衝撃のライブを担当ディレクターがレポート!
2000年5月3日、場所はCBGB。この日、僕はDWRに強烈に打ちのめされた。
ニューヨーク・パンク・ロックの聖地、そして新人アーティストの登竜門的な存在として知られるCBGBに集まったレコード会社の関係者はビール片手に和気
藹々と歓談していた。ヴォーカルのジェイブとMCのグリムを先頭にDWRがステージに現れると、場内の空気がピーンと張り詰め一気に緊張感が増していっ
た。
オープニングは「フィール・ソー・ステューピッド(テーブル9)」。クラブ・ツアーで培われたライヴ・パフォーマンスはオーディエンスを選ばない、力強
く、真っ直ぐなエネルギーを放つ。デビュー前の3月にパパ・ローチのレイド・ザ・ネイション・ツアーのオープニング・アクトを務めた勢いを感じさせる。
ツイン・ヴォーカルの掛け合いに圧倒されたのは勿論だが、ギタリストのエディ・ザ・キッドが、ガリガリに痩せた体、そして黒ブチのメガネで、元リンプ・ビ
ズキットのウェスとウィーザーのリヴァースを足して2で割ったような一見弱々しいルックスに反して、刻むヘヴィーなリフはキャッチーでザクザクと僕の心を
刻んでいく。
アルバムから「リヴ・フォー・ザ・モーメント」、「サムタイムズ・イット・ハプンズ・ライク・ディス」が続いて演奏された。曲間にMCのグリムが彼らの
メッセージを端的に説明する。人生、家庭崩壊などの問題にもしっかりとした考えを持っていることが感じられる。バンドのセールス・ポイント
に”Intelligent lyrics with heavy
sound”という表現があったが、正にその通りだ。DWRのサウンドを気に入った人には是非Lyricsを読んでもらいたい。
「サムタイムズ・イット・ハプンズ・ライク・ディス」はアルバムの3曲目。生後6ヶ月で両親が離婚し、母親の手で育てられたグリムの体験をベースにしたも
の。味わったことの無い父親との関係、構ってもらえなかった幼少期、ずっと無視されてると感じていた疎外感。グリムの想いが、そしてアメリカの沢山の子供
達の想いが込められたトラックだ。
更にアルバムから2曲演奏しているのだが、何だったか思い出せないでいる。それは決して印象が薄かったからではなく、滅茶苦茶に打ちのめされたボクサーのように後半の意識がとんだという状況に似ているのだ。
ショウケースが終了し、メンバーと短い挨拶を交わすことが出来た。ベースのアレックスとドラムのジョーは比較的落ち着いた感じを受けた。ジェイブは目の前
にいる僕と話している時も、遥か遠くに目の焦点が合っているような感じ。グリムは開口一番、「俺は日本のプロレスが好きなんだ」と自分の持ってる日本の知
識をまくし立てる、前へ前へという感じ。ギターのエディ・ザ・キッドは少し近寄り難い雰囲気を漂わせていた。
30分程の短いとの出会いはあまりに強烈で、今でも鮮明に脳裏に浮かぶのだが、DWRを理解するにはまだまだだ。そして、11月26日、アメリカのツアー
のスケジュールを無理矢理割いて実現したショウケース来日。この衝撃を日本でもより多くの人に自分の目で是非確かめて欲しい。