BIOGRAPHY

THE COURTEENERS / ザ・コーティナーズ


Bio ザ・コーティナーズはバンド結成以来もっとも大きなギグで2009年を締めくくった。その年の初めに計画されたマンチェスター・セントラル(旧G Mex)を会場としたギグは、アルバムをまだ1枚しか出していないバンドにとってはかなり大胆な行動だったと思われる。しかし1万枚のチケットがわずか5日で完売になったことはファンが確実についていることを証明したと言えるだろう。ギグは大成功を収め、その年でもっとも思い出に残るイベントになったことは確かだ。バンドのフロントマン兼ソングライターのリアム・フレイから感じられるようになった自信と共に、近くリリース予定のアルバム『ファルコン』にも収録されている曲で始まった会場は興奮に包まれた。ある記者は興奮してコメントした。「歓喜に満ちた大観衆からの圧倒的な声援だった。間違いなくマンチェスターでもっとも人気のあるバンドが1年を締めくくるとき、彼らはすでに新しい年をイギリスで最高のロックバンドとして活動することを見据えている」
2008年4月にリリースされ、アルバムチャートのトップ5入りを果たした『セイント・ジュード』に続く『ファルコン』は、このマンチェスター出身4人組にとって大きな前進を遂げる重要な1枚になるだろう。今年度どのバンドの作品よりもその完成度は高い。マンチェスターのAirtightスタジオで作曲とデモ制作が行われ、プロデューサーのエド・バーラー(スウェードやパルプ、ホワイト・ライズらを手がける)と共にベルギーのICPスタジオで7週間ほどレコーディングされた後、ニューヨークのElectric Lady Studiosでマイケル・ブラウアーとミックスされた作品はとにかく美しく、リリック的にも音楽的にも制作者たちの主張をはっきりと出すことを恐れていない。エルボーの壮大で高く舞い上がるようなサウンドスケープ、ザ・ヴァーヴの感情と慰め、そしてロマンチックさ、モリッシーの現実的な誠実さと繊細さを想像してほしい。このアルバムはそれほど素晴らしいのである。

リアムの音楽的な経歴を見ればこれも驚くようなことではない。彼はビートルズ、モータウンそしてガール・グループのThe RonettesとThe Shangri-Lasで育ったのだ。そして姉の持っていたニューオーダーやザ・スミスを聞くようになった。モリッシーとジョニー・マーたちもバンドのファンだ。モリッシーは3月と4月に行うツアー・サポートを既に依頼しており、ジョニー・マーはバンドが今月初めにマンチェスターのXFMでザ・クリッブスをサポートしたリアムを大絶賛している。「彼らが僕らの音楽を好きだと知ってすごく興奮したよ」リアムは話す。「ギターは13才で始めたんだ。ザ・スミスの教則本で弾こうとしたけれど、難しすぎた。だからビートルズのもう少し簡単な曲やブラーとかスウェードとかオアシスを弾いていた」リアムを真剣にさせたのは2001年にザ・ストロークスの’Is This It’を聞いてからだ。「これがやりたかったことだとわかったんだ。彼らはかっこよくて、音も最高だった。俺の中では彼らが基準になった。バンドをやりたくて仕方なかったよ。歌詞を書き始め、15か16で作曲もするようになった。その頃生まれて始めてのギグをやったんだ。パブでたった一人、アコースティックのギターだけでね。それがどんどん大きくなっていった。口コミで広がっていき、18才のときにはプロでやっていけるか真剣に考えるようになった。その頃は最初のアルバムにも入っている’What Took You So Long’ や’Cavorting’などオリジナル曲だけをやっていたんだ。

両親が2人とも教師のリアムはフレッド・ペリーのマンチェスター店でのバイトの合間に作詞をしていた。「店は道路から一歩中に入ったところで、とても雰囲気のいい店で、みんな仲が良かったよ。俺はそこでザ・スミスやザ・ストロークスやモータウンを聞きながら、毎日のように曲を書き、ふと浮かんだ歌詞をメモっていた。’Cavorting’の歌詞はフレッド・ペリーの謹呈シートの裏に書いていたんだ。そしてレコードを聞きながら、今のドラム・ビートかっこよかったから使えるぞとか、それを入れるタイミングなんかもメモしていた。そして家に帰ってから60ポンドで買ったドラム・キットで試していたのさ」

バンドを結成しようと決めたのはそのころだった。そして友人たちに協力を求め、最初に入ったのがドラマーのマイケル・キャンベル。そして次がギターのコナン・ムーアとベースのマーク・コッペリオだ。ザ・コーティナーズとして最初のギグは2006年10月に行ったマンチェスターのRoadhouseだった。

「とにかく早かったよ」リアムは話す。マンチェスターのNight And Day caf?でのギグがその転機となった。「僕らはその日、Blood Red Shoesのサポートとして呼ばれていたんだけど、彼らが突然キャンセルしちゃって、残された僕らがいきなりヘッドラインをやることになってしまった。もちろんお客さんにはキャンセルが知らされていたから、結構残念だったんだ。でも会場に到着するとチケットを買えなかった人が100人くらい外に並んでいた。それを見てマジで僕たちを見に来たのか?と思ったね。信じられなかったよ。そのとき、僕はこれを真剣にやるべきだと感じたんだ。それまで音楽活動はただ楽しみでやっていたような感じだったけれど、それからはもっとプロ意識を持つようになった。これが仕事だみたいにね。だから大学も中退した」

2007年4月にリリースされたシングル’Cavorting’と同年10月にリリースされた’Acrylic’はグループの生々しく、荒削りなライブサウンドをしっかりと捉えている。「まだ結成間もなかったのが功を奏した。僕たち自身がまだ未熟で、計算しながら活動していなかったことだろう。曲をどうしたら聞いてもらえるかなんて誰も考えていなかった。ただ自分たちがやっていて楽しかったら進むという感じだった。部分的にとってもラウドで耳障りでとにかくアグレッシブだ。そういう風に演奏していたしね。リハーサルはガレージでやって、PAもなかったから、歌詞をバカみたいな大声で歌っていた。曲は短くて、鋭く、そして快活で情熱が含まれている。それでも自分たちが間違ったことをしていないことは、ファンの反応で一目瞭然だったよ。俺達のギグではみんなが最前列に来たがり、押しつぶされながらも歌詞を歌い続けるんだから」

そしてデビュー・アルバム『セイント・ジュード』の誕生だ。スティーブン・ストリートにプロデュースされた作品のアートワークはリアム自身が描いたものだ。「シングルを出したときは、店頭に自分たちのレコードが売られているのを見ただけで興奮したよ。僕らの作品を人々が実際に購入できるなんて最高のことさ。とにかく大喜びだったね。でもスティーブン・ストリートがアルバムを作らないかと提案してくれたときはすぐには信じられなかった。彼との仕事は素晴らしかったし、もう言葉で言い表せないほどだ」

‘Not Nineteen Forever’, ‘What Took You So Long’, ‘No You Didn’t, No You Don’t’などのパワーあふれる曲の強さでアルバム・セールスでは4位、ゴールド認定を受けると同時にガーディアン紙初のBritish Album Awardも受賞した。

明らかにリアムは新アルバムの出来を誇りに思っている。当然のことだ。マンチェスターへの愛を込め、モリッシーのツアー最終日、サンセット通りのGrafton Hotelで帰国のための荷造りをしながら書いたという’The Opener’から「女の子を恋しく思った気持ちだよ」という’Scratch Your Name Upon My Lips’や、男性の心のうちをあからさまに表現した’Take Over The World’と’The Rest Of The World Has Gone Home’まで、彼は柔軟さと機知を見事に加えながら、素晴らしく合理的な作詞をしている。’You Overdid It Doll’では友人たちの行過ぎた行為を静かに諭す。’Will It Be This Way Forever?’は彼いわく「戸棚の湿気た茶菓子をトーストして、安ワインで一晩中テレビ映画を観て過ごすんだ。そして朝の6時にお金がなくて壁に座って日が昇るのを見ていたときのことだよ。あの頃はお金だけじゃなく、何もなかったな」というロマンチックな物語だそうだ。しかし彼の真の才能と感情の移入を実感するのは象徴的な’Cameo Brooch’だろう。「腕には親父に殴られた痣のあと、それでも君は心配することなどないと言う。他人を寄せ付けないように生きるのはもうやめるんだ」彼は歌う。「北部っぽいことだとは言いたくない。そうじゃないんだ。でも俺の歌詞には現実的な要素やありふれた日常が確かに取り入れられている」と話す。「なぜならレコードを作るためにスタジオに入り、人々にお金を出して買ってもらうなら、何か意味のあるものじゃないといけないだろう。大事なメッセージを発し、正直で誠意がないといけない」

アルバム・タイトルの『ファルコン』についてはこう話す。「ちょうどアメリカにいるときで、ツアーバスの中から外を眺めていたんだ。そこへ1羽のハヤブサが飛んできて、バスの後を追うようについてきた。とにかく息を呑むような素晴らしい光景で、ハヤブサが宙を回転しながら飛ぶ姿は本当に美しくて、傲慢でさえあった。そいつが岩の上に降り立つのを見たとき、すべてがしっくり1つにおさまった感じがしたよ。ハヤブサのように素晴らしい道を進み、空高く最高の姿で飛び立ってゆくというのが、このアルバムに対する僕らの気持ちだ。僕たちは今まさに翼を広げ、新しい世界へ飛び立とうとしているんだ。完璧なタイミングだよ」

誰もが彼に同感するだろう。