BIOGRAPHY

CUT COPY / カット・コピー


2008年、永久不滅のアルバム『イン・ゴースト・カラーズ』を引っ提げ、カット・コピーが帰ってきた。
過去のミキシング・マシンで未来のサウンドが織り成される『イン・ゴースト・カラーズ』。それは、つかの間の流行なんて全く通用しない時空で生まれた賜物 なのだ。つまり、1969年でも2020年でも同じように通用する不滅の作品。周りに従うことなく、自分たちのフィーリングのままにつくられたアルバム。 ウィットに富んでいるのにどこかシリアスで、エレクトロなのにオーガニックでもあるサウンド。見事に醸し出されるムードと、その合間に飛び交うフックとメ ロディーで、未来永劫聴き続けられるアルバムが完成した。

複数のジャンルの境界を軽々と飛び跳ねてみせるアルバム『イン・ゴースト・カラーズ』。すでにクラブ・アンセムと化している壮大な楽曲”サック スmeetsハウス”の「ハーツ・オン・ファイア」に、ノイズの効いた「ソー・ホーンテッド」、この2曲を聴き比べてみてもそれは明らかだろう。 カッ ト・コピーにとって、今回のアルバムのテーマは”伝統”(=old)と”斬新”(=new)の2点にまたがる共通点を見いだすことであった。ヴォコーダー を駆使したフレンチ・ハウスのロボ・ポップから、プログレッシヴな高揚感が気持ち良いハーモニー、そしてシューゲイザー(=オルタナの一種。サイケデリッ ク的サウンド)の質感まで。『イン・ゴースト・カラーズ』は、惑星間を自由に飛び跳ねた後、ギャラクシー同士の交差地点に着地した作品と喩えることが出来 るのかもしれない。

このアイディアはTim Goldsworthyを虜にさせた。Tim GoldsworthyとはDFAレコーズのイン・ハウス・プロデューサーで、プログラミングの権威、またシンセ王とも呼ばれる超重要人物だ。そしてその 彼が、今回の『イン・ゴースト・カラーズ』ではプロデューサーを務めている。バンドと話し合った結果、プロジェクトにTim Goldsworthyが加わることとなった。バンド自身がDFAの大ファンで、バンド・リーダーのダン・ホイットフォードはとにかく大好きなレーベル だ、と語っている。かつてTim Goldsworthyが学校を中退してまで、英国中マイ・ブラッディ・ヴァレンタインを追いかけ回していたという事実が明かされ、 『Loveless(邦題:愛なき世界)』に起用されていたキーをピンポイントで指摘できるという事実が明かされた瞬間、両者の間で迷いなく、契約が交わ された。 早速、2007年初期にバンドはニューヨークに飛び、ウェスト・ヴィレッジに位置するDFAのPlantain Studioで『イン・ゴースト・カラーズ』に取り掛かった。6週間というスケジュールでアルバム制作に取り掛かったわけだが、そこではDFA御用達の ヴィンテージ・アナログ機材と目覚まし用のコーヒーが湯気を立てていた。

“Bright Like Neon Love”(日本盤未発売)のリリース以来、カット・コピーが制作してきた数々の楽曲には、以前よりも落ち着いた歌モノが少なくない。 Tim Goldsworthyのレコーディング・アプローチに出会ってからのことを、ダンはこう語る。
「とにかく新しい試みの日々だった。トラックを聴き返してみて、アレンジし直してみたり、ランダムに楽器を手に取って、ペダルとフィルターを組み合わせて プレイしてみたり、どんなサウンドが出来上がるかをとりあえず試してみることが多かったね。それでトラックが完成すればいいけど、そうじゃない場合でも、 それはプロセスの一環で、楽しみながら色んなことを試せたと思っているよ」 
このアプローチが証明することは何か?それは、アルバムの幾つかのトラックは、その場のフィーリングやインスピレーションを形にしたものであり、2度と同 じサウンドを再現することは不可能ということだ。トランス・ブレイクダウンが壮大な楽曲「ファー・アウェイ」から、細切れなシンセベースが効いている楽曲 「アウト・ゼア・オン・ザ・アイス」、無線受信器をダイレクトにアナログ機材に繋がれて制作された「ヴォイセズ・イン・クォーツ」まで、ハートをグッと掴 むシャープでキャッチーなサウンドは、音響のスパークスと呼んでも過言ではない。

“Bright Like Neon Love”から『イン・ゴースト・カラーズ』への躍進ぶりは、一発目の「フィール・ザ・ラヴ」で明らかだ。アコースティック・ギターが心地良いスペース・ ロック・チューン。瞬間的に曲の印象が心に刻まれ、「これはカット・コピーだ」とすぐに分かる作品に仕上がっている”Bright Like Neon Love”がどこかチャーミングのある曖昧さを見せていたのに比べ、『イン・ゴースト・カラーズ』は核心部をダイレクトに突いていて、ソングライティング 技法も練られている。ヴォーカルも聴きやすく、アルバム中どの楽曲にもホイットフォードのハンコが付いている。 ほろ酔い加減と、ストレートなソング チューンが交わり合ってアルバムが完成されている。

カット・コピーの伝説は現在進行形で展開されている。
『イン・ゴースト・カラーズ』、リリース日は12月10日。