Night&Day ~最高の睡眠と目覚めのためのClassic~
クラシック音楽のもたらす心地よさとは「眠り」or「覚醒」!?
Night&Day ~最高の睡眠と目覚めのためのClassic~ 好評発売中!
1日平均7.5時間の睡眠時間を取ると仮定すると、我々は人生の約3割を寝て過ごす計算になる。この数字を見ても「眠り」がいかに重要であるかが実感できる。そして、今や「眠り」は現代人にとっての最大の関心事の1つになっている。
この「眠り」を科学的に解明する研究を行っているのが、『スタンフォード式最高の睡眠』の著者として名高い、スタンフォード大学医学部精神科の西野精治教授だ。西野教授は、令和元年には 睡眠に関する正しい情報発信のほか、 研究、実証した成果をベースにした睡眠サービスや製品の開発を行う目的で、株式会社ブレインスリープを設立し、その代表取締役に就任した。その世界的な睡眠研究の権威である西野教授が、次なる「眠り」のテーマとして選んだ素材が「クラシック音楽」だと聞けばこれは気になる。世代によっては聴く機会が少なくなったクラシックに、「眠り」というコンセプトを掛け合わせることによって、クラシックとの新しい機会、出会いを創り出したい、そういう想いで、西野教授自身が監修したクラシックのコンピレーション・アルバム「Night & Day~最高の睡眠と目覚めのためのクラシック〜」が発売になりました。今回のアルバム作製・監修に関してその背景を西野教授に伺った。
● クラシック音楽に興味を持ったきっかけはなんでしょう?
僕はもともとロックやポップスを聴いていたのですが、アメリカに渡って「KDFC」というサンフランシスコを中心としたクラシック音楽のFM局に偶然出会ったのです。この放送局はCMを流すこともなく、365日、24時間休みなしで、延々とクラシック音楽を流しているのです。それを通勤途中の車の中や、夕食後自宅で聴くようになってからクラシック音楽が好きになりました。
● 今回クラシック音楽を「眠り」の題材にしようとお考えになった理由は?
先ほどお話した「KDFC」を聴きながら、朝に職場に向かうととても気持ちがよく、さあ今日も一日頑張ろうと思うのです。また、仕事終わりに家に向かう時は1日の疲れがとれる様な曲を選択してくれていて穏やかな気持ちで家路に向かう事ができました。それで常に車の中のチャンネルをKDFCに合わせてクラシック音楽を聴いていました。
今はインターネットで世界中何処の国にいても生中継で同じ時間に同じ曲を聴く事ができるので日本に出張で帰っていた時もコンピューターでKDFCを聴いてアメリカと同じように気分良く1日をスタートさせようとしましたが、いつもの様に朝の気分をかき立てる様な音楽がかかっていなくて、さあ、今日も気分良く仕事を始めようという気持ちにはなれませんでした。
それでふと思ったのは、放送局は朝や昼は元気になる曲を流して、夕方はリラックスする音楽を流しているんじゃないだろうかということです。時差の関係で、アメリカでは夜流している音楽を日本では午前中に聴くことになりますからね。そこで思いついたのが“クラシック音楽の「眠りと覚醒」への影響”です。「眠り」をうながすCDは沢山発売されていますが、昼間の覚醒をあげ、夜間に眠りに導くCDはありません。「眠り」は「覚醒」と表裏一体です。つまり良い眠りを得るためには昼間の活動量をあげ、夕刻からは反対にリラックスする必要があるというわけで、「眠り」と「覚醒」の両方に関するレーティング調査を始めたのです。
● 流石に行動が早い! いったいどのようなレーティング調査を行ったのですか?
まずクラシックの名曲を30曲選んで、20代から60代までの男女164人のモニターさんに、午前中と夕方の2回聴いてもらってアンケートを取りました。アップ系やダウン系の「形容詞」14項目を10段階評価で採点してもらったのですが、その集計結果がとても興味深いものだったのです。形容詞の内訳は14項目です。モニターさんに30曲をランダムに聴いてもらい、各曲で曲から受ける印象が、それぞれの形容詞で、どれくらい当てはまるか、10点満点で評価してもらいました。また同じ30曲を午前と、午後で受ける印象が違うか、また一部のモニターさんには2週間後にも評価を繰り返しもらいました。
● モニターの調査でどういうことがわかったのでしょうか?
集計結果ですが、みなさんがアップ系、ダウン系と感じる曲が全くオーバーラップなしに綺麗に2分化できたことです。アップ系の曲の中にもダウン系の要素が含まれる曲ももちろんあるのですが、アップ系の評価点数からからダウン系の評価点数を差し引いて再集計を行ってもほぼ同じ曲が選択できました。また、こういった主観的な印象は普遍的なもので、曲を聴く時間帯や、時期をあけて再聴しても評価に差はみられませんでした。おそらく、サンフランシスコのFM局はリスナーが感じるこういった特徴を経験的に知っていたのでしょう。
● とても興味深い調査ですね。この結果をどのように活かそうとお考えなのでしょう?
14項目の形容詞の組み合わせはなかなか興味深くて、「元気が出る」けど「ゆっくり」や「くつろげる」などさまざまな評価によって曲の持つ影響力を考えるのはなかなか楽しい時間でした。人々が思い描く曲の個性や性質が見事に表されるのです。今回のモニターでは、曲の一部の短いピースを試聴してもらいましたが、曲のどの部分を聴かせるのかによっても評価はかわってくるとおもいます。今回の調査は、依頼した調査会社にしても全くはじめての経験だったようでとても面白がっていましたね。アロマなどの香りも無限にあるようですので、こういった調査で、万人がリラックスする香りや、覚醒を促す香りがあるのか調査することも興味深いです。
● 音楽と眠りの関係は意味深ですね。
確かに意味深です。これまでにも動物に音楽を聴かせた結果や、モーツァルトの“ゆらぎ”についてなど様々な事例はあります。しかしその効果については、まだまだ議論はつきません。その意味でも、まずは主観的な評価になりますが、個々の個人の曲に対する好みを可視化し、多くの人が共感して、生き生きする曲と、リラックスする曲がはっきり分離でき、その評価に高い再現性があったということは大きな収穫です。
また、睡眠の領域では、主観も非常に重要で、例えば、脳波測定でどんなに深い睡眠が出現していても、主観的な目覚めが悪ければ良い睡眠がとれたとは実感しません。
今回の調査のポイントは、「眠り」だけでなく「覚醒」にも注目したところです。良い眠りを得るためには昼間の良質な覚醒が必要で、睡眠の良し悪しは、午前の生活から始まっています。すなわち「最高の覚醒」が、「最高の睡眠」を導きますので、今回の調査で使用したクラシックの名曲たちは昼夜の双方に働いて相乗効果をもたらすと期待できます。
レーティング調査内容
調査は20代から60代までの男女164名のモニターに、午前中と夕方の2回、クラシックの名曲30曲をランダムに聴いてもらい、その曲を聴いて気持ちが高揚するか、落ち着くか、などの「形容詞」14項目を10段階評価で採点してもらい、集計。
さらに、「同じ30曲を午前と、午後で受ける印象が違うか」などを調査するため、一部のモニターには2週間後に再度アンケートを実施。
調査結果
結果を集計したところ、「活動力があがるアップ系の曲」、「心が落ち着くダウン系の曲」がきれいに二分化しました。
このような主観的な印象は普遍的なもので、曲を聴く時間帯や、時期をあけて再聴しても評価に差はみられませんでした。今回の結果をもとに睡眠に導く音楽、昼間の活力をあげる音楽を選定し、商品化。
今回調査で使用した楽曲
<リラックス傾向にあった楽曲>
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第8番 《悲愴》 第2楽章
サン=サーンス:組曲《動物の謝肉祭》白鳥
ドヴォルザーク:交響曲第9番第2楽章
ショパン:子守歌
ショパン:ピアノ協奏曲 第1番 第2楽章
マーラー:交響曲 第5番 第4楽章
チャイコフスキー:弦楽四重奏曲 第1番 第2楽章:アンダンテ・カンタービレ
バッハ/グノー:アヴェ・マリア
モーツァルト:ピアノ協奏曲 第21番 第2楽章
バッハ:管弦楽組曲 第3番 第2曲:エア
<覚醒傾向にあった楽曲>
ビゼー:《カルメン》前奏曲
メンデルスゾーン:劇音楽《真夏の夜の夢》結婚行進曲
バーンスタイン:《キャンディード》序曲
ベートーヴェン:交響曲 第7番 第4楽章
モーツァルト:歌劇《フィガロの結婚》序曲
ヘンデル:《王宮の花火の音楽》組曲 第2番 第12曲:歓喜
モーツァルト:交響曲 第41番《ジュピター》 第4楽章
チャイコフスキー:交響曲 第6番《悲愴》 第3楽章
ヘンデル:《水上の音楽》組曲 第2番 第12曲:アラ・ホーンパイプ
モーツァルト:セレナード第13番《アイネ・クライネ・ナハトムジーク》第4楽章
ヴィヴァルディ:協奏曲集《四季》から 第1番《春》 第1楽章
エルガー:行進曲《威風堂々》 第1番
<中間の傾向にあった曲>
ベートーヴェン:交響曲 第7番 第2楽章
ビゼー:《アルルの女》第2組曲 第3曲:メヌエット
グリーグ:《ペール・ギュント》第1組曲 第2曲:オーセの死
リムスキー=コルサコフ:交響組曲《シェヘラザード》第3楽章:若い王子と王女
チャイコフスキー:バレエ組曲《くるみ割り人形》こんぺい糖の踊り
ベルリオーズ:幻想交響曲 第4楽章:断頭台への行進
ビゼー:《カルメン》前奏曲
グリーグ:《ペール・ギュント》第1組曲 第1曲:朝
ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ 第5番 《春》 第1楽章