<ライヴ・レポート>9/6,7 東京JAZZ
日本最大級のジャズ・フェスティヴァル「第13回 東京JAZZ」が、先週末に東京国際フォーラムにて開催され、上原ひろみは異なるプロジェクトで2日間連続出演した。
まず6日(土)昼の部「THE JAZZ POWER」では、ドミニカ共和国出身の鉄腕ピアニスト、ミシェル・カミロとのデュオで登場。上原とカミロの共演は2005年の東京JAZZ以来9年ぶりとなる。
ステージの中央に置かれた2台のグランドピアノで向かい合いながら、二人は1曲目の「TROPICAL JAM」の出だしから丁々発止のやり取りを繰り広げた。いずれも卓越したリズム感と、エネルギッシュなプレイで人気の二人だけに、時としてどちらがどのメロディを弾いているか定かでなくなるほど、一体となったプレイを披露。
デューク・エリントンの「キャラヴァン」、ラテンの名曲「BESAME MUCHO」、上原のオリジナル「DESERT ON THE MOON」をはさんで、故ホレス・シルヴァーに捧げたアンコールの「THE GODS OF THE YORUBA」まで、2台のピアノから放たれる音は、まるでオーケストラのようなスケールで会場全体を包み込んだ。
本編最後の「BILLIE’S BOUNCE」では、汗だくになったカミロがメガネを外し一心不乱にピアノを弾きまくる。この姿からも、このステージが二人にとって音楽という名の下での真剣勝負であったかを物語っていた。
続いて、7日(日)夜の部の「DISCOVER」に、フェスの大トリとして、ザ・トリオ・プロジェクトで登場。上原がアンソニー・ジャクソン、サイモン・フィリップスと共にステージに姿を現すやいなや、会場内から大歓声が上がり、いかにこのトリオを待ち望んでいたかが伝わってくる。
1曲目の「MOVE」からトリオは、限界に挑むかのようなテンションとパワーで、会場を熱気で包み込む。続くMCで上原は、同じ夜の部に出演した、デビュー時からの恩師であるピアニスト、アーマッド・ジャマルと今回日本で同じ舞台に立てたことの喜びを語った。
2曲目以降は、5月に発売された新作『ALIVE』の収録曲が続く。アルバム発売後、日本ではステージ初披露となるナンバーばかりだが、早くもCDよりもスケールアップしたトリオのパフォーマンスに、客席もどんどんヒートアップしていく。「PLAYER」「WARRIOR」「DREAMER」そして「ALIVE」と、アルバムの中でも特に疾走感あふれるナンバーで構成されたセットリスト。まさに、“駆け抜けた”という言葉がふさわしい1時間だった。
鳴り止まない拍手の中、再びステージに登場したトリオは、しっとりとミディアム・テンポの「SPIRIT」を演奏。ソウルフルで感動的なパフォーマンスに、終わると同時に観客はスタンディング・オベーションで応えた。