐味だからね。

マイケル:そうそう(笑)。新曲やカヴァーものをやることもあるし。

ダレン:同じ曲を何度も続けて演奏していくうちに、こういったアイディアが浮かんでくるんだよね。昨年8月から今年の8月までの1年間でライヴは200本もやった。少しづずアレンジを加えて演奏する方が自分達も楽しめるし、楽曲を更に発展させることができるから。

マイケル:僕らのライヴはまさに興奮のるつぼ。「今夜は人生最後の日」というくらいの気持ちで全力投球で臨むから、毎晩演奏内容が違う んだ。もう自分自身を見失うほど無我夢中だからね。ライヴ中に顔を殴られるかもしれないし、顔から地面に叩きつけられるかもしれない。そして、まるで女性 を口説くような瞬間もある。いつもライヴ後は「これから一体何処へ行けばいいんだ?」って感じで(笑)。1,600人もの観客とカタルシス的性体験を味わ うようなもんだよ。

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―― (笑)昨日もステージ上ではみんな黒づくめだったんですけど、今日もまた黒ですね。「黒」い洋服は、あなた達のユニフォームなのですか?

マイケル:ある意味ではね。これには2つ理由があって、まず最初に自分達が演奏する音楽を引き立てるために”黒子”になりたい気持ちが あって。僕らは”音楽”の裏方に徹して、自分達の姿は消すべきだと信じてるんだ。というのも、自分の個性よりも観客のために演奏する音楽の方が大事だと思 うから。もう1つは、テレビのホワイト・ノイズ(白黒の細かい斑点)みたいで、美的に見ても白黒で決めたらカッコいいと思って(笑)。

ノア:クラッシュみたいにね。

マイケル:うん、クラッシュみたいに(笑)。

―― 最近揃えて洋服を着るバンドが少ないから新鮮ですが・・・、黒子ではなくて、逆に目立ってると思います(笑)。

アナ:(笑)それに、私達って「ジーンズ&Tシャツ」系バンドじゃないし。ライヴに集まったお客さん達に自分達が強い信念を持って続けてきた音楽を伝える時には「敬意や意気込みを表して、キチンとした衣装で演奏したい」という気持ちもあるの。

マイケル:イメージ的には、殴り合いの喧嘩をしてるオーケストラの団員(笑)。

ダレン:1,600人の観客と愛し合う団員(笑)。

現実と夢の境界線が見えなくなって、まるで完全に正気を失った感じだね

―― 先ほど『1年間で200本位ライヴをやってきた』と話していましたが、 この1年ってこれまでになかったくらいある意味濃密な時間を過ごしていると思うんです。バンドとしてもそうですし、自身の人生を考えたところでもミュージ シャンになって、プロになって、ツアー生活を体験して・・・とそれまでの生活からは凄く変化してると思うんですけど、それぞれこの1年を振り返ってどんな 1年でした?

ダレン:自宅で過ごす時間が激変したね。それから、昼間の仕事を辞めて、音楽の道に専念するようになった。あと、1年前よりずっといい服を着るようになった(笑)。

スティーヴン:うん、そうだね。

アナ:アハハハ(笑)。

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―― 新しいお仕事は楽しんでますか?

ダレン:もう最高!こうして日本にも来れたし(笑)。来日前は韓国に行ってきて、この後はオーストラリアへ行く予定。こういう風に世界 中を旅することができる楽しい仕事なんて滅多にないだろ? 俺、ミュージシャン活動を「仕事」とも思ってないんだ。メチャクチャ楽しいから。

アナ:ほぼ毎晩ライヴが入っているから、私は24時間ずっと大勢の男の子たちに囲まれてツアー・バスで生活してる感じ。1年前は、まさ か日本のような異国の地を訪れるほど上手くいくとは、夢にも思っていなかった。なんだかジプシーの幌馬車に乗って、5人で世界中を駆け回ってるような気分 よ! いい意味でいろいろ大変なこともあったったけど、凄く楽しい1年だった。

―― もう1人くらい女の子がいればいいなぁ、って思ったりしませんか?

アナ:うーん。でも、女性スタッフやメンバーのガールフレンドや女友達が参加することもあるから、大丈夫。

―― バンド内で女の子が1人いる場合、お姉さん的存在になるか、妹的存在になるかのどちらかだと思うのですが、アナの場合は?

アナ:その時によるわね。大抵は”妹的存在”だけど、みんながちゃんとしてくれない時は私が”母親役”になるから(笑)。アハハハハ(笑)!

―― ノアはどうですか、この1年を振り返って。

ノア:俺はほろ馬車育ちのジプシー野郎だしなぁ・・・。

全員:(爆笑)!

ノア:っていうのは冗談。「ノンストップの大パーティ」みたいで、最高に気に入ったね!

―― でも、パーティがストップしたときのことを考えると、ちょっと怖くなりません?

ノア:そうだね。怖くなるけど、考えないようにしてる。このパーティがいつでもストップし得ることはメンバー全員が理解してるけど、こうやってミュージ シャン活動を続けられることを凄く感謝してるんだ。というのも、考えても俺達にはどうしようもできないことだし。俺達は最高の楽曲作りとライヴを見せるこ とに全力投球してるんだからさ。

―― ごめんなさい。ツアーが終わって帰宅した時、”燃え尽き症候群”みたいになりませんか?という意味だったんです。

ノア:俺達の場合、ロサンゼルスに戻ると、よっぽど会わなきゃいけない時以外は集まったりもしないから・・・

マイケル:そんなことないだろ?(苦笑)ほぼ毎日、しょっちゅう電話してるじゃん(笑)。

ノア:うん。まぁ、そうだけど・・・、とにかくロスに帰ると、ひたすら自宅で寝て、リラックスした時間を過ごしてるってことで。3ヵ月分の睡眠不足を4日間で取り戻す感じだよ。

スティーヴン:アナやダレンが言っていたように、僕も昔から「いろんなところに行きたい」と思っていたけど、ある日はプラハ、翌日は韓 国と、なんだか(世界中を駆け回る)スパイになった気分(笑)。目まぐるしく様々な異文化を体験できるのは面白いね。例えば1週間で4、5ヵ国周ることも あるから。実は先週スロヴァキアにも行ったんだ。それから、このバンド活動で「新たな家族」を得たような気がする。普通これまでの人生で一番長く一緒に過 ごしてきたのは「自分の家族」なのに、突然家族以上に長時間一緒に過ごす人達がいるって不思議じゃない?もう今やこの仲間は「第2の家族」だね。

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―― そういえばスティーヴンは、最初このバンドに加入する際「キーボード担当で入ってくれ」って言われたのに、「ギタ-をやりたい!」って主張したそうですね。その時ギターは弾けたんですか?

スティーヴン:アハハハ(笑)。ずっと昔からベッドルームでアコギを弾いたり、ギターでちょっとした曲を書いたりしてたんだ。本格的に ギタリストとしてバンドに所属してたことはないけど、過去(TATE加入以前)に1、2回ちらほらライヴで披露したことはあった。自宅ではアコギを弾くこ とが多かったから、このバンドでギターを弾くことになった時、僕のエレキ・ギターは埃をかぶってたけど(苦笑)。

―― 彼をギタリストにして良かったですか?

マイケル:勿論!スティーヴンはとてもいい友人だし、ギタリストとしても素晴らしい。それに、ロックをちゃんと理解してるしね。ロックは”高尚な芸術”じゃなくて、”ポップ・アート”だから。

―― マイケルはこの1年を振り返ってみて、どうですか?

マイケル:現実と夢の境界線が見えなくなって、まるで完全に正気を失った感じだよ。いつも機内移動中か寝てるかで、目が覚めた瞬間、突 然何千人もの観客が集まったステージで演奏し、その後気づけば自分は空港にいるような生活の繰り返しだから。このバンド・メンバーは俺が見た長い長い夢に 登場するキャラクターみたいで・・・(笑)。いや、これは冗談じゃなく、ホントに正気を失い、気がオカしくなった人になった気分で。普通の生活を送ってい た頃はどんな感じだったか、思い出そうとしている自分に気づくよね。「こういう時、昔はどう思ってたっけ?」って。スティーヴンもさっき言ってたけど、僕 らは家族みたいなんだ。正直な付き合いだからこそ、口喧嘩したり、感情をぶちまけることもある。一方で、その家族愛から、他のメンバーを守ったり、助けた りすることもあるんだ。一緒にいる時間がもの凄く長いから、ある種”ギャング”みたいで。例えば、ダレンとか、ノアに・・・いや、こいつらはいいとし て・・・というのは冗談だけど(笑)、バンド仲間に激怒するようなことをするヤツはただじゃおかねぇ。とにかく、話は戻るけど、この1年は正気を失うほど クレイジーな1年だったよ。

<インタビュー&構成:赤尾美香>

< 後編に続く >
後編では、よりディープにメンバーのキャラクターに迫ります。TATEで1番のピーター・パンは誰だ!?アナが明かすTATEの真実に注目です!そして、マイケルの新作構想は?

男性は単純かつ傷つきやすくて、女性は強くて現実的だから

―― 先の電話インタビューでマイケルは、最近書いた曲の話をしてくれましたが、ツアー中にも曲を書いているということですね?

マイケル:うん。新曲レコーディングが待ちきれないよ。実はもう既にライヴでも新曲を演奏しているけど。早く5枚くらいアルバムを出し たくて(笑)。この世にもっと自分達の作品を発表したくてたまらない。昨日CDショップで久しぶりに自分達のデビュー・アルバムを聴いたんだけど、今の作 風と違うから「あれ、俺達っぽくないサウンドだなぁ」って、なんだか不思議な感じだった。バンドってこういう風に当初制作した作品から離れた音楽性に辿り 着くこともあると思う。音楽って徐々に変化を遂げていくから。でも、ジャケットは今でも凄く気に入ってる。

―― 痛そうですよね。

マイケル:うん。もともとあった鳥の絵に、矢と血を足したんだ。この鳥は死ぬ運命なんだ。もとは(ロンドンの)テイト・モダン・ミュー ジアムで観たシュールレアリスム系の木炭画からヒントを得た。壁に描かれた工業都市の木炭画に、矢に刺さったホンモノの鳥が刺してあって。いろんな質問を 投げかけたくなるような作品に触発されて、このアートワークを作ったんだ。というのも、自分達のジャケ写を目にした人たちにいろんな質問を投げかけたかっ たからね。

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―― 今の時代、段々ジャケットの意味が薄れているような気がしています。音楽をダウンロードするようになるとジャケットは基本的にはついてこない。昔みたいに レコード屋さんで”ジャケ買い”する機会も人も激減しているでしょう。と同時に、音楽のあり方も変化しているように感じることがあります。

スティーヴン:アルバムはもともと収録曲が織り成す1つのストーリーとして制作しているから、曲をバラ売りされるのは確かに寂しいし、 時代の変化を感じる。でも、どの時代にも常に変化は起きるもので、新たな発見が次々と生まれていくもんだよ。インターネットを経由して新たな音楽の販売方 法が生まれたけど、それを受け入れることで世の中の人々と繋がる新たな道も手にすることができた。

ダレン:俺は今でもアナログ(LP)を買い続けてるよ。というのも、アートワークは手にとって触れられるものであるべきだと信じている から。確かにインターネットで楽曲購入してもジャケットを目にする事はできるけど、手にとってアナログ盤やCDの封を切ってブックレットに触れたり、クレ ジットをチェックする行為はできないからね。俺はそういうことを大切にしているから、俺は君と同意見。ちょっと寂しい気がするね。スティーヴンが話したよ うに、変化は常に起こり続けるから、柔軟に対応していきたいと考えてはいるけどさ。

アナ:でも、インターネットのプラス面はCDショップやメディアやレコード会社を挟まずに、誰もがアクセスして、自分が気に入った音楽を好きなだけチェックできるところ。ずっと民主的なシステムだと思うな。

―― それも一理あります。ただ、音楽やアートワークに限らず、簡単に手に入るものって簡単に失っちゃうような気がするんですね。昔だったら例えばLAのアメー バ・ミュージックで5時間かけて掘り出したものはすごく大事にしたくなる。でも、インターネットでササッと買い物できたら、その作品に対する愛情が薄まっ ちゃうような気がして。そうなると音楽を作るミュージシャンとしては、見つけてもらっても大事にしてもらわなきゃいけないから、ハードルが高くなっている ような気もするんですよね。

マイケル:Yes とNo両方かな。レコード会社にとっては特にセールス面でのハードルが高くなっていると思うけど。100万枚売れたアーティストも今ではCDセールスが 20万枚に落ちているし。聴き手は100万人いるけど、CD購入者が減ってるんだよね。レーベル側は打撃を受けてるけど、音楽を制作して演奏しているバン ド側としてはそれほど変わらないね。ツアーやTシャツ等のマーチャンダイズ・ビジネスやCMや映画での楽曲使用でもお金は入ってくるから、むしろツアーを 中心にしているインディ・ロックにとっては黄金期なんじゃないかな。10年前よりライヴ会場に足を運ぶ人は増えてると実感してるし。

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―― そして、ライヴができないバンドは消えていく、と・・・

全員:(爆笑)

ダレン:もし実名が知りたかったら、後でどのバンドがダメか教えてあげようか?(笑)

マイケル:(ライヴができないバンドが消えていくのは)音楽界にとっていい事だと思うよ。

アナ:かつては、CDショップで見つけた10枚の作品のうち1枚いいアルバムを見つけてたけど、今はインターネットで100枚チェック したうち1枚いいものが見つかればいいかな、って感じ。インターネットでは全世界から数え切れない程の作品から選ぶことになるけど、その作業って基本的に は昔とあまり変わらない気がする。

―― 話がずれましたが、新しいアルバムのことを少し教えてください。電話取材では「最近書いた曲には母国に帰還した兵士を描いたものや聖書を題材とした楽曲が ある」と話していましたが、今は世の中にいろいろなテーマがありますよね。あなたは、今後どういったテーマを取り上げていきたいですか?

マイケル:うん。いろいろアイディアはあるね。あと、何故かわかんないけど、次作では「反逆」をテーマにした楽曲も予定してる。あるこ とに対して抵抗したり、反抗する状態を描いてるんだ。今回のデビュー・アルバムは僕の人生におけるある特定の時期を描いたパーソナルな作品だけど、次作は きっと全く違う内容になるね。でも、コンセプト・アルバムにはならない。いつか(コンセプト・アルバムを)制作したいとは考えてるけど。

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―― 他のメンバーに歌詞の内容について説明したりするんですか?

マイケル:ノー(笑)。

全員:(爆笑)

ダレン:俺達、未だにわからない曲がいくつかあるし・・・(笑)。

アナ:物語のように展開していく歌詞が多いから、大半の楽曲は聴けば大体の歌詞内容は解るけどね。例えば”サムタイム・アラウンド・ミッドナイト”なんかは、あの歌詞から何が起きた話を描いてるのか解ると思う。

―― 私はその”サムタイム・アラウンド・ミッドナイト”が、すごく好きなんです。私の周りでこういう人がいたら「やめておけ」と一言言いたくなるような感じで。

マイケル:アハハ(笑)。このデビュー・アルバムを聴いた人からの反応に、逆に僕は驚かされるんだ。例えば「ダークな内容だね」とか 「パーソナルなアルバムだね」とかの意見を貰うけど、これらの曲は誰もが人生のある時点で友人らと話すような会話内容だと思ってる。アルバムでは、嫉妬、 喪失感、絶望感、人生において間違った選択をしてしまった人が自暴自虐になる姿などを描いてるけど、こういうことって人間なら誰でも経験することだと思 う。この世には現実からはかけ離れた陳腐な決まり文句もあるけど。

―― 私の場合は、「暗い」っていうより、「やっぱり男の人はナイーヴでロマンチックなんだな」という思いの方が大きかったです。

マイケル:その通り! 男性は単純かつ傷つきやすくて、女性は強くて現実的だから。女性はひとりひとりが「自分の世界観」を持っているけど、男性ってテストステロン(注:男性ホルモンの一種。モテフェロモンとも呼ばれる)のせいか、みんな大体似てるよね(苦笑)。

ダレン:そうそう。男性は「食べる、寝る、戦う」のどれか(笑)。

アナ:うん、その通り!! 男性6人とツアー・バス生活を送ってる私にはもの凄く解る(笑)!

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―― この中に「ピーター・パン」はいますか?

男性陣:アナ、ホントのこと言っていいぞ!!(笑)

アナ:ロック・バンドにいる男性は、誰もが大人になりたくはないんだと思う(苦笑)。

男性陣:そりゃ、いい答だー(爆笑)!!

―― 言えてます!

アナ:実際には14歳ってわけじゃないし、みんな20代だから、もう子供じゃないんだけど(笑)。

自分達が演奏したくなり、大勢の人達が聴きたくなる
そんな曲を沢山録音することが、バンドとしての哲学なんだ

―― このツアーはいつまで続くんですか?

スティーヴン:今年のクリスマス頃までかな。

―― レコーディングはその後ですか?

マイケル:うーん、それはまだわからない。というのも、先が読めないライフスタイルに変わっちゃったんだよね。今後どれだけの収入を見 込めるのか、来年まで誰が残るのか、全てがクエスチョン・マーク。こういった細かいことは気にせずに「禅の心」で自然の成り行きに任せるしかないんだよ ね。先のことは何も予期できないから。勿論レコーディングしたいと考えているけど、もしかしたらツアーが更に続くかもしれないし、日本に再来日してるかも しれないし。僕らの力ではどうにもできないから、「多分ね」と答えておくよ。

―― ちなみに「まだ考えてない」かもしれませんが、次に一緒に仕事してみたいプロデューサーなどはいますか?

マイケル:誰もいないよ。次のアルバムはデビュー作を焼き直すつもりは全くないし、だからといってコンセプト・アルバムでもなければ、例えば”ブラジリア ン・ジャズ”みたいな特定のジャンルをやるつもりもない。特定の規則を自分達に課したくはないんだよね。次作の目標は自分達がライヴで是非演奏したくなる ような楽曲で、大勢の人達が聴きたくなるようなものを沢山録音することなんだ。これがバンドとしての哲学だから。デビュー盤も沢山の楽曲から絞っていった んだ。当初あった100曲をライヴで演奏していたから、僕らはアルバム発売前からライヴで観客が一緒に歌っていた10曲を収録した。次もライヴで演奏した 時にオーディエンスがノってくれた楽曲を選びたいね。

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―― わかりました。これが最後の質問です。今回のインタビューはレコード会社のオフィシャルHPに掲載される予定です。フジ・ロックであなた達を見た人達が見 に来たりもするので、是非そういう人に、よりTATEのことを知ってもらいたいと思います。メンバーそれぞれが隣にいる人に「聞いてみたかったけど、聞く 機会がなかったようなこと」を質問して、答えて貰ってもいいですか?

マイケル:ダレン、12歳だったころの自分自身に「当時は知らなかったけど、是非ためになることを1つアドバイスしたい」と思うことは? 音楽と関係ない話でもいいから、12歳の頃の自分に10分アドバイスできる時間を貰ったら、何て言う?

ダレン:「カッコつけたりすんなよ、このガキめ! そんなことしたって何もいいことないから、他のことに専念しろ」って伝えたい(苦笑)。

アナ:私からノアに質問。これまでの人生で体験した中で、最も”ロックン・ロール”した瞬間は?

ノア:うーん・・・多分、これまでの人生全てが”ロックン・ロール”な瞬間の連続だったと思う。

男性陣:おいおい、マジかよ!?

ノア:スティーヴン、君はギタリスト?それともミュージシャンなの?

スティーヴン:僕は”ギター・ヒーロー”でも”ギターおたく”でもないんだよね。昔からとにかく「曲ありき」で、いい曲を作るためな ら、どんな楽器を使ってもいいと信じてる。一番大切なのは「いい楽曲」だけど、自分が”ギタリスト”か”ミュージシャン”かを聞かれたら・・・ミュージ シャンかな。楽曲内の不必要なところまで「絶対ギターを入れたい!」なんて変なエゴはないからね。

ダレン:うーん・・・俺、何故かアイドル雑誌みたいなアホな質問しか浮かばなくて・・・アナ、この世界中で君が最終的に落ち着きたい場所はどこ?世界中で好きな場所を自由に選んでいいから。

アナ:うーん、この世界中でまだ私達が行ったことない場所って沢山あるじゃない?

ダレン:まぁ、そんなキビしいツッコミすんなって(苦笑)。

アナ:その質問には2020年、2030年、もしくは2040年頃にならないと答えられないわ。でも、今のところは現在住んでるロサン ゼルスが大好き。凄くいい音楽シーンにいる自分達はとてもラッキーだと思うし、いいバンドが切磋琢磨して成長し合ってるから。どのバンドも個性的で誰の真 似もしていないし、自分達の演奏に全身全霊を込めてる。このところ、地元で過ごす時間も殆どないけどね(苦笑)。このままずっとロスに住み続けるかも。

スティーヴン:マイケル、このバンドに加入する以前の君はライターだったよね?執筆業はもう忘れてロック1本で行くの?それともロックン・ロールした後に執筆業再開を考えたりしてる?

マイケル:いい質問だね。バンド加入前に独りで長時間執筆したり読書をしていたお陰で、僕の音楽に対する視点や考え方は大きく変わっ た。このバンドは”悪魔と取引”するようなことがいろいろあったけど、ライターとしての経験がなければ、きっと上手く対処できなかっただろうし、ここまで 頑張ることもできなかったと思う。先のことは分からないけどね。

<インタビュー&構成:赤尾美香>