2011年のミュージックシーンを彩る「ロンパチ」⇄「galaxias!」♪
ファッションマガジン『GINZA』の2012年1月号に掲載された、柴咲コウ×カワムラユキ対談。
そのふたりの話がメチャおもしろかったので、ここギャラクシアスwebでロングヴァージョンを掲載させてもらうことにしました。
カワムラユキさんは、今やクラブシーンのアンセムとも呼ぶべきヒットナンバー「ロンドンは夜8時」の作詞家で、チルアウトDJとしても活躍している才媛。言葉を扱うふたりの話は、まさに「ギャラクティック!」。
ツイッター、音楽、人間関係。
カワムラユキ(以下、Y) 今年になって、ツイッターも含めて柴咲さんのことを身近に感じる機会がとっても増えたんです。 ソーシャルネットワークと音楽と人間関係が、タイミングを合わせた感じで、一気に近くなった。そのときちょうど、柴咲さんはロンドンにいて。
柴咲コウ(以下、K) それで「ロンパチで、はなぢブー」とかツイートしたりして(笑)。ロンドンにいるから気になって、すっごい聴いてたんです。
Y あのツイートはすごくうれしかったな。あのときはまだ出逢ってなかったんだけど、すでに女友達ぐらいに感じてました。
K 私も。そうか、現実ではまだ逢ってないんだーって。でもツイッターっておもしろいよね。ビジュアルではわからないものが、文字になってにじみ出てる感じ。
Y ツイッター共鳴。時空を超えた感じが、21世紀的よね。私も柴咲さんの「パラレルワールド・リーディング」とかすごく好きなんですよ。 詞とか音楽とかって細胞から癒やしてくれるものが好きなんだけど、柴咲さんの書く詞って、そういう印象があるの。
K 表面からじゃなくて?
Y そうそう。例えば前世とか、先祖とかも含めてキュアしてほしいのね。そういう詞が、とくにオーバーグラウンドシーンにはほとんどなかったから。
K うれしいっす。
最先端のリズムに乗せる詞。
Y で、話題のgalaxias!ですけど、ユニットのきっかけとかそういう話は他でいくらでもしてると思うので、 いきなり詞の話を聞いちゃおうかな。実はすごく気になってる詞があって、8曲目の「J.A.N.」。これ、ちょっと凄いよね。
K 実はこの詞が一番最初に出来たんです。ラフな音が上がってきた時に、私はやっぱカッコイイってアガって、 その瞬間に詞を書きたい衝動に駆られたのがこの曲。あの頃、私の中でいろいろな思いが渦巻いていた時期で、それが元になってます(笑)。
Y あ、そうなんだー。でも、ということは、galaxias!噴火のきっかけになった曲なわけね。
K そうですね。
Y あとやっぱり「CONNECTION」もすごいアガるよね。
K 今回は基本的に、音先行、それも最先端のリズムだから、そこに日本語を乗せるためには今までの柴咲コウ節的なアプローチじゃダメだと気づいたんです。 音に合わせるんだけれど、でもそこに今の私の気持ちを何とかして入れ込むみたいな。それを変化させるときの苦悶はきつかったけど、形になってきた時は楽しくなりました。
Y 制約の中の美、このリズムの隙間をどう言葉で転がすかみたいなのって、マゾヒスティックな自分がゾクゾクしていいよね。
K アハハ、それってかなり大変な作業で、自由があまりにもないと苦しいけど、でも出来たときの快感は凄い。
Y その感じは、「galaxias!」や「Boys & Girls」にも感じたな。ちゃんとリズムに乗ってるもの。
K 「galaxias!」はDECOちゃん節ですね。独特のメロディ、遊んでる感じがあって。
Y 日本語独特のエンヤトット的な言葉の運びを、ブレスや語感の抜き差しで上手にエレクトロやドラムンベースのリズムの隙間にキレイに乗せていくと、その人らしくなると思うんだよね。
K それって究極な感じ。私にとっては目指すべきところかな。
Y でいながら、太陽とか月とかとつながっている感じがないとね。
K うん、ハマリがいいだけじゃなくて、哲学がないとダメでしょ。
Y そう。最近のJ-POPの詞ってこんなふうに書いておけば共感するだろうみたいな、想定共感値だけで書かれているものがすごく多くて、それがまた的外れなことが多いんだよね。 主観的だし、マーケティングを意識しちゃってるから。マーケティングほど当てにならないモノはないと思うんだけど。
K うんうん。
Y だから、やっぱり直感だと思うんだよね。勘を研ぎ澄ませるために日々何をするかが大切だし、そういうセオリーを見つけることが年を重ねる上で意味があることだと思う。 私の場合は、知っているヒトがわーっといる中で、孤独な時間を作るとかね。例えば、携帯とかいじってれば、みんな話しかけてこないじゃない。そうすると、友だちがいる安心感の中で、孤独になれちゃう。その究極は、ホームパーティの茶碗洗い。
K わっかるーーっ! すっごい好き♪ 大好き! 私なんかもう、今盛り上がらなくてどうするって時に茶碗洗いしてるし。
Y アハハハ。そういう時に、詞を書くモチベーションが醸成されてゆくのかも。実はそう思って、このしぶや花魁ってお店つくった部分もあるんですよ。
K へぇ~~。じゃあ私もお店つくろうかな、洗い物ばっかりして、接客しなさそうだけど(笑)。
合い言葉は「ギャラクティック!」。
Y そういえば柴咲さん、夢占いとかしてない?
K 大好き。私ロングスリーパーだから、仕事ないときとか10時間くらい寝ちゃうんですよ。 そうすると夢の数も多くて、深層心理学じゃないけど、自分ってこんなこと考えてたんだとか、あと、そんなものも全部超越した未来とか。それがパラレルワールドなのよ。
Y あぁ、わかるわ。私、心理学を勉強してて、セラピストになりたかったのね。
K それって詞も似てますよね。後で自分にも返ってくるし、ヒトに聴いてもらうものだから、そこに哲学的なものをどう入れ込むかみたいなことが。私は詞にセラピストに近いものを勝手に感じてるかな。
Y セラピスト7割、脚本家3割っていうバランス、そのつなぎ目にDJの自分がいて、フェーダーを操ってる感じ。
K バランスの微調整(笑)。
Y でも、こうやって、こんな話を普通に出来る柴咲さんに出逢えて、ホントよかったなと思ってます。
K こちらこそです。私の場合はパブリックイメージが勝手に先行してて、しかも一々それを壊してこなかったというのがあって。 だから柴咲コウの音楽もそのラインの中にあったんだけど、それが飽和状態になってきてたのね。
Y なるほどね。
K そんなときに、2011年って崩壊と再構築の年で、そしてもう気づくしかない年だったじゃない。 そういう中で、自分の音楽性が明確になり、新しいユニットも組むことが出来て、ちゃんと気づけてるなって。だからいろいろ大変だったけれど、個人的にはよかったかなって思ってます。
Y ギャラクティック! ね♪
K そうなんだよね。今までのモノをぶちこわすということじゃなくて、いるところが変われば、自ずと触らなくなってゆく感じ。
Y 何年この世界が続くかわからないけれど、それを繰り返していれば、たとえ世界の終わりが来ても、今いるところが自分にとっての最果てだと思うことが出来るし。
K うんうん。
Y もしかすると魂だけになったときに、二日酔いのない世界というか、いい乾杯が出来るのかもしれない。
K アハハハ。いや、しつこく生まれ変わりますよ、そこは。そしてまた、いい乾杯を。
Y でも、やっとロンドン~東京からつながりましたねー。
K ホントー。ちょっと遠い交信を経てね♪
初出:「ギンザ」2012年1月号(マガジンハウス刊)
GINZA website
http://magazineworld.jp/ginza/175/
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