BIOGRAPHY
HELLYEAH / ヘルイエー
Chad Gray/チャド・グレイ-Vocals
Vinnie Paul/ヴィニー・ポール-Drums
Tom Maxwell/トム・マックスウェル-Guitars
Greg Tribbett/グレッグ・トリベット -Guitars
Bobzilla/ボブ・ジラ-Bass
ハード・ロック界の竜巻、HELLYEAHの3rdアルバム『BAND OF BROTHERS』はロックの世界の急所を掴み、意のままに操るだろう。HELLYEAHの過去のどの作品よりもヘヴィで、感情表現の行き届いたこのアルバムは音楽面で…そう…パンテラやダメージプラン、マッドヴェイン、ナッシングフェイスといったメンバー達が過去に在籍してきたバンド達をこれまでになく連想させるものとなっている。
「HELLYEAHの作品が出ると知った人達が最初に予想するのはこういう作品だ、と俺は本気で確信しているんだ」
ヴォーカリストのチャド・グレイは言う。
「これは俺達がこれまでやってきたありとあらゆる音楽のジグソー・パズルだし、これこそ俺達が作る必要のある作品だったんだよ」
オープニング曲の「War In Me」の始まりからハンマーが振り下ろされる。聞けばすぐにそれとわかる雷鳴のようなドラムの連打だ。そこから、攻撃的で我が道をゆく切れ味鋭い、ざくざくとした響きが積み重ねられてゆく。続いて始まるタイトル曲にフィーチュアされているのは、ダウン・チューニングのパワーグルーヴ、ツーバスと叩きつけるようなシンバルによる颯爽たるビート、そしてうなり声から激しいまでにメロディアスな表現まで幅の広いヴォーカルだ。曲は、ギタリスト二人のワウワウを駆使したソロでピークを迎え、グレイの半分語りかけるようなヴァースから団結の賛歌へと戻ってゆく。”励まし合う時だ、落ち込んでいるものを決して置き去りにしてはならない/俺はお前の援護をする お前は俺の援護をする/俺達が団結し続ける限り総てはうまくいくのさ”
「このバンドのメンバーはみんな、それぞれ個人的に苦しい経験を経てきた」と、ドラマーのヴィニー・ポールは語る。
「それだけじゃない、このバンドはいつも負け犬として見られてきたんだ。ロックン・ロールに見切りをつけたレーベルで過ごしてきた俺達は、次の段階へ足を踏み出す必要があった。この音楽が俺達を本気で一つにしてくれたし、そのことが俺達の中から最高のものを引き出したんだよ」
「アルバムのタイトルが『BAND OF BROTHERS』なのは、これが俺達の本当の物語だからさ」
と、ギタリストのトム・マックスウェル。
「本当に色々な経験をしたが、今でも俺達は堅く結びついた仲間なんだ。一緒に過ごすことが好きで、一緒に音楽を作りプレイすることが好きな仲間なんだよ。”お前が落ち込んでいる時は俺が盛り上げてやるよ”という歌詞があるけれど、全くそのとおりなんだ。俺達はずっと支え合ってきたんだから」
『BAND OF BROTHERS』は自然で有機的なアルバムだ。だが、これまでのHELLYEAHの作品に対して態度を決めかねていたメタル・ファンをわくわくさせるアルバムでもある。そして、バンドが活動を開始した2006年には出ることはなかったであろうアルバムでもあるのだ。当時、メンバー達は彼らのそれまでのバンドのサウンドから離れ、彼らにとって未知の領域を探検して楽しむことを望んでいた。彼らはダラスにあるポールの自宅に集まり、バーベキューをしたり、好きな曲を聴いたり、酔っ払ったりして過ごしていた。(最初のアルバムは)過去のバンドのファンが期待しているようなものではなかったかもしれないが、楽しいサザン・ロックからメロディアスなハード・ロック、さらには足を踏みならすようなメタルまで、幅広い曲が収められた、誠実で勢いのある作品だった。アルバムは30万枚を超える売り上げを記録した。2010年に出されたHELLYEAHの2作目『STAMPEDE』も同様の内容で、『BILLBOARD』のアルバム・チャートで初登場8位を記録した。
「最初の2作では、境界線を引くようなことはしなかったんだ」
ポールは言う。
「俺達はみな、よく知られたメタル・バンドのメンバーだったから、さらに手を広げて、様々なジャンルを採り入れてみたいと思っていたのさ。でも、そういう気持はみんなすっかり満たされたんじゃないかな。新しいアルバムを作るためにまたみんなで集まった時、俺達はこう言い合ったんだ。『よお、俺達のメタルのルーツに戻ろうぜ。ばっちり活を入れて、ヘヴィなレコードを作ろうよ』とね。最初の2枚のアルバムは今でも誇りに思ってはいる。ただ、今度のアルバムには前以上に牙がある、ってことさ」
「本当にヘヴィな音楽をまた作れるんで凄く嬉しかったよ」
マックスウェルは述べる。
「そうしたい、とずっと思っていて、ようやくそれが実現したからね。俺達は、鼻声の泥臭いロックという狭いジャンルにずっと押し込められていた。でも、俺達はそれだけじゃないはずだ、と俺にはいつだってわかっていたんだ。ふざけるな!うちにはパンテラのドラマーがいてマッドヴェインのメンバーが二人もいて、俺もいるんだぜ、って。俺達らしくやろう、パワフルなフックとリフを中心に組み立てられた最高にヘヴィな作品を作ろう、俺達自身に正直であることを恐れるな、って感じだったよ」
「また一つのバンドに集中出来るのは素晴らしいよ」
と、トリッベット。
「マッドヴェインとHELLYEAHの間を行ったり来たりで、俺達も混乱した。休暇もまるでなかったし、精神的にも凄く辛かった。でも、今は一線を越えることなく、マッドヴェインのヘヴィな部分をHELLYEAHに持ち込むことが出来る」
「マッドヴェインが休みに入った後、俺は自分がずっと、とてもヘヴィで攻撃的な音楽が好きだったんだ、ということに気づいたんだ」
グレイはそう付け加える。
「今回のような、よりメタルっぽいヴォーカルを歌う方が俺には自然に感じられた。俺達はこれまで自分達がやってきた総てのものをHELLYEAHという舞台に載せたんだ。これまでは、マッドヴェインに似すぎている、と思えるような曲を書くことに恐れすら感じていた。マッドヴェインを思い起こさせるようなメロディやハーモニーが出てきたら、自分の頭の中からそれを消去して、よりHELLYEAHらしく思えるものを書いていたんだ。今回は、恐れることを止めた。俺はマッドヴェインの声だったから、誰かが”えー、マッドヴェインっぽいね”といっても別に構わないし、そのことを誇りに思うよ。そのことを不安に思う必要はない」
マッドヴェインでやっていたようなタイプのパフォーマンスが増えただけではなく、パーティ・ソングを歌うことも減っている。(スウィングしてパンチの効いた「Drink Drank Drunk」と、DEF LEPPARDの「HIGH AND DRY」のヴォリューム・アップしたカヴァーは除く) 『BAND OF BROTHERS』アルバムの収録曲の大半は、現実社会とつながりのある、焦点の定まったものなのだ。「WM Free」は、1994年に冤罪の殺人容疑で投獄され、近年になり新たなDNA鑑定の結果、釈放されたたアーカンソー州の3人のティーンエイジャー達、ウエスト・メンフィス・スリーのことを歌っている。一方、「War In Me」や「Why Does It Always」「Burn Rage」は、より個人的な内容だ。グレイはこう説明する。
「俺は自ら問題を作り出してしまうタイプの人間の一人なんだ。幸せになるすべがわからず、そういう環境を作り出してしまうんだよ。幸せになるよう育てられなかったから、幸せになるということが理解出来ない。俺自身、恵まれた育てられ方をした訳じゃない。辛い人生を送ってきたんだ。他の人達のように抱きしめられたり、大事にされたり、ということがなかった。だから、俺はいつも感情的で、いつも問題を抱え、それを表に出してしまう。そのことについて書いたのさ」
とはいうものの、『BAND OF BROTHERS』は自己破壊や嘆き、コンプレックスを宣伝している訳ではない。むしろ、これは挑戦的な叫びなのだ。いかに事態が酷く思えても、人はいつでもエネルギーを呼び起こし、浮上しようという強い気持ちを呼び覚ますことが出来る。グレイは言う。
「アルバムの最大のインスピレーションは、自分の人生を取り戻す、という考えだった。俺は自分の望むように生きるつもりだ。誰も俺にああしろこうしろと指図することはないだろうし、(指図されても)俺は気にもかけない」
HELLYEAHが『BAND OF BROTHERS』の制作を開始したのは2011年夏。場所は再びポールのホーム・スタジオだ。トリッベットとマックスウェルははっきりした構成が出来上がるまで、リフをいじくり回し、様々なアイディアを組み合わせていった。そして、出来上がったものをポールに示した。
「それをみんなでジャムってみたんだ。かなり早く、それも簡単にまとまっていったよ」
ポールは言う。
「出来たものを聴いて、”このパートはヴァースにしてこっちはコーラスにした方がいいんじゃないかな”という時もあるし、後からパートの入れ替えやアレンジのやり直しは確かにやった。でも、ライヴ演奏のもつ臨場感は残されているよ」
プロデューサーのジェレミー・パーカーと共に、アルバムの完成までHELLYEAHは8ヶ月を費やしたー『STAMPEDE』の制作の2倍以上の時間だーしかし、その過程はスムースで楽しいものだった。
「作業のペースが遅くなるのは、ビールや酒を切らして店に買いに走る時だけだったよ」
と、ポールが冗談を言う。
「「Build A Better God」のうねるようなベース・ラインから、ざくざくしたリフ、パワー全開のドラム、怒りに満ちたヴォーカルから、「Call It Like I See It」の突進するリズム、躍動感あふれるビート、そしてヴォーカルの偏りのない対旋律まで、反逆心旺盛で荒々しい『BAND OF BROTHERS』アルバムは、決まり文句や型にはまったサウンドを用いることなくメロディと激しさを一つにまとめることを追及するバンド達にとって、ある種の入門書となるだろう。
「最初に完成させた曲は「War In Me」でね。早くてヘヴィなこの曲がアルバムの色調を決めたんだ」
マックスウェルが説明する。
「俺達は”これは凄いな。これこそ俺達の進むべき方向性だよ”と感じた。残りの曲はそこから自ずとそうなっていったよ」
ポールが最後にこう締めくくる。
「俺達にとってより馴染みの深いジャンルだからね。これこそ俺達の最高の姿なんだ。俺達はみな伝統的なサウンドを持つメタルに深く根ざしたバンドに関わってきた。ヘヴィ・メタル・バンドの仕組みというものも理解している。曲を書き始めた途端、俺は以前のようなドラム・プレイに戻り、ギターのリフも動き出した。総てが最高で、俺達も熱気にあふれていたよ」
『BAND OF BROTHERS』はユニバーサル・ミュージックより日本先行で7月11日に発売される
(海外盤はElven Seven Musicより、7月17日に発売)