安全地帯『THE BEST ALBUM 40th ANNIVERSARY~あの頃へ~』全曲解説


 

 
<Disc 1>

01. …ふたり…
「ワインレッドの心」の大ヒットに次ぐ、1984年4月16日発表の5作目のシングル「真夜中すぎの恋」のB面として発表され、1984年5月1日発表の2ndアルバム『安全地帯II』にも収められた。松井五郎が安全地帯の歌詞を手掛けた楽曲で初めて発表された一曲としても知られる。アコースティック・ギターのアルペジオを効果的にあしらったフォークロック風のアレンジが印象的なバラードで、彼らのソフト・サウンドの代表作ともいえる。

02. 風
シングル「恋の予感」が「ワインレッドの心」に次ぐメガヒットとなり、その後の1984年12月1日に発表された3作目のアルバム『安全地帯III〜抱きしめたい』のB面に収められた楽曲。アコースティック・テイストのフォーキー・サウンドと軽快なリズムのコンビネーションは、彼らが北海道出身のバンドであることを思い出させてくれる。間奏の口笛のようなキーボードの音色が、この楽曲が持つ独特の寂寥感を絶妙に演出していて効果的だ。

03. 恋の予感
「ワインレッドの心」と並び、初期の安全地帯を代表する楽曲であり、最もよく知られているヒット曲のひとつ。井上陽水のロマンティシズムに満ちた歌詞と玉置浩二の切ないメロディー、透明感のあるサウンドが相まって生まれた名曲である。1984年10月25日に7作目のシングルとして発売され、同年12月1日発表の3rdアルバム『安全地帯III〜抱きしめたい』にも収められた。日本だけでなくアジアでもヒットし、多くのカヴァーが存在する。

04. プルシアンブルーの肖像
1986年7月1日に発表した11枚目のシングル曲。玉置浩二が俳優として初出演した学園ものホラー映画『プルシアンブルーの肖像』(7月26日公開・『チェッカーズSONG FOR U.S.A.』と同時上映)の主題歌であり、1986年8月1日に発売された同名のオリジナル・サウンドトラック盤にも収められた。 松井五郎による“はなさない”と連呼する歌詞をエモーショナルなサウンドに乗せて熱唱するロック・チューンとしてライヴでも人気だ。

05. 好きさ
1986年12月3日に発表した14枚目のシングルで、同年12月14日発表の3枚組の大作5thアルバム『安全地帯V』にも収められた。1986年3月から始まった『めぞん一刻』の3代目のオープニングテーマとして、第38話から第52話まで約4か月間使用され、安全地帯としては初のアニメ・タイアップ曲となった。“好きさ”というシンプルなフレーズを、ニューウェイヴ風のサウンドに乗せながらストレートに伝える情熱的なラブソングだ。

06. 碧い瞳のエリス
1985年10月1日に発表した10枚目のシングルであり、同年11月24日に発表された4thアルバム『安全地帯IV』の収録曲。玉置浩二がCM出演した大王製紙『エリス キングコング篇』のイメージ・ソングにも使用された。まるで唱歌や童謡にも似たストレートなメロディーが、「悲しみにさよなら」とともにこれまでの安全地帯のパブリック・イメージを変えることに成功。ファンタジックな歌詞や、その情景や空気感を具現化したアレンジも秀逸だ。

07. 銀色のピストル
1986年12月14日発表のアルバム5th『安全地帯V』は非常に画期的な作品だった。LP3枚組(CDだと2枚組)、全36曲というボリュームでありながら、多忙なスケジュールの合間を縫って3カ月でレコーディングしたという。パーカッションや効果音が入り混じったシンコペイトするリズムと、きらびやかなキーボードとホーン・セクションの音色に乗せて、松井五郎が描くハードボイルドな男女の恋愛を描いたラブソングに仕上がっている。

08. Lazy Daisy
1984年12月1日に発表された3作目のオリジナル・アルバム『安全地帯III〜抱きしめたい』の2曲目に収められたロック・ナンバー。当時の彼らの勢いが感じられるようなサビの疾走感が印象的で、彼らのロック・バンドとしての資質が見え隠れしている楽曲でもある。また、松井五郎による歌詞には、“ジン”、“ダイヤ”、“タップダンス”といったラグジュアリーなイメージのキーワードが盛り込まれおり、彼らの世界観がしっかりと確立されている。

09. じれったい
1987年4月21日発表の15作目のシングル曲。翌1988年4月10日に発表された6thアルバム『安全地帯VI〜月に濡れたふたり』には、リアレンジされたヴァージョンが収められた。玉置浩二が出演した太陽誘電のカセットテープ『That’s』のCMソングでもある。強烈なハンマービートとシンセサイザーで表現したブラス、そしてAMAZONSによるソウルフルなコーラスなどが、ファンクなどのブラック・ミュージックによる影響を感じさせる。

10. Friend
1986年10月21日に発表された13枚目のシングルで、玉置浩二が出演した大王製紙の生理用品「エリス」のCMソングに使用された。当時は男性アーティストがこういった商品のCMに起用されることが非常に珍しく画期的だった。静かに始まるバラードだが、徐々に盛り上がっていき、最後は壮大なオーケストレーションで締めくくるという構成に圧倒される。同年12月14日発表の5thアルバム『安全地帯V』にも収録されている。

11. あなたに
初期の安全地帯を代表する屈指の名作バラード。ただし、この曲はシングル・カットされておらず、1984年5月1日発表の2ndアルバム『安全地帯II』のA面のラストに収められている。ストリングスとピアノでシンガーソングライターの弾き語り風にしっとりと始まり、徐々にバンド・サウンドへと変化して盛り上げていく。当時の彼らはエッジーなイメージが先行していたが、王道路線でも勝負できることを認識させた一曲といってもいいだろう。

12. ワインレッドの心
安全地帯及び玉置浩二の存在を、日本中のお茶の間に知らしめた最初の大ヒット・ナンバー。サントリー「赤玉パンチ」のCMソングとして1983年11月25日に発表された4作目のシングルで、1984年5月1日発表の2ndアルバム『安全地帯II』にも収録された。バックバンドを務めていた縁もあって井上陽水が初めて作詞を手掛け、作曲の玉置浩二もウエストコースト・ロック指向から、翳りのあるマイナー調に路線変更するきっかけの一曲となった。

13. 熱視線
1985年1月25日に発表された8枚目のシングルで、オートラマという自動車販売会社のCMソングとして使用された。ハンドクラップなども交えた当時のニューウェイヴを意識したアップテンポのビートと、変拍子を取り込んだサビ前のブリッジなどここかしこに小技が効いており、バンドとしての深みを感じさせる一曲だ。シングルとしては、「恋の予感」と「悲しみにさよなら」の間にリリースされたが、オリジナル・アルバムには未収録。

14. ラスベガス・タイフーン
記念すべきファースト・アルバム『安全地帯I Remember to Remember』は、1983年1月25日に発表された。本作品のオープニングを飾ったこのロック・チューンは、4月1日に3枚目のシングルとしてカットされた。アルバムは比較的ニューウェイヴ色が強いが、ハードなギター・リフを聴くと、もともとハードロックやアメリカン・ロック志向だったことがわかって興味深い。他の初期の楽曲群同様に松尾由紀夫が作詞を手掛けている。

15. 消えない夜
「悲しみにさよなら」と「碧い瞳のエリス」という大ヒット曲を収め、1985年11月24日に発表された4作目のアルバム『安全地帯IV』。セールスだけでなく、クオリティ面においてもひとつの到達点といえるアルバムで、そのB面1曲目に収められたバラード・ナンバー。彼ららしい浮遊感の中にも落ち着いた雰囲気を持っており、松井五郎の歌詞や間奏で聴けるアコースティック・ギターのソロなども含めて、バンドの美学が濃厚に表れた一曲だ。

 
<Disc 2>

01. 蒼いバラ
1994年の活動休止後、2002年にソニーに移籍して復活した安全地帯だが、2枚のアルバムを残して再び休止。約7年ぶりにバンドが本格的に復活する際の起爆剤となったのが、2010年3月3日に発売された27枚目のシングルのこの曲。逆回転風のギターや細やかなリズム・セクションなど、かなり緻密なサウンドメイクに彼らの気合を感じる。何よりも、玉置浩二が安全地帯で初めて単独で作詞作曲を手掛け、新たな序章にふさわしい一曲となった。

02. 君がいないから
2012年8月22日に発表されたセルフ・カヴァー・アルバムとしては2作目となる『The Ballad House〜Just Old Fashioned Love Songs〜』。その冒頭に新曲として収録されたバラードの傑作。ピアノのみをバックに歌い始め、徐々に盛り上がっていくスタイルは、バラードの名手としての玉置浩二の歌唱力を存分に味わえる。どこか70年代のロックやポップスを思わせるオーソドックスなバンドのアレンジも、スタンダード感を醸し出す理由のひとつ。

03. ひとりぼっちのエール
9年間に渡る活動休止直前の1993年2月10日にリリースされた23作目のシングル。渡辺満里奈と成田昭次が主演した日本テレビ系ドラマ『お茶の間』の主題歌であり、後に玉置浩二のブレーンとなる須藤晃が初めて作詞を手掛けた一曲でもある。安全地帯らしいロック・サウンドと、神々しいイメージの歌詞に合った壮大なメロディーが印象的で、エンディングに向かうヴォーカル、コーラス、ギターのアンサンブルのスケール感に圧倒される。

03. 情熱
1988年に発表された前作のシングル「微笑みに乾杯」の際にバンドは2年間の活動休止期間に入ったが、1990年7月25日発表の7作目のアルバム『安全地帯VII〜夢の都』で華々しく復活を遂げることになる。このアルバムは先行シングルがなかったが、この祝祭的なイメージを持つ応援ソングがテレビ朝日系ドラマ『火曜ミステリー劇場』のエンディング・テーマに決まったため、同年11月7日に20枚目のシングルとしてリリースされた。

05. 出逢い
1993年発表のシングル「ひとりぼっちのエール」以来、活動休止状態だった安全地帯が、玉置浩二の充実したソロ活動を経た後の2002年7月10日に復活作として発表された24枚目のシングル。同年8月7日にリリースした9thアルバム『安全地帯IX』に収録された。作詞は松井五郎と玉置浩二が共作で手掛けており、無駄を一切省いたシンプルな言葉がかえって新鮮に響き、ピアノとストリングスで始まる美しいバラードに仕上がっている。

06. 結界
2011年8月24日に発表された29枚目のシングルであり、同年9月14日発表の12作目のアルバム『安全地帯XII』に収録された。まるで原点回帰といわんばかりの豪快なアメリカン・ロック風のバンド・アンサンブルになっており、“走ってゆけ 負けたっていいから”というフレーズの強さにより、ソロでの大ヒット曲「田園」にも通じるアグレッシヴな印象を残す。後半にはゴスペル調のコーラスが活躍し、安全地帯の懐の深さを思い知らされる一曲だ。

07. 清く正しく美しく
2010年発表のアルバム『安全地帯XI ☆Starts☆「またね…。」』から引き続き玉置浩二自身が全曲の作詞作曲を手掛けた、2011年9月14日発表の12作目のアルバム『安全地帯XII』のエンディング・ナンバー。「清く 正しく 美しく」というタイトルはアルバム自体のコンセプトでもあり、この曲は制作中の最後に生まれたという。字余りの歌詞を淡々と語るように歌いながら、徐々にクライマックスへと導く展開に、バンドが重ねてきた年輪を感じさせる。

08. 愛を鳴らせ
2013年3月6日に発表された14作目のアルバム『安全地帯XIV〜The Saltmoderate Show〜』は、玉置浩二扮する根尻七五三が進行するショー仕立ての異色作で、安全地帯にしては珍しく非常にユーモアに満ちた作品である。また、メンバー全員が作曲者としてクレジットされているのも特徴だ。この曲はファンファーレ風の華やかなイントロからスタートするが、情感を少し抑え気味に展開し、大人っぽい雰囲気を持つロック・ナンバーとなった。

09. オレンジ
2010年5月26日に発表された11枚目のアルバム『安全地帯XI ☆Starts☆「またね…。」』は、玉置浩二が初めて全曲の作詞作曲を手掛けたこともあり、21世紀に入ってからの安全地帯の最高傑作と呼び声が高い。その先行シングルとして、同年5月5日に28枚目のシングルとして発表された楽曲。ビートルズの影響を感じさせるアレンジのアンサンブルに乗せて淡々と進むが、サビで一気に泣きのメロディーを熱唱する展開はさすがだ。

10. 雨
しばらく活動休止状態だった安全地帯が、2010年5月26日に11枚目のアルバム『安全地帯XI ☆Starts☆「またね…。」』で完全復活したことは、ファンにとっても嬉しいプレゼントだった。この曲も玉置浩二が作詞作曲を手掛けたこともあって、これまでの演出されたバンドのイメージとは違い、ストレートなメッセージが込められたラブソングとなった。雨の音からヴォーカルがカットインし、ストーリーが始まるという粋な展開に魅せられる。

11. あの頃へ
安全地帯の数多いバラードの中でも傑出した一曲であり、近年のライヴではアンコールの定番としてファンにはおなじみのナンバー。1992年12月2日に22作目のシングルとして発表され、真田広之が出演した月桂冠「花鳥風月」のCMソングに使用された。松井五郎が手掛けた歌詞はノスタルジックな言葉が散りばめられており、玉置浩二特有の和を感じられるメロディーを引き立てている。イントロや間奏のオリエンタルなアレンジも印象的だ。ファンからのリクエスト投票で1位となった。

12. I Love Youからはじめよう
1988年6月21日発表の18枚目のシングル。1988年4月10日に発表された6thアルバム『安全地帯VI〜月に濡れたふたり』にも収録された。高らかに鳴り響くファンファーレのようなイントロと、「悲しみにさよなら」の路線を引き継ぐようなポジティヴなメロディーが相まって、陰影のある印象とはまた違う魅力をアピールする一曲。安全地帯のメンバーが全員出演した太陽誘電のカセットテープ『That’s』のCMのイメージ・ソングに使用された。

13. 夏の終りのハーモニー
男性同士のデュエットではもっとも有名な一曲といえるだろう。1986年8月20日、21日に神宮球場で行われた井上陽水との伝説的なジョイントコンサート“スターダスト・ランデヴー 井上陽水・安全地帯 LIVE AT 神宮”で初披露され、同年12月20日に12作目のシングルとしてリリースされた。井上陽水の歌詞はシンプルな言葉で綴られているが、終わりゆく夏の季節感を見事に演出しており、壮大なサウンドで二人の歌をドラマティックに響かせる。

14. 悲しみにさよなら
玉置浩二のヴォーカリストとしてのスケール感を最大限に生かした楽曲であると同時に、安全地帯が目指していたという「ジャンルや年齢の隔たりの無い普遍的なメロディー」を具現化した最初の到達点でもある。1985年6月25日にシングル発売され、同年11月25日リリースの4thアルバム『安全地帯IV』にも収録された。各種チャートで首位を獲得し、様々な音楽賞を受賞するなど、この曲で安全地帯は音楽シーンにおいて不動の地位を築いた。

15. 夢のつづき
1985年11月24日に発表された4作目のアルバム『安全地帯IV』の冒頭を飾るバラード・ナンバー。流麗なオーケストレーションでしっとりと始まるが、こういったタイプの楽曲でアルバムをスタートするというのは、ロック・バンドとしては当時かなり画期的なことだったのではないだろうか。玉置浩二のヴォーカルも囁くような歌い方からファルセットまで繊細ながらも多様な表情を見せ、再びエンディングはストリングスでしっとりと締める。

 

曲解説:栗本 斉