●若くしてモスクワを離れ、アメリカでの生活をスタートさせたピアニスト、ダニール・トリフォノフ。ヨーロッパの伝統に染まりながらも、彼はその探究心、創造的な魂、そしてピアニストのレパートリーを広げることに喜びを感じてきた。
●ジャズやスウィングからモダニズム、ミニマリズム、ポピュラー・サウンドトラックに至るまで、アメリカのレパートリーを通して、トリフォノフのアメリカン・ストーリー、「新世界」での移民の旅を辿る今作は、2部作からなる音楽的自伝の第1弾。続編では、彼が故郷と呼ぶようになったラテン・アメリカの音楽を紹介する。
●メイン曲は、2つの偉大なアメリカのピアノ協奏曲。ジョージ・ガーシュウィンが作曲した大胆でジャジーな「ヘ調の協奏曲」(1925) と、メイソン・ベイツがトリフォノフのために委嘱し、2022年にヤニック・ネゼ＝セガン指揮フィラデルフィア管弦楽団と初演した快活なピアノ協奏曲。
●アーロン・コープランドのピアノ変奏曲(1930)、アート・テイタムが録音した「I Cover the Waterfront」(1949) のトリフォノフによるトランスクリプション、ゆったりと瞑想的でハーモニーが豊かなビル・エヴァンス「When I Fall in Love」、映画『ザ・ファーム 法律事務所』『アメリカン・ビューティー』のテーマなども収録。
アルバムを締めくくるジョン・ケージ「4分33秒」(1952) では、ニューヨークの地下鉄コロンバスサークル駅から都市の喧騒を抜け、緑豊かなセントラルパークへの旅を、フィールド・レコーディングで捉えている。