<ライヴ・レポート>エネルギー漲る東京公演レポート到着!

2013.09.10 TOPICS

音楽ライター内本順一氏による、今、世界でもっとも注目される男性ジャズ・シンガー、
グレゴリー・ポーターの9月6日(金)に行われたブルーノート東京公演のレポートが届きました!



20130910 2今年3月から、わずか半年で早くも2度目の”単独来日”を果たしたグレゴリー・ポーター(以前、ハーレム・ジャズ・マシーンの一員としてもポーターは2度来日している)。3rdアルバム『リキッド・スピリット』がブルーノート・レコードからの初メジャー作として9月4日に発売され、注目が集まる最中での公演だ。2ndステージを観た。

バンド・メンバーは3月と同じく、チップ・クロフォード(ピアノ)、アーロン・ジェイムス(ベース)、エマニュエル・ハロルド(ドラムス)、ヨウスケ・サトウ(サックス)。ポーターのレギュラー・バンドであり、アルバムでもこのメンバーが中心になって演奏している。翌日ポーターに訊いたところ、「時々で多少の入れ換わりはあったけど、大体このメンバーで4年くらいやってきた」とのことだ。

まず書いておきたいのが、3月に観たとき以上にこのレギュラー・バンドの一体感が増しているように思えたこと。ポーターが詩人としての才能にも長けたシンガー・ソングライターであることはアルバムを聴けばよくわかるが、ライブにおいてその側面が強調される場面はさほどなく、第一にバンド・アンサンブルに重きがおかれている。メンバーがソロを演奏しているときのポーターの表情を見ていて、ステージでは一バンドマンとして自らを位置付けているのだなと、そうも思った。そんなポーター含めた5人の押しと引き、絡み方が、3月に観たときよりもいっそう絶妙かつ熱度の高いものに感じられたのだ。

「バンド・メンバー全員、いまはエネルギーが漲っている。長旅で疲れている日もそりゃあるけど、今回は確かに熱が高かったとぼく自身も感じたよ」と翌日の彼も言っていたので、間違いないだろう(個人的にはとりわけエマニュエル・ハロルドという黒人ドラマーのシャープさに観惚れてしまった)。
 この回では、まず2ndアルバム『ビー・グッド』から2曲歌われ、続いて新作『リキッド・スピリット』から3曲。再び『ビー・グッド』から2曲歌って本編が終わり、アンコールで1stアルバム『ウォーター』から1曲。新作のなかでは特に(アルバム冒頭曲である)「ノー・ラヴ・ダイング」の「絶対に絶対にもうぼくのもとで愛を死なせはしない」というフレーズがハッキリと意志を伴って響いてきてグッときた。強い気持ちを訴えるときのポーターのヴォーカルはそのまま強くダイナミックなものとなる。そこに揺さぶられる。

20130910 1 が、全編通して最も印象に残ったのは、やはり本編ラストの「ビー・グッド」とアンコールの「1960ホワット?」。片や胸に沁み渡るバラードで、片や緊張感を孕んだメッセージ性とグルーヴに強度のある曲。対極にあるようでいて、ポーターの作風とか世界観を代表するような2曲であり、極論するならポーターの全ての曲はこの何れかの方向性に含まれるようにも思う。ざっくり書くならラブ・ソングとプロテスト・ソング。もっと極端に書くなら、グレゴリー・ポーターとは愛と自由を歌うシンガーである、と。そのような論を翌日ポーターに伝えたら、こんな答えが返ってきたのだった。
「実は1stアルバムに付けようと最初に考えていたタイトルは、”ラブ&プロテスト”というものだったんだ。ラブとプロテスト。ぼくにとって何より大切なテーマであり、そのバランスを大事にしながらぼくは音楽を続けているんだ」

(文・内本順一)

*セットリスト:
1. PAINTED ON CANVAS
2. ON MY WAY TO HARLEM
3. NO LOVE DYING
4. LIQUID SPIRIT
5. I FALL IN LOVE TOO EASILY
6. WORK SONG
7. BE GOOD
8. 1960 WHAT?