あらゆる常識を軽やかにすり抜けていき、今を生きる人たちから共感を集める存在。imaseが音楽制作開始からわずか1年でメジャーデビューを果たし、同世代から愛され次世代に影響を与える存在にまでなったことには、明確な理由がある。11月9日にリリースされる1st Digital EP『POP CUBE』にはデビューから1年のあいだに制作した7曲を収録。リリース日に22歳を迎えるimaseが自然体のまま作り出す音楽からは、「今」という時代を表すキーワードをいくつも見つけることができる。EPの全体像と、各曲について、imaseに語ってもらった。

 

Digital EP『POP CUBE』から見える、時代性を映し出す「imaseらしさ」とは 

 

――1st Digital EP『POP CUBE』が完成しました。どんな手応えを感じていますか?

 

『POP CUBE』というタイトルで、各曲をキューブの面に見立てた形を意識しているのですが、今までリリースしてきた曲と新曲2曲、どれも違う系統なのにどれも僕流のポップスだと言えるものに仕上げることができました。EPを通して聴いていただくことでimaseを全部知ってもらえて、僕らしさをわかってもらえるのかなと思います。

 

 

――この1枚で、imaseさんの異なる7面を見せることができたと。

 

「7面」、いい表現ですね。そうですね、7面見せられました。曲ごとに変化させることは意識的にやってましたね。どうしても自分なりの癖みたいなものは出てくるんですけど、前の楽曲とは違う一面を見せた方がリスナー側も聴いていて楽しいかなと思いますし、僕としてもやっていて楽しいので。いろんな人に届けられたらいいなと思っているからこそ、いろんなタイプの楽曲を作ろうという意識もありました。

 

――imaseさんらしさのひとつとして、まずその歌声があると思うんです。裏声を使って脱力感のあるムードを作り出しながら、絶妙な塩梅で地声を混ぜ合わせる。この1年いろんな楽曲を制作してきて、そういった歌声でどんな音楽的個性を生み出せていると思いますか?

 

もともとR&B色の強い音楽が好きだったんですけど、自分の声はそこまで深みも艶やかさもないですし、模索していく中で、自分の作りたいチルい雰囲気やエモーショナルな楽曲には裏声が合うのかなと見つけた感じでした。それをTikTokやInstagramのReelsでVlogとかに使ってもらうことが多いので、自分のイメージ通りの伝わり方をしているし、そうやって受け取っていただけていることがすごく嬉しいです。最近は音数が少ないものが好まれる傾向もある中で裏声は音と被らないという意味でもいいですし、CMなどの映像でセリフと被らないという意味でも相性がいいのかなと思います。

 

 

――「チル」はimaseさんの世界観を表すひとつのキーワードだと思うのですが、imaseさん自身は「チル」とは具体的にどういうものだと感じていますか。

 

今はコロナ禍というのもありますし、忙しなさを感じたりする場面もある中で、楽曲を聴くことによって休息を取れるといいますか。忙しなさを意識の外に出すことができて、落ち着くことができる。現実逃避、休息の場、そういったものがチルなのかなという気がしています。

 

――チルを求めるけど、熱中するものには熱中する。楽したいけど、手にしたいものは手に入れられる方法をしっかりと模索する。そのimaseさんの姿勢が近い世代からも共感を得ているのだろうなと思います。

 

バランス感があるのか、すべてが矛盾してるのか……僕的には矛盾してるような気がしてるのですが(笑)。頑張りたいと思ってるんですよ。自分の中で常に更新したいという気持ちはすごくあって、前の曲よりも最新の方が評価されてほしいしクオリティも上げたいので、自分の個性をいかしつついい曲を作るということにおいてはかなり考えます。でも、結構怠惰です(笑)。なかなかやる気スイッチが入らない。あと、怠惰って言っといた方が許されることが多いかなって(笑)。

 

 

――imaseさんが岐阜の自宅で音楽を作りながらメジャーデビューを果たし、その後も楽曲が立て続けにSNSで人気を得ている姿を見て、同じように楽曲制作してSNSに投稿するようになった人が増えたと思います。そのあたりの実感はいかがですか?

 

真似してくれているなという動画を見かけたりします。嬉しいことです。でも僕自身、音楽を始めてそんなに経ってないので、まだ自分のことで手一杯といいますか。音楽を始めて、知らぬ間に、気づいたらここにいるみたいな感じなので(笑)。

 

――文化の発展において「真似したくなる存在」「僕、私にもできると思わせてくれる存在」というのは大切で、かつてはたとえば3コードで鳴らすパンクバンドがそれを担った時代があったけど、今の時代のおいてはimaseさんがそのポジションのひとつにいるのだろうなと。

 

ありがたいです。投稿してみないことには何も変わらないと思うので、不安な要因があっても投稿したかったらすればいいと思うし。シンプルにただ作って自分で聴くのも悪いことではないので、そうしたいのであれば完成度の高いもの作ればいいと思うし。そこはそれぞれが勇気を持って自分で選択をすればいいのかなと思いますね。

 

 

――フル尺制作に至っていないものも含めて、楽曲のカケラをたくさんSNSに投稿し続けていますよね。自分の中で「これはバズりそう」みたいな感覚を明確に掴めるようになってきました? それとも見え切れてないままですか?

 

見えてきては壊れて、見えてきては壊れて、結局気づいたら方程式など何も残ってないです(笑)。バズった曲はどれも作り方が違うんですよ。なので何が共通点だったのかをずっと考えてます。「絶対にこれは伸びるだろう」と思ったものの50、60%くらいは伸びているので、感覚と数字が比例しているのかなとは思っていて、それはたしかにすごくいいことなのかなと思うんですけど、どうしたらその曲を作れるのかはずっと模索してます。しかも自分の中でのありなしの判断がどんどん厳しくなっていってる気がするので、さらに作るのが大変になってますね。

 

――『POP CUBE』のリリース日に22歳になりましたが、どんな1年にしたいですか?

 

ポンポン神曲が出るような22歳にしたいです。「これだ!」という曲が毎回毎回出るわけでもないんですよね。でも何曲かバズっているということは、ある程度何かあるような気もしなくもないので。自分なりの方程式みたいなものを見つけ出せたら、曲の幅も増える気がしているので、何とかそういうものを見つけつつ、新しい表現もしていく22歳にしたいですね。

 

 

Digital EP『POP CUBE』全曲セルフ解説

 

――ここからは『POP CUBE』の各曲について聴かせてください。まずは「Have a nice day」。Spotifyバイラルチャートで首位を獲得したメジャーデビュー曲です。

 

初めてリリースする楽曲でプレッシャーもありつつ、それまでフル尺を作ったことがない中だったので、結構大変だった気がします。それ以降はそこまで苦労することなくフル尺を作れるようになったんですけど、これは「自分だったらどうフル尺にするのか」を初めて考えた一曲で。そういう意味では、思い出の楽曲でもあるのかなと思います。

 

この曲は、コロナ禍についてSNSやニュースを見た中で、みんながどういうことを感じているのだろうかを考えながら書きました。いろんな情報が錯乱していて、どれに関しても正解がないようなことばかりだったじゃないですか。何が正解で何がダメなのか、答えというものがなくて、どれも不確かなものだという意味で、冒頭の《あれもこれも全部疑うのは/きっと不確かな答えだから》といった歌詞を書きました。

 

 

――2曲目「あべこべ」。これはEPのために制作された新曲で、声や言葉の使い方がタイトル通り「あべこべ」で面白い構成になっていますね。

 

「あべこべ」というフレーズを思いついたので、全体をあべこべにしちゃおうと思いまして。Aメロに関しても《離れないように 掴んだって》とか、1個目と2個目のフレーズを全部矛盾させてあべこべにしてます。サビは裏声と地声を混ぜることによって2人いるようにしたいなと。それ以外のパートに関しては、やってみたかったR&Bチックな後ろノリでねっとり感を出した歌い方をしました。

 

冒頭にある《君のいない僕の感情論》の「君」という存在は、人かもしれないし、音楽かもしれないし。曲の解釈自体は聴き手によって変わった方がいいと思うので抽象的にすることがあって、この曲も「君」は聴き手によって何であってもいいと思うんです。その人や物がない自分の感情論はあべこべになっちゃうな、ということを書いた曲ですね。

 

 

――3曲目「アナログライフ」。ドラマ「チェイサーゲーム」(テレビ東京)のエンディングテーマで、これは抽象的とは逆に、明確な言葉で聴き手の背中を押すものになっています。メロディに乗せている言葉の譜割が独特ですよね。

 

ドラマ自体がゲーム業界の話で、ゲーム開発の裏側はゲームのように上手くいかなくて、忙しなくて大変だということを歌詞にした楽曲です。主人公・新堂龍也が役職に就いてやったことのない世界に飛び込むというストーリーだったので、龍也を想像しながら、《答えは足跡のない 世界に》あるよということを綴りました。サビの《待ってるよ》の部分も、最後のCメロも、希望感を出したいなと思って、逆にそれら以外はリアリティに寄り添う感じにして、最後にぱっと開けるような歌詞の楽曲にしました。

 

特にAメロは、よりリズミカルになってるかなと思います。リズムが際立つことをすごく意識したのと、この曲くらいから歌声の表現の幅が広がってきた感覚があって、それをいかしたいなと思って歌声を変えることにチャレンジしました。

 

 

――4曲目「でもね、たまには」。JT「ひといき習慣」シリーズの新CMソングで、今の時代らしい応援の仕方の楽曲だなと思います。

 

CMのコンテの情景が都会だったので、都会で「一息つこう」「休もうぜ」ということを歌詞にした楽曲です。共感性という意味で、曲によっては温かみのある言葉も大事かなと思ってますね。

 

曲的には、ラップパート以外は全部ファルセットで、ラップパードだけ地声にするという、今までとまたちょっと違った作り方をしました。そういうことをやっている人は多分、誰もいなかったと思うんです。スッと違和感なく聴きやすいけど、実は変なことをしている、という楽曲にできたかなと思います。しかも実は音数がめちゃめちゃ少ないので超シンプルなのに、リズムのおかげで聴きやすいし、音数が少ないと思うこともないというか。なのでこの楽曲は個人的にもお気に入りですね。

 

 

――5曲目「逃避行」。昨年10月20日に初めてショート尺をTikTokに投稿されていて「ライブしながら作った曲です!」と書かれていますね。

 

ライブ配信をしながらコードの打ち込みをしました。この楽曲から鼻歌でメロディを先に作って、そこにコードとかを打ち込んで作っていくようになったんです。この楽曲は抽象的なんですけど、結ばれない男女の2人の物語を描いたものになっていて、ファルセットと地声の使い分けも「2人」というものをわかりやすいようにしました。あと口笛の部分は、電車の音をサンプリングして裏に入れたので、そういった部分でも逃避行するような楽曲に仕上がっています。そういう音を入れると空気が変わって、普通の生活から分離されるような感覚になると思うんです。

 

フル尺を作る時に、Aメロのドラムパターンとシンセは足していただいて、その他は最初に投稿した時のものそのままでいきました。元のサビがピアノとドラムだけで成立していたので、あまり音数は増やしすぎず、あのノスタルジックな雰囲気を残すことがいいのかなと思って作った楽曲です。

 

 

――6曲目「NIGHT DANCER」。世界各国のSpotifyバイラルチャートにもランクインを果たしました。アレンジにESME MORIさん、ミックスにエンジニア・小森雅仁さんが参加し、パートごとに異なるビートがスタイリッシュにパッケージされているなと思います。

 

この楽曲はダンスナンバーを作りたいなと思っていた時期に作った曲で。それまではローテンポ、ミドルテンポのものが多かったので、ちょっと違ったアプローチの仕方でよりテンポやリズム感にこだわって、作りたかったものを形にできました。やりたいビート感やリズムが個人的にたくさんあって、これは自分でも気に入っている楽曲だし、SNSでの反応もたくさんあったので、全部やっちゃえばいいかなと思って。2番以降のリズムを変えたりして遊んでいたのをESMEさんが汲み取ってくださって、音は変えながらもそのまま再現してくださったように思います。ESMEさんからは自分の中になかったアイデアが出てきて、さらに都会の夜感が増してすごくよかったです。

 

サビの《どうでもいいような 夜だけど》が「とってもいいような夜だけど」に聴こえるということを結構言われるんですよ。そういうことにしたいなと(笑)。でもダブルミーニング的な言葉遣いは好きなので、たまにやったりしますね。

 

 

――7曲目「Holy Light」。渋谷スクランブルスクエアのX’masキャンペーンソングとして書き下ろした、クリスマスポップソングの王道をいく楽曲ですね。

 

超王道ですね。僕は、こういう機会以外でクリスマスソングを作ることや、季節を限定した曲を作ることがないと思うので、いい機会だと思ってあえて王道のクリスマスソングに寄せたものにしようかなと。「クリスマス」「渋谷」「欲張る」という単語を入れてほしいというオーダーをいただいていたので、それらを入れつつ、渋谷の冬を彩る楽曲を目指しました。

 

この曲は特に、今までと違ってコーラスを沢山入れた楽曲になっています。これまでの楽曲で裏にコーラスがいることはなかったので、新しい表現になっているかなと思います。まさに冬!クリスマス!という感じですね。

 

 

――最後に、EP全体を通してリスナーの方へ伝えたいことがあればお願いします。

 

EPに関しては新たにマスタリングし直したので、(シングルとして配信したものとは)またちょっと違った聴き心地があると思うし、全体的にすごく聴きやすくなっているので、ぜひEPを通して聴いてください!

 

 

インタビュー:矢島由佳子

写真:橋本優

 

INFORMATION

LIVE INFORMATION

ONLINE LIVE『POP ROOM』

2022年12月19日(月)

OPEN 19:30 / START 20:00

チケット:視聴券のみ ¥2,500(税込み)

      グッズ付き視聴券 ¥4,950(税込み)*フェイスタオル付

チケット販売先:https://w.pia.jp/t/imase-pls/

海外向けチケット販売:https://w.pia.jp/a/imase22engpls/

販売期間:2022年11月9日(水)20:00 ~ 2022年12月31日(土)23:00

配信に関するお問い合わせ:チケットぴあ event@linkst.jp (平日10:00~18:00)

 

プロフィール

 

 

岐阜出身の22歳の新世代男性アーティスト。

音楽活動開始わずか1年で、TikTokに投稿したオリジナル曲の総再生回数が12億回を突破しティーンから絶大なる人気を得ている。

メジャーデビュー曲「Have a nice day」はSpotify日本バイラル週間チャートで1位を獲得するなどチャートを席巻。

2022年4月には「ポカリスエット」や「JT」新CM主題歌、ドラマタイアップにも大抜擢されるなど今話題沸騰中。

12月19日には自身初のライブ、ONLINE LIVE『POP ROOM』の開催も決定している。

 

【各SNS / HP】

Twitter:https://twitter.com/imase_1109

Instagram:https://www.instagram.com/imase11_9/

YouTube:https://www.youtube.com/channel/UC4Kape5ARQ-konOZSw2yawA

TikTok:https://www.tiktok.com/@imase119