待望のニュー・アルバム『パリ』が3月5日発売決定! アルバムからプロコフィエフのヴァイオリン協奏曲第1番第2楽章が本日より先行配信スタート。
アルバム『パリ』は、ヒラリー・ハーンの1年のサバティカル休暇からの復帰作であると同時に、ドイツ・グラモフォンへの6年振りの新作となる。彼女のために書かれたエイノユハニ・ラウタヴァーラによる「2つのセレナード」の世界初演録音の他、エルネスト・ショーソンの「詩曲」、1923年にパリ都で初演されたセルゲイ・プロコフィエフのヴァイオリン協奏曲第1番を収録している。
「『パリ』の主眼は表現です」とハーンは語る。「情感です。ある街があり、その街の文化の交わりがあり、切り離すことのできない感性があります。それが演奏者にも聴く人にも閃きを与えます。アルバムにはパリが貫かれています。それだけではなく、私の音楽家人生とも大いに脈絡があります。私は十代の頃からパリで演奏をしていますが、オーケストラとの共演は、いつもと言っていいほどフランス放送フィルハーモニー管弦楽団とでした」。
「パリ」の録音の構想は、2018年から19年にかけてのシーズンでハーンがフランス放送フィルハーモニーのアーティスト・イン・レジデンスになったことから膨らんだ。2014年、ミッコ・フランク指揮でラウタヴァーラのヴァイオリン協奏曲を演奏した後、ハーンはフランクに彼と同郷の友人のこの作曲家が協奏曲第2番を書く気持ちはないかと尋ねた。フランクとラウタヴァーラは話し合い、セレナードを数曲まとめた形にするという構想で落ち着いたが、ラウタヴァーラの病によりその実現は阻まれたかに思われた。2016年7月享年87歳でラウタヴァーラは死去、すべてはこれにて一巻の終りとフランクは嘆き悲しんだ。ところがラウタヴァーラの未亡人が彼に見せたのは、完成間近のヴァイオリンと管弦楽のための素晴らしい哀歌調の曲だった。
「即座にミッコはこれが私達の曲だとわかりました」とハーンは回想する。フランス放送フィルハーモニーは、著名なフィンランドの作曲家でラウタヴァーラに師事したこともあるカレヴィ・アホにオーケストレーションの仕上げを依頼した。「私達のこの録音は、2019年2月の世界初演からとっています。この感極まる歴史的な演奏で、ラウタヴァーラの作曲カタログは締めくくられます。最後の音符が鳴り終わった時、ミッコは天に向かって楽譜を高く掲げ、今もそこにいる作曲家の魂に敬意を表しました」。
本アルバムでラウタヴァーラの「2つのセレナード」と並ぶ楽曲を選ぶに当って、ハーンはパリに背景をもつ2曲の音楽を選んだ。彼女はショーソンの「詩曲」を、徹底した対比に満ちた「あくまでも表現的な作品」と呼ぶ。「ある意味、ショーソンの私的な鎮魂歌のような予兆的な作品でありながら、喜び溢れる祝祭でもある。最大の身ぶりと最小のニュアンスを描いている」と、ハーンは分析する。
「詩曲」はイワン・ツルゲーネフの短編小説から閃きを得ている。ツルゲーネフは晩年の多くをパリ近郊で過ごした。だがこの音楽は文学的標題から解き放たれ、メランコリーとほとばしる熱情の間で曲想を行き来する。「詩曲」のパリでの初演は1897年4月、ベルギーの名手ウジェーヌ・イザイが演じ熱狂的に歓迎されたが、ショーソンは自転車事故でその2年後亡くなった。
プロコフィエフがその初めてのヴァイオリン協奏曲に着手したのは、第一次世界大戦の初期の頃だった。1917年、ロシアの十月革命の少し前に彼は再び譜面に向かい、祖国で脱稿し、ニューヨーク次いでパリに亡命した。楽曲の公での演奏は遅く、1923年の10月になってパリのオペラ座で初演された。
「規則破りの協奏曲です」とハーンは語る。「私の愛奏曲の一つ。陸上競技で走っている気がする時もあるし、蒼天を漂っている気になる時もあります。絶えず移ろい、演奏者も聴衆もどきどきはらはらしっぱなしです」。
新作「パリ」は、ハーンのフランスの都との長いつながりと同時に、フランス放送フィルハーモニーとミッコ・フランクと培った芸術的コラボレーションの特異性を象徴している。
ハーンが言う通り、そしてここに聴かれるように、一緒に音楽を演じると、“音符は会話の言葉の様に流れ、音色はぴたりと寄り添い、感情は誇張されるというよりも包まれる”。
<商品情報>
『パリ』
■2021年3月5日発売
UCCG-45003
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