クラシック百貨店 解説
クラシック百貨店 解説
〜器楽曲編〜
1位.J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ&パルティータ BWV1001~1006
「全てのヴァイオリニストにとっての試金石」
J.S.バッハが遺した無伴奏作品は、『無伴奏チェロ組曲』『無伴奏フルートのためのパルティータ』、そしてこの『無伴奏ヴァイオリン・ソナタ&パルティータ』の3種のみ。そのいずれも、それぞれの楽器を象徴する名曲であるところがJ.S.バッハの偉大さだ。単独で演奏されることも多い『シャコンヌ』を含むこの作品は、ヴァイオリンに可能なあらゆる技巧が盛り込まれ、すべてのヴァイオリニストにとっての試金石であり指標とも言える存在だ。
2位.J.S.バッハ:ゴルトベルク変奏曲 BWV988
「不眠解消用に書かれた目が覚める程の人気曲」
不眠症に悩むカイザーリンク伯爵のために作曲し、弟子のヨハン・ゴットリープ・ゴルトベルクに演奏させたことから《ゴルトベルク変奏曲》と呼ばれるようになったこの作品は、美しいアリアと30の変奏曲で構成される人気曲。カナダの天才ピアニスト、グレン・グールド(1932-1982)がデビュー・アルバムに収録したことでも有名で、その録音は映画『ハンニバル』にも使われた。近年はピアニストにとって重要なレパートリーとなっている。
3位.J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲 BWV1007~1012
「カザルスが発掘したチェロのためのバイブル」
J.S.バッハがケーテン時代(1717-1723)に作曲したとされるこの作品は、「プレリュードと舞曲」のスタイルで書かれた無伴奏チェロのための6つの組曲だ。当時は合奏の際の通奏低音を担う楽器とみなされていたチェロのために6曲の無伴奏組曲が書かれたことはまさに画期的。その後、忘れ去られていたこの名曲をスペインの伝説的チェリスト、パブロ・カザルス(1876-1973)が再発見。以来、チェリストにとって最重要のレパートリーとなった。
4位.ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第8番 ハ短調 作品13 《悲愴》
「ベートーヴェン自らその名を付けた初期の傑作」
ベートーヴェンはその生涯に32曲のピアノ・ソナタを遺しているが、自ら名前をつけた作品は、第8番『悲愴』と第26番『告別』の2曲のみ。初期の頂点をなす傑作『悲愴』は、若きベートーヴェンの名を世に知らしめる原動力となり、第14番『月光』、第23番『熱情』とともに「3大ソナタ」の一角を担う人気曲としても有名だ。美しく印象的な第2楽章は、ビリー・ジョエルの『THIS NIGHT』に流用される他、さまざまなシーンに使われている。
5位.ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第14番 嬰ハ短調 作品27の2《月光》
「“ロマンティスト”ベートーヴェンを知る名曲🌕」
1801年、ベートーヴェン31歳の年に作曲されたこの作品の愛称『月光』は、ベートーヴェンと同時代の音楽評論家で詩人ルートヴィヒ・レルシュタープの「スイス・ルツェルン湖の月光に揺らぐ小舟のようだ」というコメントに由来する。日本に於いては月光の下で散歩していたベートーヴェンが、盲目の少女の弾くピアノのメロディをもとに作曲したという『月光の曲』という物語もあり。優雅な第1楽章から疾風怒涛の第3楽章に至る印象は強烈だ。
6位.ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第23番 ヘ短調 作品57《熱情》
「ベートーヴェンの熱き思いが吹き荒れる傑作」
「3大ピアノ・ソナタ」の1つにして、ベートーヴェン中期の最高傑作と呼ばれる『熱情』は、同時期に作曲された交響曲第五番『運命』同様、ベートーヴェン作品の中でも最も激しい音楽の一つだ。第一楽章には『運命』冒頭と同じ強烈な4つの音が執拗に刻まれ、闘争的な情熱が吹き荒れる音楽は、ハンブルクの出版社クランツが出版時に付けたことによって定着した『熱情』の愛称そのもの。古今東西の腕利きピアニストが挙って演奏する人気曲。
7位.ドビュッシー:ベルガマスク組曲
「音楽による情景描写の最高傑作『月の光』を聴く」
ドビュッシーの全てのピアノ曲の中でも、最も有名な作品の1つ『月の光』を含む全4曲からなるピアノ曲集『ベルガマスク組曲』が出版されたのは1905年。若きドビュッシーの傑作だ。「ベルガマスク」と言うタイトルは、イタリア滞在中に受けたベルガモ地方の印象によるもので、当時ドビュッシーが好んでいたヴェルレーヌの詩にも触発された作品だと言われている。冨田勲のシンセサイザーによる編曲盤(1974年)もチェックしておきたい。
8位.ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第32番 ハ短調 作品111
「第2楽章で閉じる生涯最後のピアノ・ソナタ」
ベートーヴェンが遺した32曲のピアノ・ソナタの最後を飾るこの曲が出版されたのは1922年。ベートーヴェン52歳の年だ。2楽章までで終わることについては、ベートーヴェン自身が「時間がなかったから」と語ったというシントラ−の怪しい証言を始め、作曲当時から様々な憶測が飛び交った。しかし、これ以上なにも付け加える余地のない境地にまで達したというのが正解だろう。ベートーヴェン最晩年の枯淡の境地を心ゆくまで味わいたい。
9位.シューベルト:ピアノ・ソナタ 第21番 変ロ長調 D960
「シューベルトが死の直前に遺した音楽とは」
『遺作』として知られるこの曲は、シューベルトがこの世を去る1828年に相次いで書かれた3曲のピアノ・ソナタ(19番、20番&21番)の最後を飾る作品だ。これらの作品は、シューベルトの死から10年後に「フランツ・シューベルト最後の作品(3つの大ソナタ)」としてディアベリ社から出版されている。わずか31歳の生涯の最後に、全く演奏される希望も無しに書かれた音楽がいかなるものか。胸が締め付けられるような音楽がここにある。
10位.ショパン:バラード 第1番 ト短調 作品23
「羽生結弦選手を金メダルに導いた勝負曲⛸」
ショパンは、21歳の1831年から1842年までの11年間に4曲の「バラード」を書いている。傑作の誉れ高い4曲の中でも最初に手掛けた第1番についてシューマンは「ショパンの全作品の中で最も好きだ」と語っている。その印象的なメロディは、映画『戦場のピアニスト』の中で効果的に使われたほか。近年は、フィギュアスケートの羽生結弦選手が、2018年の平昌オリンピックのショートプログラムで使用し、金メダルに輝いたことも懐かしい。
11位.ショパン: 舟歌 作品60
「ついに見ることのなかったヴェネツィアの海」
『舟歌』を作曲した1845年から46年当時のショパンは、長年連れ添った愛人ジョルジュ・サンドとの関係が破局寸前となり、持病も悪化して心身ともに疲れ果てた状態だった。憧れながらついに一度も見ることのなかった風光明媚なヴェネツィアの海を思い描いた『舟歌』からは、ショパンの深い悲しみと共に不思議な安らぎが感じられる。同時代の文筆家フォン・レンツが「これは2人以上の前で弾いてはならない曲だ」と語った言葉も心に響く。
12位.ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第31番 変イ長調 作品110
「フーガ好きには堪らない最晩年の境地を聴く」
大作『ミサ・ソレムニス』や『ディアベリの主題による33の変奏曲』作曲の合間に書かれたこの作品の完成は1821年。ベートーヴェン51歳の年の作品だ。「後期3大ソナタ」と呼ばれる第30番、31番&32番の中核をなすこの曲の特徴は「フーガ」にある。晩年のベートーヴェン作品に多く見られる「フーガ」を最もリアルに体験できるこの作品は「フーガ」好きには堪らない。ベートーヴェンが到達した究極の世界を味わう時間が愛おしい。
13位.モーツァルト:ピアノ・ソナタ 第11番 イ長調 K.331《トルコ行進曲付き》
「ピアノ学習者が最初に親しむモーツァルト」
モーツァルトが遺した18曲のピアノ・ソナタの中でも最も有名な第11番。その理由は第4楽章フィナーレに置かれた『トルコ行進曲(トルコ風に)』だ。単独で演奏されることも多い『トルコ行進曲』は、作曲された当時流行していた東方風のスタイルを、モーツァルトならではのシンプルかつ勇壮なテーマに仕上げた傑作中の傑作だ。同時期にベートーヴェンも劇付随音楽『アテネの廃墟』の中に『トルコ行進曲』を挿入しているのも興味深い。
14位.シューマン:クライスレリアーナ 作品16
「愛妻クララへの無限の愛が溢れるピアノ曲」
“クラシック史上最高のロマンティスト”と謳われるシューマンの、愛妻クララを想う気持ちが溢れ出したかのような音楽が『クライスレリアーナ』だ。1838年にクララに宛てた手紙には「今僕の中にあるこの音楽のなんと美しいことか。これは君への思いが主役だ。これを君に捧げよう。そこに自分の姿を見出したら君はきっと清らかに微笑むだろう」という熱い熱い言葉を連ねている。8曲からなるこの傑作は、同年齢のショパンに献呈されている。
15位.J.S.バッハ:トッカータとフーガ ニ短調 BWV565
「一度聴いたら忘れられない強烈な音楽がここに」
J.S.バッハの数多いオルガン曲の中でも最も有名な作品がこれだ。オリジナルとされるオルガン演奏の他に、ブゾーニによる“ピアノ編曲版”や、ストコフスキーによる“オーケストラ編曲版”が親しまれていることからも人気の高さが伺える。しかしバッハの直筆譜が存在しないことから偽作説も根強いほか、本来はヴァイオリン曲なのではないかという説まで存在する。何にしても、一度聞いたら耳について離れない強烈な音楽の魅力は永遠不滅だ。
16位.ショパン:24の前奏曲 作品28
「バッハを敬うショパンが描いた24の小宇宙」
1839年1月にマヨルカ島で完成されたこの曲集は、J.S.バッハの「平均律クラヴィーア曲集」に敬意を表し、それに習って24曲がすべて異なる調性で書かれたピアノ作品だ。有名な第15番『雨だれ』や太田胃散のCMでおなじみの第7番は、単独で演奏されることも多いショパンの代表曲であるなど、短くも美しい24曲のレベルは極めて高い。「ショパンの生涯」の作者J.ハネカーは「バッハを深く愛した者にしか書けない作品だ」と記している。
17位.ショパン:練習曲集 作品10&作品25
「ショパンがリストに捧げたピアニストの試金石」
『練習曲』と言う名前からは想像もできないほどの高い芸術性を持つこの作品は、『24の前奏曲』と並ぶショパンの金字塔だ。『別れの曲』や『黒鍵』に『革命』などの有名曲を含むこの曲集は、まさにピアノという楽器の凄さを体験するためにぴったり。当然映画やCMに使われることも数多い。近年では2018年の映画『グリーンブック』の中で使われた『木枯らし』の印象が鮮烈だ。作品は1歳年下の友人フランツ・リストに献呈されている。
18位.ラヴェル:亡き王女のためのパヴァーヌ
「24歳のラヴェルによる優雅で気品に満ちた出世作」
ラヴェルがパリ音楽院在学中の24歳の時に書かれたこの曲は、17世紀スペインの宮廷画家ベラスケスの『マルガリータ王女』の肖像画にインスピレーションを受けて作曲した作品だ。16世紀初頭の舞曲であるパヴァーヌを主題に用いたこの曲の意味は、王女の哀悼ではなく、スペインの宮廷で小さな少女が踊る様子が描かれたもの。初演から8年後の1910年にラヴェル自身の手で管弦楽用に編曲され、さらに広く親しまれるようになった名曲だ。
19位.ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第21番 ハ長調 作品53《ワルトシュタイン》
「過酷な人生をねじ伏せる中期の傑作ソナタ」
20代後半から発症した難聴に苦しむベートーヴェンは、過酷な運命との戦いを決意。『クロイツェル・ソナタ』や『交響曲第3番』などの傑作を次々に生み出していく。その時期に書かれた『ワルトシュタイン』の完成度はまさに中期の傑作に相応しい。献呈されたワルトシュタイン伯爵はベートーヴェンの才能を愛し、故郷ボンからウィーンに旅立つベートーヴェンに対し「モーツァルトの精神をハイドンの手から受け取りなさい」と祝福した恩人だ。
20位.リスト:ラ・カンパネッラ (パガニーニの主題による大練習曲 S.141から第3番)
「鐘の音が鳴り響くリスト最高の人気曲」
ヴァイオリンの鬼才パガニーニの超人的な演奏を聴いて衝撃を受けたリストが「私はピアノのパガニーニになる」と決意したことがきっかけとなって生まれたこの曲は、リストの作品の中でも最も有名なピアノ曲だ。パガニーニの「ヴァイオリン協奏曲第2番」の第3楽章のメロディ(鐘に模したロンド)をピアノ用に編曲したこの作品は、パガニーニの原曲を凌ぐ程の技巧が盛り込まれ、カンパネラ(鐘)の鳴り響く様子が華麗に描かれてる。
21位.J.S.バッハ:2声のインヴェンション 第1番
「バッハの深遠な世界の扉を開く名旋律」
《平均律クラヴィーア曲集》とともに、J.S.バッハが音楽教育を目的とした作品の代表作が「インンヴェション」だ。ピアノ学習者が最初に接するこのバッハ作品の作曲当時、長男ヴィルヘルム・フリーデマン・バッハが9歳程度だったことから、彼の教育のために作曲したことが想像される。全15曲の《2声のインヴェンション》の冒頭を飾る第1番のシンプルなメロディと後に続くフーガの美しさは、バッハの深遠な世界の入り口に相応しい。
22位.ショパン:夜想曲 第20番
「映画『戦上のピアニスト』で名高い遺作」
今では、第2番(作品9の2)と並ぶ「夜想曲(ノクターン)」の人気曲に数えられるこの曲が作曲されたのは1830年。しかし出版されたのはショパンの死の26年後の1875年であることから「遺作」と呼ばれるこの曲は、「ピアノ協奏曲第2番」を練習する姉のために作曲した小品だったようだ。この曲を一躍有名にしたのが2002年公開の映画『戦上のピアニスト』。哀愁に満ちたメロディは、今やショパンの代名詞として親しまれている。
23位.ドビュッシー:亜麻色の髪の乙女
「印象主義音楽の美しさがここに」
フランス印象主義を代表する作曲家ドビュッシーは、1巻&2巻 各12曲、計24曲の前奏曲を遺している。《前奏曲集》のタイトルはショパンの同名の作品を意識したものだが、ショパン作品が刹那的な音楽であるのに対し、ドビュッシーの方はタイトルに基づいたものであるところに違いがある。フランスの詩人ルコント・ド・リールの詩にちなんだ第8曲〈亜麻色の髪の乙女〉は、〈月の光〉と並ぶ人気曲にして、冨田勲のシンセサイザー編曲でも名高い名作だ。
24位.シューベルト:即興曲 作品90 D899 第3番
「儚さと切なさに満たされた歌詞のない歌」
ドイツ・ロマン派を代表する作曲家シューベルトの音楽の根底には常に「歌」が流れていた。それは作品90と142の2つの《即興曲集》においても同様だ。作品90が出版されたのは1827年12月10日。シューベルト30歳の年ということは、あまりにも早すぎる死の1年前という事実に胸が詰まる。変ト長調で書かれた第3番は、左手の控えめなアルペジオに支えられながら優雅で静かなメロディが、「無言歌」の佇まいの中に飛翔する。
25位.シューマン:子供の情景 作品15 ~トロイメライ
「若い心を保った素敵な大人たちへ贈りたい」
クラシック史上最高のロマンティストと呼ばれるシューマンの功績は、優れた子供のための作品を数多く遺したことと言えそうだ。その代表作にあたる《子供の情景》は、第1曲〈見知らぬ国〉から第13曲〈詩人は語る〉に至るまでが、K.H.ヴェルナー曰くの「若い心を保った大人たちのための曲集」であるところが意義深い。中でも第7曲に置かれた“小さな夢”を意味する〈トロイメライ〉の美しさは格別。単独で演奏される機会の多い名旋律だ。
26位.シューマン:幻想曲 ハ長調 作品17
「敬愛するベートーヴェンとクララへの想い」
シューマンが遺したピアノ曲の中で、最も規模が大きく力強い作品が《幻想曲》だ。1836年のベートーヴェン没後10年に敬意を表して作曲されたこの曲は、当初ベートーヴェン風に3つの楽章を持ったソナタ形式だったところ、クララとの恋愛感情とその苦悩を挟み込んで「幻想曲」としたあたりが“稀代のロマンティスト”シューマンらしい。曲の冒頭には「一つの静かな音がひそやかに耳をそばだてる人に響く」というシュレーゲルの詩が添えられている。
27位.ショパン:ピアノ・ソナタ 第3番 ロ短調 作品58
「優しさと激しさを併せ持つ最円熟期の名作」
ショパンは3曲のピアノ・ソナタを書いている。18歳の頃、作曲練習用として書かれた第1番は、生前出版されずに「遺作(作曲者の死後に出版された作品)」となり、現在コンサートで演奏される機会も殆どない。一方有名な〈葬送行進曲〉を含む第2番と、その5年後の1844年の夏に書かれたとされる第3番は、共に愛人ジョルジュ・サンドのノアンの家に同居していた時代の作品で、ショパンの最円熟期における名作中の名作だ。
28位.ショパン:ポロネーズ 第7番 変イ長調 作品61《幻想ポロネーズ》
「最晩年のショパンが描き出した美の極地」
ショパンが生前出版した8曲のポロネーズの中でも、ひときわ独創的な名作と謳われる作品がこの《幻想ポロネーズ》だ。1845年秋から翌年の秋にかけて作曲されたこの曲は、持病の悪化と愛人ジョルジュ・サンドとの関係悪化という、肉体的にも精神的にも追い詰められた時期の作品だ。その状況は、ショパン自身が語る「書かれたる苦悩」という言葉からも伺える。しかし祖国ポーランドの民族色を纏った音楽は、永遠不滅の美しさを放っている。
29位.リスト:ピアノ・ソナタ ロ短調
「時代を超越したリストならではの名作」
従来のピアノ・ソナタとは一線を画す自由な手法で書かれたこの作品は、当時の有力な批評家や大音楽家たちから散々にけなされたにもかかわらず、今やピアニストにとっての重要なレパートリーとなっていることが興味深い。まさに時代を超越した天才リストならではの名作だ。後にリストの義理の息子となるワーグナーによる「あらゆる概念を超えて、美しく大きく好ましく気高い」という言葉こそが、この作品の本質をかたっているに違いない。
30位.パガニーニ : 24のカプリース 作品1
「多くの作曲家たちに影響を与えた驚異の名作」
演奏史上類を見ない超絶技巧を獲得し、ヴァイオリンからあらゆる可能性を引き出した鬼才パガニーニ。自らの演奏を真似されることを恐れ、自作の楽譜を焼き捨てたという伝説まで残るこの怪人が、生前出版した唯一の作品がこれだ。ヴァイオリンの演奏技巧をふんだんに盛り込んだこの作品に魅せられたリストが《パガニーニ大練習曲》を書き、ブラームスやラフマニノフは変奏曲を手掛けたというきっかけになった名曲の凄さをご堪能あれ。