BIOGRAPHY
BLACK TIDE / ブラック・タイド
ブラック・タイドにとって、進化とはほとんど成長することと同意義である。
バンドのDGC/インタースコープからのセカンド・アルバム『Post
Mortem』で、マイアミの4人組は危険なまでに人をとらえて放さないハード・ロックのコレクションを作り上げ、そのサウンドを発展させ、深めている。
ブラック・タイドは2008年にデビュー・アルバム『Light From
Above』が出て以来ノンストップでジェットコースターのようなツアーを続けており、そのせいで2枚目のアルバムには間違いなく大きな成長が現れている。慌ただしいショーを続けながら、バンドは2008年にはスリップノットやディスターブドとともに第一回ロックスター・メイヘム・フェスティバルに参加、アヴェンジド・セヴンフォールドとともに全米をツアー、オズフェスト2008ではメインステージで演奏、ワープト・ツアー
2009でも注目を浴びた。海外でも彼らはアイアン・メイデン、メタリカといった伝説的バンドとステージを分かち合った。一方、ローリング・ストーン誌はブラック・タイドを「2008年のベスト・ルーキーズ」のひとつとしてフィーチャー、ケラング誌は「ベスト・インターナショナル・ニューカマー」と賞賛した。また、『ロック・バンド』から『NHL
09』まで数多くのビデオ・ゲームがブラック・タイドの曲を使った。当時全員十代だった4人のメンバーは、ミュージシャンとして一緒に、そして個々に成長を続け、このセカンド・アルバムへの道を固めたのである。
「最初にツアーに出て以来、オレたちはすごく経験を積んだよ」とフロントマンのガブリエル・ガルシアは語る。「いろんなクレイジーなことにぶち当たって、あっという間に成長するんだ。そいつが間違いなくこのアルバムに影響したはずだよ」
バンド──ガブリエル・ガルシア(ギター,ボーカル)、スティーヴン・スペンス(ドラム)、オースティン・ディアス(ギター)、ザック・サンドラー(ベース)──は『Light
From
Above』を衝撃的なものにしていた生々しいエッジを保ちつつ、サウンド面ではプログレ的な様式とふんだんなメロディでもってすべてをシャープに磨き上げた。
新しいマテリアルはバンドのクリエイティブ面の拡大を示している。ブラック・タイドのメンバーは過去2年の間一緒にアルバムの曲作りに取り組んで、その技術に磨きをかけた。ファースト・シングル「That
Fire」はアコースティックのイントロとシンコペートするポリリズムのグルーヴが刺激的だし、「Bury
Me」はハードなリフが暴力的なまでに縦横無尽に駆け回り、きわめて精緻な狂気で聞き手を圧倒する。強烈なパンチを詰め込んだ「Ashes」や、スティーウンがギターで書いたセンセーショナルな曲「Walking
Dead Man」もある。「Let It
Out」はブラック・タイドが結成したその日からずっと引き継がれている力強いパンク・スピリットに満ちあふれている。
「オレたちはライターとして、ミュージシャンとして,人間として,友だちとして成長したんだ」とガルシアは言う。「何より重要なことに、オレたちはぐっとひとつのファミリーっぽくなった。オレたちの活動に関するすべてがはるかにタイトになって、今回は全員が曲作りに参加した。それがアルバムのヴァイブにものすごく大きな違いを生んだのさ」
ブラック・タイドの驚くべき進歩はすぐさま見て取れる。ガルシアはバンド独特の攻撃性に新しいエッジを加えたものとして無数の影響を挙げる。「このアルバムのために、オレはパンテラやメタリカと同様にビートルズやU2を聞いていたんだ」とガルシアは言う。「影響はあちこちに広がっていたよ。みんなそうでなくちゃいけないと思う。そうすればより広いサウンドをクリエイトできるからね。クラシックなバンドを聞くことで新しいソングライティングの仕方に目が開かれたよ。オレたちは箱の外に飛び出すのを恐れちゃいなかった。だからその結果、このアルバムには境界線ってものが一切ないんだ」
箱の外に飛び出したひとつの例が「Into the
Sky」だ。胸に迫るアコースティックの曲は、ブラック・タイドがいかに多才で、しかもいかに説得力にあふれているかを示している。「あの歌は誰かを失ったことのある人に捧げているんだ。このアルバムの歌詞のひとつひとつが何かを意味しているから、ほんとにファンにはじっくり聞いてもらいたいな。そうすればぐっと深く,リアルなものになるからね」
ブラック・タイドのセカンド・アルバムは2009年10月から制作が進められていた。バンドはプロデューサーのジョシュ・ウィルバー(ラム・オブ・ゴッド)とともにカンザスのスタジオにこもり、最終的に『Post
Mortem』となる楽曲のデモを作った。濃密なプリロダクションの後、2010年5月、彼らはウィルバーとガース・リチャードソン(レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン、マッドヴェイン)とともにニューヨークのスタジオに入り、この凝縮力があり、かつダイナミックなセカンド・アルバムを作り上げることに邁進したのである。
オースティン・ディアスの参加もさらなる進化につながった。彼は正式には2008年のメイヘム・フェスティバルのときにバンドに加わったのだが、『Post
Mortem』が彼にとってバンドと一緒に曲作りをした初めての作品となった。何年もの間音楽学校でクラシックの訓練を受けて経験を積んだディアスのエレガントなプレイは『Post
Mortem』に計算された洗練をもたらした。ザック・サンドラーは説明する「クラシックの影響を受けたオースティンのライティングは異なるものの、今やオレたちのスタイルのすごく大きな要因になっているんだ。ゲイブとコラボレートする彼の能力は信じられないほどだよ。彼らはガッチリ組んで、オレたちの今まででもっとも複雑な音楽を一緒に書き上げたんだ」
「セオリーを学ぶのは、音楽のことをもっと考える助けになるんだ」とディアスは明かす。「もっと数学的になるし、言うなればもっと『プログレ』的になるんだ。違う拍子記号で考えるようになってくる。オレは音楽を手探りするように感じているから、ジャムがちょっとうまくなるわけさ」
拍子記号を変化させるのみならず、バンドはラテン・スタイルでも実験を始めた。バンドのメンバーの3人(ガルシア、スペンス、ディアス)はラテンの血筋という共通項があり、それが新しい音楽からは見て取れる。ブラック・タイドはラテンのオーディエンスのため特別に「Let
it Out」と「Into the
Sky」のスペイン語バージョンまでレコーディングしているのだ。「オレたちがラテン・アメリカンのバックグラウンドを共有しているっていうのは素晴らしいことだよ。オレたちは休日を同じように過ごすし、家族は同じ食べ物を料理しているんだから」とスペンスは笑う。「自分の出身に気づくのは重要なことだし、それに気づくことで深いつながりが生まれるんだ」
そんなつながりは,ブラック・タイドが今も普通のキッズの一団であるという事実からも生まれている。ディアスは自由時間をヒップホップのビートを作ることに費やしているし、スペンスはいまだに仲間たちとサッカーをし、本を貪るように読んでいる。家にいるとき、サンドラーは地元の大学にロングボードをしに行き、ガルシアは暇を見つけてはあちこちでビデオ・ゲームをやっている。
サンドラーは今バンドがいる位置についてこうまとめてみせる。「これはブラック・タイドの新しい地平なんだ。誰にこうしなきゃいけないと言われたわけでもない。これがオレたちの愛していることで、それは多岐にわたっているんだ。このアルバムにはオレたちが今までにやった中でもっともヘヴィな音楽もあるし、もっともソフトな音楽もある。なんたって、これがオレたちの歌なんだよ。オレたちは同じようなアルバムを何度も繰り返し作りたくない。ミュージシャンとしてライターとして進歩したいんだ。オレたちはずっとそうし続けて行くつもりだよ。これこそがブラック・タイドなんだ」
ガルシアが結論づける。「このアルバムでオレたちにはオリジナルのサウンドを出している。それはもう良くなるっきゃないんだよ。みんなにこのアルバムを永遠に聞き続けてもらいたいな。ショーに来て,それを感じてもらいたいな。ほんとに人を感動させる──それこそがオレにとって音楽の大好きなところなんだ」
『Post Mortem』は、偉大なハード・ロックのレコードがすべてそうであるように、あなたを心底感動させることだろう。