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「Walking On Fire」感想コメントが続々到着!!
<コメントの並びは敬称略・50音順>
浅井健一
すごくカッコイイです。数少ない本物。
一緒にライブした時少し話したけど、
なんか魅力的な二人だったし。
大貫亜美(PUFFY)
すごいなぁ。どんな時代になっても、どんな事態が起こっても、二人はGLIM SPANKYの音楽を作っていくんだろうな。
聴きながらそんなことを思いました。普段は人懐こい可愛い二人ですが、音楽中はカッコよくて、一生ついて行きたくなるのです。
レミ子のチャイ、早よ飲ませて♡
オカモトコウキ(OKAMOTO’S)
変化と革新、挑戦と確信。
暗い時代を引き裂くギターリフ。
ロックラバーの夢を乗せて、グリムスパンキーは走り続けてるね。
変わらないものはつまらないし、廃れてしまう。2人がまた新しい
旅に出ようとしている感じがして、今までの中でもこのアルバムが特に好きでした。
かめぽん、また飲み行ってギターロックの話しようね!
生身の音楽が今よりもっと派手にぶつかり合っていたあの時代。そのDNAを受け継いだふたりの音楽が今を生きて現代社会と混ざり合う。それが私は大好きです。そして更に、都会に疲れた心を自然に還らせてくれるような懐かしさ、若葉をそっと撫でる風のような優しさ、答えを求めて宇宙に放り出された衛星のような孤独や強さを携えて。今年、燃えているはずだった東京は静まり返っていたけれど、GLIM SPANKYの音楽はわたしたちひとりひとりのハートに火をつけてくれるはず。
GLIM SPANKYの音は、
どんな爆音で聴いてもうるさくなくて、
どんなに小さな音で聴いてもしっかり届く。
冒険的で、でもどこか懐かしい雰囲気に
はじめ驚かされたと思えば、すぐに身体に馴染む。
喜びも哀愁も愛しさも希望も全部詰まった一枚。
また名盤を受け取ってしまいました。
ライブで聴ける日が待ち遠しいです。
ARABAKI ROCK FESTの舞台裏で、GLIM SPANKYのお二人と初めてお会いしました。広々とした原っぱでの立ち話だったんだけど、ついさっきまで人々を熱狂させていた凄いテンションと、自然の中の光や緑という、牧歌的な雰囲気の両方ともが妙に似合ってた姿が、私にはあとあとまで印象的でした。音楽にも、強い怒りと明朗なラフさ、嵐のような激しさと、一転してメローな曲も真骨頂のようにも聞こえてきて、常に両極端を持っている希有なバンドなんだ、とよくわかりました。
懐かしくて、新しくて、
愛おしくて、誇らしい。
GLIM SPANKYの新作。
二人の音と言葉は僕らの世代にとって
そして僕らの上の世代にとって、
あまりに快感で、あまりに美しく響く。
願わくば、
新しい世代のみんなにとっても最幸なモノであればいいな。
アルバム発売おめでとうございます!
どの楽曲も本当にかっこよくて、オシャレで、力強くて、セクシーで一瞬で胸高まりました!!
ちょっと背伸びして大人な、特別な夜を過ごしたい時にアロマキャンドルと共にこのアルバムを聴きたいなと思いました!私も27歳なのでそろそろ色気の一つでも出したいものです…
私たちは以前GLIM SPANKYさんに
「レディ・メイ」という楽曲を作っていただいたんですが、ライブでもキマりますし、私達のお気に入りの1曲です♪ありがとうございました!
また曲を作っていただけるように、『Walking On Fire』を聴いてもっと色気を研究して頑張ります!☺️
内藤剛志
GLIM SPANKYがまた新しい朝をこじ開けた!
フルアルバムは、今彼らが僕達の居るこの世界をどう見ているか、の答えだ。
景色、彩り、匂い、手触り、温度、全てだ。
人と温かい距離でいること、納得できない事は1度立ち止まり、必要があれば戦うこと。そして愛すること。
僕たちはこの濃厚な世界観に浸りまくるのだ!
踊ろう、GLIM SPANKYといつまでも!
激動する時代に、勇気を持って立ち上がるか、無力感に苛まれ流されて生きるか。
もし迷っているならば、このアルバムを聴けばいい。
“Walking On Fire”は「希望」を探して、時に無骨に時にしなやかにロックした2人の若者の物語だ。
グリムスパンキーは、いつも外で歌ってるみたいだ。
太陽の下、風が吹き、光がさす場所から聞こえてくる、ぶっきらぼうで、けなげな声は、
過去でも未来でもなく今日の地面を踏んで歩いているようで、
聞けば、どんな社会だとしても前へ進もうと思う。
GLIM SPANKYは不思議なバンドだとつくづく思う。
聴いていると、子供の頃10歳年上の兄の部屋から流れてくるレコードを聴いているような錯覚に落ち入る。でも歌詞も歌声もあきらかに今を歌っていて決して古くはない。
「By Myself Again」や「こんな夜更けは」なんか、もうずっと昔から大好きだった曲のように思ってしまう。
新しいのに。
やっぱり不思議だ。
二人は共鳴しているんだな。レミちゃんの声はギターのようで、亀ちゃんのギターは歌のようだ。
ヒリヒリするような言葉とリズムが、激しくも優しい風のように心を揺らして気持ちいい。
新しい一歩を踏み出したGLIM SPANKY、おめでとう。ここからが旅の始まりだ。
アルバムを聴きながら、都会の真夜中の憂いと田舎の夜明けの寂しさは、同じ空で繋がっているんだなぁと何となく思いました。
ボーカルと演奏がロックに溶け込んで、ワイルドにソフトにそのメッセージがくっきり聴こえる。
実はそんなことあまりないよ、奇跡だよ。その上、ルックスも二人、すこぶるカッコ良くて、さらに進化した新譜に僕は、グリムに成りたい。その気持ちはさらにヒートアップするばかりなり。
忘れがたい年になった2020年。
彼女たちの新しいアルバム「Walking On Fire」を聴いた。
閉じこもらざるをえない部屋の中から、窓越しの大都会の風景を睨みつけて、自分を奮い立たせようとしている人の姿が目に浮かんだ。
“此処ではない何処か”を目指して闘っている人の音楽。
それがGLIM SPANKYだと思う。
60’Sや70’Sのサウンドやメロディ、エネルギーが好きだ。それはオジサンになってしまった古いオレの感性なのだろうと寂しくなる瞬間がある。その弱気な自分を奮い立たせて喜ばせてくれるのがGLIM SPANKYです。若き天才2人。たぶんオレにはもう解らない、どの世代にも届く魔法がかかってるんだけど、DNAは自分に近い気がして‥要するに大好きなんだ。
繊細な着眼点と、イェー!やギャイーン!一発で心を鷲掴みにするワイルドさを兼ね備えた2人。その呼び名こそがロックンロールだ。
ロバート
たまらなく良かったです。
カッコよくて、なつかしくて色んな気持ちにさせて頂きました。なかでも「Singin’ Now」は渋かった。
なんか皮パンでも買ってドライブしよう。って思いました。
Video
『Walking On Fire』全曲試聴映像
「東京は燃えてる」Music Video
「By Myself Again」Music Video
「ストーリーの先に」Music Video
「こんな夜更けは」Music Video
2019.11.29「Velvet Theater 2019」LIVEティーザー映像
オフィシャルインタビュー
―今作『Walking On Fire』は、GLIM SPANKY、ひいてはロックそのものの新機軸とまで言えるほどの、2020年という新たなディケイドの始まりに相応しい作品だと思いました。そこには根本的な姿勢の変化があったように思うのですが、いかがですか?
亀本:これまでに出した4枚のアルバム(『SUNRISE JOURNEY』<2015年> /『Next One』<2016年>/『BIZARRE CARNIVAL』<2017年>/『LOOKING FOR THE MAGIC』<2018年>)は、それぞれに特徴や変化はありつつも、道筋としては同じメンタリティの線上で音楽性を広げていったり、サウンドをグレードアップしたりしていたように思います。それに対して今回は、明らかに今までとは違った感覚で制作に臨みました。そうなった理由は、簡単に言えば時代の変化ですね。これまでみたいに「どうもロックバンドです!」みたいな感じではなくなったというか。
―“ロックバンド”という言葉から、現在進行性が薄れてきた感の否めなかった近年からどうなっていくのか。そんな時期だと思います。
亀本:僕らが上京してメジャーデビューするまでの、2010年から2015年くらいって、ロックが世界的にまだ注目されていたじゃないですか。こういったインタビューなどでも僕らがよく名前を出すThe Black Keysの『El Camino』は2011年で、Arctic Monkeysの『AM』は2013年、Kasabianの『48:13』は2014年、2015年にはAlabama Shakesの『Sound & Color』など、ロックがシーンの大きな流れのなかでもまだ存在感を放っていたように思うんです。
―はい。
亀本:その頃からヒップホップも盛り上がってきて、トラップがメインストリームに食い込んで、スターたちがどんどん出てきて、いろんな音楽がクロスオーバーして、世界はすごい勢いで変わっていきました。そこで、ロックバンドはその変化から取り残されてしまったんですよね。そんななか、日本は変わらず独自のロックフェス文化やギターロックが強かったから僕らもやってこられた。でも、僕の肌感覚だと2018年くらいから、そこも変わってきたように思うんです。今は、インターネットを主な拠点とするポップスがチャートの上位を占めるようになっていて、僕らみたいなバンドはどうなっていくんだろうって、前々からなんとなく考えていたことが、いよいよ現実味を帯びてきました。
―そこでアプローチを変えることにした。
亀本:じゃあ、そんな時代でも広い舞台で活動しているロックバンドがどんなことをしているのか。その先端が、THE 1975のニューアルバム『Notes On A Conditional Form』だと思うんです。ゴリゴリのパンクもあれば、シューゲイズにニューウェーブ、ヒップホップもアンビエントもある。ジャンルがシームレスになっているメインストリームの作品と同じように、それがサウンドスタイルとして“ロックかロックじゃないか”みたいな線を引かずに、自分たちの背景にあるさまざまな音楽の要素をアウトプットすることがポイントで、僕らもそういう姿勢をここではっきり打ち出したいと思いました。これまでにやってきたブルーズロックやサイケデリックロックを基調としながらも、GLIM SPANKYという名の総合的なポップスを創り上げていくための第一歩が、このアルバムなんです。
―松尾さんは、時代の目まぐるしい変化とは別軸で、60年代や70年代のカルチャーなどを深く掘り下げていく側面も強いので、亀本さんとは潮流に対する見解がまた異なると思うのですが、いかがですか?
松尾:これまではそうでしたが、違う考えの軸も増えました。これまでは、私の個人的な趣味のなかで過去と現在を見据えながら、亀本のやりたいこととの接点を、GLIM SPANKYとして出していけばいいと思っていたんですど、今はもうそれだと通用しないフェーズに入ったと感じています。事実、アーティストの売り文句が、私が好きなサイケデリック音楽のようなアルバムカルチャーとは相対するとも言える、曲単位での再生回数ばかりになってきて、そこにTikTokなども入ってきて、印象に残る短いフレーズを繰り返すような音楽がどんどん出てきていますよね。いわゆる“バズる”みたいな。
―GLIM SPANKYの音楽と現代の“バズ”という言葉の主なニュアンスの間には、距離を感じます。
松尾:でも、やっぱり私はアルバムが好きだし、バンドが好きだし、フィジカルが一番だと思うし、今の現状には一人の音楽ファンとしてすごくやるせない気持ちがあります。しかしもう一方で、インターネットやサブスクのおかげでいろんな音楽に触れることができて、それ以前より豊かになったことも多々あるわけです。そう考えるとショート動画で“バズりました”みたいな、存在は知っているけど別に好きじゃないって、一定の距離を保っていた音楽が、ある意味近くなってきたというか。
亀本:うん、わかる。
松尾:だからといって、売れたいからインターネットのサイクルに沿った音楽をやるのかというと、それは音楽をやっているそもそもの目的から外れるし、仮にやろうとしたところで能力的にもできるわけがない。そこで、流行に迎合するということではなく、私たちのやりたいことを今の時代に伝えるためには、再考しなければならない部分もあるのではないかと、リアルに考えるようになりました。
―その結果、どういう結論が出たのですか?
松尾:自分自身が“こだわり”だと思っていたことが、実は表現の幅を狭めているだけかもしれない。だから、自分自身の可能性をちゃんと見つめ直して、今までやろうとしなかった扉をひとつ開けるところから始めようと思いました。そこに至るまでにはかなり、かなり、かなり、めちゃくちゃ悩みましたけど(笑)
―悩み抜いた経緯も笑って話せるようになった、ピンポイントでのきっかけはありましたか?
松尾:リード曲の「東京は燃えてる」ができたことですね。この曲は、そもそも東京に出てきて音楽をやっている意味があるのか、どういう気持を持って東京に来たのか、すごく原点的なことを歌った曲なんです。私も亀本も、長野の田舎出身なんですけど、田舎者って東京にめちゃくちゃ憧れみたいなものがあるよね?
亀本:田舎は何もないからとにかくここから出たいって、憧れというより願望かな?
松尾:そう、それ。田舎ではみ出すとどこにいていいのかわからなくなる。だから東京に出て自分という旗を立てるぞ、みたいな。でも遠くから見ていると綺麗だけど近くに寄ると汚い、そういう摂理ってあるじゃないですか。
―憧れと現実にはギャップがありますよね。
松尾:その汚いものに幻滅することもあれば、汚いからこそもっとも美しく輝いて見えるものもある。そういうことを全部ひっくるめて生きていかなきゃいけないと思っていたところに、新型コロナウイルスのパンデミックがあって、あらためて自分自身について考え直した人は、東京に限らずかなりいると思うんです。
―そう思います。
松尾:その結果、自分のいる場所と存在意義に対する考え方が、世界的に大きく動き出しました。都会にいなくてもリモートでなんでもできるし最先端の文化も感じられる。実際に東京から田舎に引っ越した仲間のミュージシャンもいますから。
―私も周りの仲間にも、さまざまな変化がありました。
松尾:だから、そんな価値観が揺れる様の象徴として“東京”という言葉を使って、私たちは何を選択していくべきなのかを提示しようと思いました。それは、新たな音楽性にアプローチしたサウンドも含めて、今の時代、この瞬間だからこそのメッセージ。アルバムには、それ以前に作った既発曲もありますけど、「東京は燃えてる」が全体の方向性を決定付ける流れを生んだことは、間違いないですね。
―サウンドに関して、どういうところが今までやってこなかった部分なのですか?
亀本:「怒りをくれよ」や「褒めろよ」のような、アッパーなリード曲を今一度作りたいという気持ちが、もともとあったんです。そのうえで、その2曲もそこまで狙っていたわけではないんですけど、当時国内の主流だったロックフェスで盛り上がる曲というか、2拍目と4拍目で手を挙げられるギターロックみたいな曲は、自分たちの今のモードじゃなかった。そこで、2・4では乗れない跳ねたビートを主体としたグルーヴのある曲で、GLIM SPANKYらしいエモーショナルでアッパーな側面を打ち出そうとしたことですね。
―そういう“今までにやってこなった側面”は、これまでのどのアルバムでも意識的に打ち出していたと思うんです。それに対して今作は、冒頭で亀本さんがおっしゃったように、今までの延長線上で“新しいことにも着手した”アルバムではない。例えば「焦燥」に近いパワーのある「道化は吠える」や、GLIM SPANKYのアッパーな側面に対するもう一つの顔であり、松尾レミ節と言える優しさや包容力のある「By Myself Again」や「AM06:30」、「若葉の時」のような、これまでの“GLIM SPANKYらしさ”を踏襲する曲も含めて、あらゆる要素の土台が一段上に持ち上がった新次元で鳴り響く、すなわちアルバムのすべてが新しい魅力で埋め尽くされたビッグなインパクトを持っています。
亀本:そう思っていただけたのは、やはりさきほど話したように、前作までは直接的な考え方やリファレンスがロックの範疇だったことに対して、今作はそういう意識がなかったからなんじゃないかと。今挙げてくださった曲のなかだと、「AM06:30」はすごくわかりやすいですね。前半はアコギ以外ぜんぶ打ち込みですし、ギターはボロンと弾いたものをカットして貼り付けるとか、もうなんでもありなんです。 “これってロック?フォーク?”みたいな。
松尾:「AM06:30」は「褒めろよ」を書いたのと同じ時期、5年以上前からあった曲で、ただの弾き語りでした。それを寝かせたままじゃもったいないと思ったので、アレンジを一から考え直し完成させました。
―そうだったんですね。
松尾:また、そういった現代的なサウンドだけでなくトラディショナルな部分でも、曲を作った当時は知らなかった昔のアーティストを知った今だからこそのアイデアを入れました。アウトロのエレキとアコギが絡み合ってフェイドアウトするところは、カナダのHuckleというアシッドフォーク系のアーティストが70年代に出した作品と、最近になって出会ったことがルーツになっています。世界的には名もなきミュージシャンたちが奏でる音の温かみが、私自身の姿と重なったんです。
―アルバムタイトルにも冠した冒頭のインスト曲「Walking On Fire」は、縦にも横にも視野を広げた新機軸を、もっとも端的且つ高らかに宣言した曲だと感じたのですが、いかがでしょうか。
亀本:“Fire”には、“熱くなる”というポジティブな意味と、“困難”という意味も込めました。どんなことがあっても熱をもって前に進んで行く覚悟を、アルバムのタイトルで表したいと思ったんです。
松尾:ジャケットにも前を見た気持ちを込めています。メジャーデビューシングル「焦燥」と地続きのデザインなんですけど、当時はフィルムカメラの質感にこだわったところを、今回はあえてデジタルの強さを活かしたんです。
―曲は、Oasisのアルバム『Standing on the Shoulder of Giants』の1曲目を飾るインスト曲「Fuckin’ In The Bushes」を意識していますよね?
亀本:はい。完全にオマージュですね。あとはJon Spencer Blues Explosionのアルバム『Orange』に入っている「Bellbottoms」。あの始まりのワクワク感が大好きで。
―そう言われると、Jon Spencerのテルミンをオマージュしたような音もありますし、ガレージなサウンドが暴れている感じも、そうなのかなと。そして短い尺のなかに、打ち込みあり、太いギターリフあり、サイケありと、今作の方向性を示す掴みとしてばっちりの攻撃的な曲です。
亀本:このアルバムはポップス的な要素も多いんですけど、まず最初に「ロックしてるぞ」って、しっかりエクスキューズしたうえで、いろんな音楽性を2分足らずのなかに詰め込みたかったんです。そこがうまくいったのは、DATSの早川くん(早川知輝)にベースを弾いてもらって、同じくDATSとyahyelのドラマーでもある一彌くん(大井一彌)に叩いてもらったことが大きかったですね。早川くんは元GLIM SPANKYのサポートベーシストで、一彌くんも昔からの仲なんで、けっこうラフに楽しくやっていたら、ミスってごちゃごちゃしてきたんですけど、「ジョンスペいいよね」とか話しながら、あのガレージ感やライブ感が出ればそれでいいやって、生の勢いをそのまま詰め込みました。そこからドラムのキックに打ち込みを足したり、いろいろと作り込んでいった曲です。
―早川さんも一彌さんも、サイケデリックロックやインディーロックがルーツにあって、近年のポップスやヒップホップのプロダクションや、ハウスやテクノにも通じていますから、今作の構想にぴったりですよね。「Lonely Boogie」はそのことがもっとも強く活きた曲ではないでしょうか。
亀本:Jack WhiteとかSt. VincentのようなギタリストがBillie Eilishのバックにいる、みたいなイメージの曲で、トラップっぽいリズムも一彌くんが生で叩いています。「ああいうギターとトラップは合うと思うんだよね」とか、いろいろ言ったことをすぐにわかってくれるのは、すごくありがたいし楽しかったですね。
松尾:例えば「The Beatlesっぽく」とリクエストしたとして、ただ当時さながらの音が返ってくるのか、私たちのさまざまな文化的背景や、その時にやりたいことを汲み取った音にしてくれるのか、そこは手先の技術じゃなくて感覚的なことだから、どうしようもない状況も起こり得るんです。そこで二人は、技術はもちろんあるし、同性代だし、通ってきたカルチャーに共通する部分もあるからすぐにわかってくれる。一緒にやれてほんとうに楽しかったです。
―「By Myself Again」と「こんな夜更けは」は、松尾さんがほぼ歌ってこなかった、パーソナルな恋愛経験と距離が近いとも受け取れる歌詞に新鮮さを感じました。<愛しい彼>と歌った「お月様の歌」もありましたけど、あの曲はGLIM SPANKYのアナザーストーリー的なイメージが強かったですし、ここまでエモーショナルな恋愛感情だと受け取ることができる要素を持った言葉が、作品のど真ん中にきたことはなかったんじゃないかと。
松尾:それはその通りで、今までの自分だったらこの2曲の歌詞は生まれてなかったと思います。というのも、誰かの経験にしっかりと刺さる強さと、いろんな受け取り方のできる余白が両立している言葉を選ぶ、ようするに聴いた人によってどう捉えてもらってもいいと思いながら歌詞を書いてきたなかで、恋愛に関してだけは、そうとしか受け取られない可能性に抵抗があって、その手のワードを排除してきたところがあったんです。
―なぜ拒んできたのですか?
松尾:個人的な趣味ですね。特に恋愛ソングのなかでも女々しいのが苦手で。ひねくれてますよね(笑)
―でもわかります(笑)
松尾:ただ、“禁止!”ってしていたわけではなく、自分なりに納得できる表現方法が見つからなかったのと、自然に浮かんできた時に書けばいいや、と思っていましたね。でも、もし“恋”と書いたとして、それは自分が好きな人かもしれないし、恋焦がれた夢かもしれないし、好きな物かもしれないし、私も人じゃない何かを恋と置き換えるような発想を持っているのに、わざわざ殻を被る必要なんてないと、今は思っています。
―GLIM SPANKYの制作において、歌詞は完全に松尾さんの領域。自分が決断すればいいだけのことだからこそ、逆にサウンド面よりも変えていくことが難しいとも思うのですが、何かきっかけがあったのですか?
松尾:いろいろありました。そのなかでも大きかったのは、ユーミン(松任谷由実)に「レミちゃんの“恋”というワードを使った曲が聴きたい。あなたの声は、そういう曲があったらより広くいろんなところに届くと思うよ」って言われたことですね。そのあと私の声のことを、「オゾン層から宇宙空間とかその辺りの音がする」みたいにおっしゃっていたんですけど、そこはよくわかりませんでした(笑)
―確かに、イメージが難しい(笑)
松尾:そんなユーミンとの会話によって、女々しい歌が苦手だとか、自分の恋愛経験だと受け取られたら嫌だとかそういうことじゃなくて、私なりのもっと大きな心で、いろんなことについて歌わなきゃなって、思うようになりました。自分で決めたNGって、自分の可能性をそこまでだって認めたことと同じ場合もあると気づけたことが、今回のアルバムに作用している部分はすごく大きいです。
―「こんな夜更けは」は歌詞とともに、サウンドもまた今作での新たな音楽性を象徴している曲の一つです。お二人でリモート制作した曲なんですよね?
亀本:ちょうどコロナ禍で家にずっといたぶん、ふだんよりたくさん音楽を聴いていたことで、90年代のソウルやR&B、ヒップホップブームに、今まで以上に面白味を感じたことが反映されています。The Rootsみたいなバンドや、D’AngeloやErykah Baduといったネオソウル、Lauryn Hillとか、あとはCommonやTone-Locのような、生音をサンプリングしてアナログっぽいビートでラップする人たちとか。どこか自分たちの音楽にも通じるところがあるなって。そういうテンションでいろんな音源を掘り下げていると、ジャズのサンプリングが多いからジャズも聴くようになりました。あとは、今のローファイなビートのヒップホップが流行っている感じも好きだし、そこにブルーズとかジャズとか初期のロックンロールとか、現代のロックができる前の、エレキギターが出始めた頃をイメージした音を乗せました。
―「Singin’ Now」は小細工なしでロックの真ん中を射抜いた曲。歌詞にも<ロックンロールシューズでタップタップタップ>というレトロワードが飛び出す、GLIM SPANKYが歌って演奏するからこそ、カッコよく成り立つ曲。
松尾:「ベタ中のベタでも今の時代に成り立つんだぞ」って、もう笑っちゃうくらいにロックンロールしています。でもそれだけじゃなくて、コーラスとメロの感じにはちょっとサイケっぽい要素を混ぜるとか、遊び心もけっこうあるんです。
亀本:一本筋は通りつつ、展開もめっちゃするしね。
松尾:作っている時はT.Rexとか、頭の中に鳴っていたかな。
亀本:AメロはT.Rexとかグラムっぽい感じで、サビは思いっきりThe Rolling Stonesみたいなね。
―「Up To Me」は「こんな夜更け」同様、ソウルやR&Bから影響を受けた曲ですか?
松尾:これはAlicia Keysの「Underdog」の空気感で、特に歌詞や考え方の面で影響を受けました。性別や国籍などに関係なく、どうしたら自分を大切に、心も健やかに強く生きていけるのだろうと常々考えて生活しているなかで、彼女の姿勢や強さにすごく惹かれたんです。そのうえでこの曲は、白馬の王子様的に何かを待っているばかりじゃなくて、自ら立ち上がって自分の力で生きていこうって、そういうことを歌いました。でも、女性が社会で強く生きていくことについては、まだまだ難しい現状もあるんですよね。
―未だに古い価値観が根強い。
松尾:だから、男、女、あらゆる性別が、平等に扱われる社会を求めて声を上げることはすごく大切。なのに、日本のロックはその点においてすごく遅れていると思います。そういうことを歌うバンドがほんとうに少ない。フェスに出ても「今日は女性ボーカル、GLIM SPANKYだけだよ」とかよく言われるんです。雑誌が組むロックバンドの特集とかも、男4人組とかばかりですし。
―“女性ボーカル”や“ガールズバンド”という言葉が、今の実情を踏まえたものではなく、単に女性というだけで枕詞のようにつくことも多いですよね。
松尾:「女性なのにちゃんとロックしてるね」みたいな。それはThe BeatlesやThe Rolling Stones、日本だとGSとか、女子にきゃあきゃあ言われるところからロックバンドが始まった歴史があるからそうなっていると思うんですけど、変えるべきところは変えなきゃいけない。
亀本:人種もジェンダーも混ざっていくことが今の流れであり、それが正しいこと。そんな男社会を続けていたら、ロックなんてもはや廃れて当たり前。それがずっとポップなものとして真ん中にいられることなんて有り得ないと思います。
―その通りだと思います。
亀本:日本のフェスも、ロックバンドだけじゃなくて男女もジャンルも編成も関係なく、さまざまなアーティストが出るスタイルを主流にしていくべき。僕らは旧態依然とした価値観がまだ強いロック界にいるバンドじゃなくて、GLIM SPANKYというポップスを体現する存在として松尾さんがフロントに立っている、そういうビジョンでやっています。
―「Circle Of Time」は、そんな古い価値観やお二人のパーソナルな想いや鬱屈した何かが、最後の最後、待ってましたのサイケ魂とともに爆発するようでした。
松尾:これはとどめの一撃ですね。ああいうサイケをメジャーでやる、これまでGLIM SPANKYが続けてきたことを、新しいアプローチでやろうって。だから私の歌と亀のギターと最後のドラム以外は、ぜんぶ打ち込みとシンセなんです。その結果「アイスタンドアローン」をさらに膨らませたような曲ができたと思います。
―そして気になるのはこの先です。GLIM SPANKYのロックはどうなっていくのか。
亀本:音楽シーンや社会が変化していくなかで、 “今の時代に響くソリッドなロック”が、このアルバムだと思っています。それと同時にこれからのGLIM SPANKYというバンドの在り方が、よりはっきりと見えたような気もするんです。松尾さんと僕にしかできないことはまだまだいっぱいあるんで、どんどん自分たちの力を拡張していきたいですね。
松尾:今回は、今の自分たちや大切な仲間のこと、社会に思うこともこれ以上ないくらいに描き切ることができました。だから、10年後、20年後まで残る作品であってほしいとは思うけど、とにかく今このアルバムを聴くことに意味がある。今この瞬間に聴いてもらいたいです。
―そういう作品だと思います。
そのうえで、この先のこととなると、ロックは廃れていくという人もいる。シーンとして変えていかなきゃならないこともある。そんななかで、ヒップホップなどが注目を集めているのは、マーケット的なこともあるかもしれないけど、シンプルに音楽性やそこにある主義主張がおもしろいから。そういうアクションを、ロックバンドも自分たちなりにしなきゃいけないと思いますし、ロックにはその価値、ほかのジャンルにはないみんなを包み込む愛情や柔らかさがあるんです。その本質を今一度引き出すための鍵は、正直で強い意志の見える音楽を作ること。そして、それがポップということだとも思うので、このままどんどん突き進みたいです。
(インタビュー・文:TAISHI IWAMI)
「東京は燃えてる」メンバーメッセージ
松尾レミ(Vo/Gt)
遠目で見ると綺麗でも近くで見ると汚いものってありますよね、わたしは都市に対してそれを感じることがあります。
そして、大勢の希望と絶望が入り混じって燃えている煙が見えます。
人生はどんなときでも分岐点に立たされている気がしていて、その選択次第で良いも悪いもどちらにでも行けてしまう。
その先で、私たちは何度も燃え尽き、また火をつけ、少しずつ進んでいるような気がしています。
様々な迷いや葛藤の中で闘いながら生きる私たちですが、根底はいつだって希望を求めているはずです。
そんな思いを曲に込めました。是非たくさん聴いてください!
亀本寛貴(Gt)
これからの2020年代のGLIM SPANKYの新しいギターロックサウンドの土台になる曲だと思っています。
僕らの音楽を今まで沢山聴いてくださっていた皆さんにも、これから出会う皆さんにも気に入って頂けたら嬉しいです。
ALBUM収録内容
<初回限定盤>
2CD+DVD
TYCT-69177 / ¥4800+税
[Disc1]
1.Intro: Walking On Fire
2.東京は燃えてる(Produced by トオミヨウ) ☆リード曲
3.Lonely Boogie
4.By Myself Again ☆映画「実りゆく」主題歌(10月9日より順次公開)
5.AM06:30
6.Singin’ Now ☆テレビ朝日系 木曜ミステリー『警視庁・捜査一課長2020』主題歌
7.ストーリーの先に ☆ABCテレビ・ドラマL『Re:フォロワー』主題歌
8.こんな夜更けは
9.道化は吠える
10.Up To Me(Produced by mabanua)
11.若葉の時
12.Circle Of Time
[Disc2]:2019.11.29キネマ倶楽部ライブ音源
タイトル未定 / NIGHT LAN DOT / MIDNIGHT CIRCUS / ダミーロックとブルース / いざメキシコへ / Velvet Theater / grand port / ハートが冷める前に / Breaking Down Blues / お月様の歌 (Acoustic ver.) / 美しい棘 (Acoustic ver.) / Sonntag / ストーリーの先に / Circle Of Time / 夜風の街 (Acoustic ver.) / Tiny Bird
[DVD]:2019.11.29キネマ倶楽部ライブ映像
タイトル未定 / NIGHT LAN DOT / MIDNIGHT CIRCUS / ダミーロックとブルース / いざメキシコへ / 闇に目を凝らせば / Velvet Theater / grand port / ハートが冷める前に / Breaking Down Blues / お月様の歌 (Acoustic ver.) / 白昼夢 (Acoustic ver.) / 美しい棘 (Acoustic ver.) / Sonntag / ストーリーの先に / Circle Of Time / 夜風の街 (Acoustic ver.) / Tiny Bird
<通常盤>
CDのみ
TYCT-60162 / ¥2,800+税
CD:12曲入り
※初回限定盤と同内容
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