カーペンターズは英語教育に最適? デイビッド・セインさんに聞きました
カーペンターズの17年ぶりの新作『カーペンターズ・ウィズ・ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団』が発売されたことを記念して、日本では英語の教材として学校や英会話教室でも取り上げられることが多いカーペンターズについて、英語教育についての多数の著作を持ちエートゥーゼット英語学校の校長を務めるデイビッド・セインさんに伺いました。
カーペンターズは日本人にとって、英語教育に向いていると言われますがどう向いているのでしょうか?
英語の音楽はネイティヴにとっても単語が聴きとりづらいことが多々あります。その点、カーペンターズはとても聴きやすいんです。聴きやすいだけでなくて使っている言葉が日常的なものなので、そのまま覚えて使っても大丈夫というのがとても多く、そういう意味で英語の勉強にはとてもよいと思います。
他のアーティストですと、ネイティヴでも分からない歌詞の曲はありますか?
意味が分からなくてもそのノリが好きというのは結構ありますね。他のアーティストはどうしてもスラングが多いものがあります。何を言っているか分からない、老若男女全員に分かってもらわなくてもいい、と歌っている人も思っている部分もあるんだと思います。それに比べてカーペンターズは本当に分かりやすい英語というだけではなく、中学生の英語の教科書にでてくるような言葉を使った、フレーズや言い回しが多いんです。
カーペンターズの発音やアクセントはどうでしょう?
カレン・カーペンターはきれいな発音や発声で有名で、歌い方が分かりやすくていいですね。使っている単語についても思い出す限り難しい単語はないと思います。フレーズも短いものが多いですね。長くて途中で分からなくなる文章もないように思います。
カーペンターズの曲の中で、特に英語教育としておすすめの曲はどれでしょうか?
どれもよいですが「トップ・オブ・ザ・ワールド」がよいと思います。私も好きで歌詞は暗記しているくらいです。”I’m on the top of the world” などは頭に残るフレーズですね。「イエスタデイ・ワンス・モア」もいい曲です。日本の中学校英語に近いような英語で書かれています。意図的にそうしたわけではないと思いますが、簡単な言葉で書いているのに、深い意味がある、とてもいい曲と思います。
おすすめのフレーズはありますか?
「トップ・オブ・ザ・ワールド」の“And the reason is clear, it’s because you are here.”はとてもいいです。韻も踏んでいて、素敵な言い回しです。”the reason is clear” を覚えるのもおすすめです。 “The reason is clear.”は「理由ははっきりしている」という意味です。そして”it’s because”「その理由は」”you are here”「あなたがここにいるから」と続きます。
英語の曲を覚えるのは、英語学習によいのでしょうか?
文法で覚えるものや聴き流すものなど英語教育には様々な学習法があるのですが、フレーズで覚えるのがいいと思います。フレーズを覚えると、それをいろいろな場面で使えるようになるんです。
音楽とは英語教育にとって何が一番いいのでしょうか?
数学など他の学問は分からないのですが、英語は嫌いになると絶対頭に入ってきません。おそらく言語はそういうものだと思います。英語がペラペラで英語が嫌いという人は聞いたことがない、そういう人と会ったこともないですね。やはり好きになるのが一番です。音楽が英語を好きになるきっかけになれば、とてもいいと思います。
曲を使った勉強法でリスニング、歌う、書き取る、のうち何が一番いいのでしょうか?
全部いいと思いますね。歌詞を聴きとって書き取るのは中々難しいですが、やれば勉強になるとは思います。でも、それよりも曲を聴いて一緒に歌うのがいいと思います。何も考えずに歌うよりも、こういう意味があるのだなと確認して、気持ちをこめて歌うのもいいですね。
勉強として楽曲を聴くときは、どれくらいの頻度で聴くといいでしょうか?
英語は暗記が大事ではあるので、歌を暗記するのはとてもいいと思います。一度暗記すれば、それがどんどん自分の英語になるんです。「暗記しないといけない!」と思ってしまうと、苦痛になってしまうので、楽しく聴いて歌っているうちに暗記してしまうのがいいと思います。
歌うときは、歌詞を見ながらか、暗記してなのかどちらがいいでしょうか?
歌詞を見ながら歌うのがいいと思います。英語はスペルと発音が結構違います。” Know” はなぜか発音しない” K” があるのか最初は悩みますよね。聴きながらスペルを見ると、こういうときは「クノウ」ではなくて「ノウ」というのか……と、分かってくるのです。
カーペンターズの英語が分かりやすくても、初心者の方だと聴きとれなかったりすると思いますが、流し聴きでもいいでしょうか?
聴いていて意味が分からないこともあるかもしれませんが、とりあえず一回そのまま暗記というか、歌えるようになるといいですね。カーペンターズの歌の中では、そんなに難しい英語はないと思います。様々な英語を勉強していくと、同じ英語とまた出会うので、あぁこうやって使うのか、こういう意味だったのか、と分かってくると思います。
カーペンターズは分かりやすい単語やフレーズを使っているので、アメリカでは子供っぽいとか思われることはなかったのでしょうか?
そう思う人はあまりいないと思いますね。歌詞は単純ですが、よく考えるとそこに普遍的な意味があるので、本当に歌作りが上手いなと感じます。
カーペンターズの英語はどれくらいの学習レベルの人向けでしょうか?
初心者にも上級者にも向いています。上級者でも中々発音が完璧な人はいないので、発音を少しでもよくするには、カーペンターズの歌をよく聴いて暗記するのもいいと思います。フレーズも単純でありながら幼稚というわけではないので、暗記しても損ではないです。
生徒の方からこういう曲を聴いたらいいですかという質問はされますか?
「音楽を聴くことは本当に勉強になるんですか?」とはよく聞かれます。音楽の種類によっては、意味がよく分からない、これは英語なのかというぐらいに崩れている歌詞もあるので、いい歌詞や普通の会話に近い歌詞であれば英語の勉強にとってはいいと思います。
今は過激な歌詞ものも多いので、実際にネイティヴの前で口に出してしまうと大変なことになる単語やフレーズもあります。英語のスラングには汚いものがいっぱいあるので、上級者でもそれを学習教材として使うのは避けたほうがいいかなと思います。カーペンターズはそういう歌詞もないので安心です。他のアーティストの楽曲では説明が難しい単語がでてくることがありますが、カーペンターズにはそれが全然ないです。
先生は日本語が流暢ですが、日本の曲なども聴かれましたでしょうか?
昔の曲になってしまいますが、イルカがとても好きでした。サザンオールスターズやさだまさしもよく聴きました。
先生がネイティヴではない日本語を学ぶときに歌から覚えるのは効果的でしたか?
よかったと思いますね。発音は誰かの話し方を真似するのがいいです。ただ、普通の喋りを真似するというのは中々難しいし、繰り返し聴いてもそんなに楽しくないですよね。でも歌であれば、それができるので、そういう意味では歌で英語を勉強するのはとてもいいと思います。
ちなみにデイビッド・セインさんとカーペンターズとの出会いは?
小学生か中学生の頃、いとこが持っていたアルバムで聴いたのが最初の出会いです。高校生のときに一度コンサートに行ったことがあります。ステージからとても遠い席で蟻のようにしか見えなかったですが、とてもきれいな声で、いい思い出ですね。
「デイビッド・セイン オフィシャルサイト」
http://www.atozenglish.jp
英会話教室
https://www.smartenglish.co.jp/school/
デイビッド・セイン Twitter
https://twitter.com/david_thayne