髙木智子「最高可」

 

作家プロフィール

1989年千葉県生まれ。2015年京都市立芸術大学大学院美術研究科修士課程絵画専攻油画修了。主な個展に15年「視覚は何を見ているのか」(アルトテックギャラリー堀川団地、京都)、17年「無関係をなぞる」(COHJU contemporary art、京都)、19年「どこそこのなになに」(ギャラリー恵風、京都)など。

 

制作年

2017

 

使用画材

木製パネル、綿布、油彩

 

サイズ

H120×W230×D3cm

 

ステートメント

「視覚は何を捉えているのか」という疑問から、絵画におけるモチーフ(意味内容と空間)とイメージ(色と物質)の間を描いている。この二つの事象が、互いに互いを創りだす要素でありながらも抑圧しあう事に着目し、平面の表面で揺らぐ認識の違いを探っている。  「誰かが飾り付けたもの、選んだものの関係性」を主なモチーフにしている。小さなショウウィンドウや自宅の庭先で見つけられるモノたちは、”誰か”の嗜好によって集められ並べられたものであり、独特な佇まいと表情を持っている。私はその、すべて理解できない距離感に心地よさを見出し、その都度描き出す発端となっている。  アルキド樹脂と油絵具によって出来る透明な層は混ざりあい、筆で押し広げた絵具の塊が連なり重なっていく。モチーフを追いかける筆触とモチーフが何であるかは、絵具によって表されると同時に、その粘り気と色彩によって妨げられる。私はそのどちらの魅力も手放す事は出来ず、描く時は必ず多くのモノが抜け落ちていく。見落とした形・モノ・色があるという事が私の作品では重要なファクターとなる。モデルとなる対象物の持つ関係性の序列や造形などとの絶対的な距離感がある中で、何度も確認し撫で回していく行為ことこそが”描く事”になっている。

 

音楽と制作に関して

最近は、イ・ラン&柴田聡子の[ランナウェイ]ばかり聞いている。アルバイトの帰り、終電を降りて家までの一本道には、人影もない。時たま、イアホンから流れる音がぴったりとくっついて、踊りながら帰る。そのまま、鍵を開けて、部屋中を動きながら服を脱ぎ、キャンバスを台の上に、絵の具が手のひらにニュッと着いたところで、すこし落ち着いて手をぬぐって、描きはじめる。汗が少しづつひいて、頭がすっとしてくる。 私にとって音楽は、絵のことを考える時に、助けになってくれることもあるが。どこからかやって来て鼻歌にもなる。

 

髙木智子 プレイリスト