BIOGRAPHY
ホリー・コール / HOLLY COLE
2025年1月24日、13枚目のスタジオ・アルバム『ダーク・ムーン(原題:Dark Moon)』をリリース予定のホリー・コールは、同作のレコーディング・プロセスについて訊かれ、次のように語った。「このアルバムには、即興の精神を取り入れたいという強い思いがありました。また、それと同時に、私の音楽のサウンドの本質は、アレンジにあると考えています。今回は事前のリハーサルを殆ど行わずにスタジオに入ったため、スタジオにいる間、どの曲も私達にとっては途轍もなく新鮮に感じられました。私が一緒に演奏するミュージシャン達は皆、曲のアレンジに大いに貢献してくれています。それぞれ一人一人に光が当たる瞬間の音を聞きたいと私は思い、皆で演奏しながらアレンジの大部分がまとまっていきました。このアルバムが完成した時に聞こえてくるのは、その曲のどこが好きなのかを私達が発見する瞬間であり、それこそが私にとって本質的な部分なのです」
カナダ出身の国際的ジャズ・シンガーとして知られるホリー・コールは、1989年、インディーズ・レーベル〈アラート・ミュージック〉から4曲入りEP『Christmas Blues』をリリースし、キャリアをスタート。翌1990年にデビュー・アルバム『ガール・トーク(原題:Girl Talk)』を発表した。
1992年にはブルー・ノート傘下のレーベル〈マンハッタン〉と契約し、アルバム『コーリング・ユー(原題:Blame It on My Youth)』をリリース。同アルバムは、カナダでプラチナ超のセールスを達成し、全世界で20万枚以上の売り上げを記録した。また、ヒット・シングル「コーリング・ユー(原題:Calling You)」の成功により、日本でもアルバムとシングルの両チャートで1位を獲得している。さらに、ジョニー・ナッシュのヒット曲「アイ・キャン・シー・クリアリー・ナウ(原題:I Can See Clearly Now)」のカバーと、そのミュージック・ビデオを中軸に制作した次のアルバムにより、彼女の国際的な成功は確固たるものとなったことで、次作への下地が整えられた。その次作とは、ホリーお気に入りのソングライターの一人であるトム・ウェイツが作詞・作曲を手掛けた楽曲のみで構成されたアルバム『テンプテーション(原題:Temptation)』である。
これまでに12枚のアルバムをリリースし、マルチ・プラチナ・セールスを達成しただけでなく、数多くの賞を受賞してきたホリー・コール。その中には、2度の受賞(ノミネートは8度)に輝いたジュノー賞(*カナダ版のグラミー賞に相当)や、同じく2度受賞したジェミニ賞(*カナダ映画テレビ・アカデミーが主催する賞)が含まれる。また、日本ゴールド・ディスク大賞も2度に亘って受賞した他、モントリオール・ジャズ・フェスティバルからは名誉あるエラ・フィッツジェラルド賞も授与され、アレサ・フランクリン、ダイアナ・クラール、エタ・ジェイムズらの仲間入りを果たした。また2014年には、クイーンズ大学から名誉博士号を授与されている。
2019年、ホリー・コールは、モントリオール国際ジャズ・フェスティバルの40周年を祝い、デヴィッド・ピッチ(ベース)とアーロン・デイヴィス(ピアノ)と共に、オリジナル・メンバーでホリー・コール・トリオを再結成。モントリオールにあるキャバレー〈ライオン・ドール〉で一連の公演を行った。この特別なコンサートの模様はライヴ録音され、2021年にアルバム『モントリオール』としてリリースされている。
2022年のクリスマス期には、1989年(*『Christmas Blues』)と2001年(『聖夜の物語(原題:Baby, It’s Cold Outside)』)の2種のクリスマス作品を組み合わせたリマスター版コンピレーションを、『Baby It’s Cold Outside and I Have the Christmas Blues』と題してリリースした。
ホリー・コールは、特定の一つのカテゴリーに当てはまるようなアーティストではない。スモーキーな彼女の歌声は官能的で、アレンジはスマートかつセクシーである一方、彼女と彼女を支えるミュージシャン達は、今回特に、マーティ・バリン、ペギー・リー、ハル・デヴィッド、バート・バカラック、ジョニー・マーサーら、『ニュー・アメリカン・ソングブック』の作家達による楽曲を中心に、伝統的なジャズやポップス、そしてカントリーのスタンダード曲を他に類のない独自の方法で再構築している。